3月に入っても、鉄道運賃や電気ガス料金など、値上げの波が収まりません。平均価格が3週連続で下がってきたコメですが、ここにきて“新たな懸念”が。背景にあるのが緊迫するイラン情勢です。(3月7日OA「サタデーステーション」)
コメの平均価格3週連続値下がり 今後の価格は?
「こちらのお店では、お米5キロが3778円で販売されています」
ついに、コメ価格に下落の兆しが…
「安いから選ぼうかなって。他もちょっと見て回ったんだけど、高いところだと4000円超えているし」
「年が明けてからは、少しずつお値段が下がってきていまして、一番お安いものでは、500円ほどお値段が下がってきています」
未だに5キロあたり平均4000円台となっているコメ価格ですが、ここにきて3週連続で値下がり。
倉庫に大量在庫 赤字で放出…コメ値下がりの背景
今後もコメは安くなるのでしょうか?卸売業者にコメの倉庫を見せてもらうと、値下がりの背景が見えてきました。
「去年の秋にとれた令和7年産が9割入っています。今年はなかなか減ってきていない」
倉庫に積まれている、約4800トンのコメ。9万人が1年間で消費する量に相当しますが、実はこのほとんどが、未だに買い手のついていない令和7年産米です。この在庫は、想定を上回る消費者の買い控えなどが原因だといいます。
「1月からは一部銘柄を決めて、赤字で安く販売しているコメもあります」
5キロ4000円で仕入れたコメを、3000円で売りさばくという“最終手段”に出ている状況で、すでに億単位の損失が出ているといいます。
「3月決算を控えて、皆さん決算対策で値段を下げるというのもありまして、今3月に一つの山が来ています」
この3月決算に加え、今後の気温上昇もコメ価格下落の要因になるといいます。暖かくなると、虫の発生を防ぐための「低温倉庫」が必要で、在庫を抱えるだけで、冷房コストなど、月300万円はかかってしまうためです。
「低温倉庫がない方(業者)は、低温に入れる前に売らないといけないので、このタイミングでも市場には安いコメがまた出てくるんじゃないか」
コメ農家も今年は状況一変
1年前、“青田買い”が殺到していたコメ農家も、今年は状況が一変していました。
「この春の種もみを播種(種まき)の準備をしています」
去年は、こうした種まきの準備より前から買い手が殺到していたと言います。
「去年は異常でしたね。何十年も喋ったこともなかった人とか、昔の昔の仕事場の人間とかからも電話が来ましたし」
Q今年2〜3月は?
「今年は来てないです。本当に今おコメがダブついているんで、そんな高いコメいらないよというのが現実」
毎年状況が激変する中でもコメ農家として生き残るため、自販機を特注するなど、新たなチャレンジも始めました。ペットボトル入りのコメなど、自社商品を販売する予定です。
「上段には(コメの)ペットボトルを置いて、一番下には袋型のこしひかりの商品も置きたいなと思っています」
「本当に心配」イラン情勢の影響は
それでも、不安の種は尽きません。
「1年中このトラクターは動いているので、一番燃料(代)がかかります。今回の戦争でまた上がらないことを願ってますけど」
燃料代は年間で約135万円かかっているといい、イラン情勢による原油高の影響は無視できない状況です。
「臨機応変にちゃんと補助が出たりとか、情報を早く欲しいところではあります」
JA全中の会長も、農業全般への影響を懸念していました。
「これからいよいよ農作業が本格化する時期で当然、燃料も使いますし、農業資材も用いるわけで、肥料・農薬から始まって農業機械まで、本当に心配をしております」
スタンドには「出荷停止通知」相次ぐ どうなるガソリン価格
すでにイラン情勢の影響が出てきているのが、東京都内のガソリンスタンドです。見せてもらったのは、「イラン情勢の為、急騰。出荷停止通告有り」との通知。
「急転直下の出荷停止とかもう何社も結構来てますね」
複数の仕入れ先からガソリンの出荷停止通知が相次いでいると言います。去年春には186円台まで高騰していたガソリン価格ですが、政府による引き下げ措置や、暫定税率の廃止に向けた引き下げ措置の拡充により、一時は154円台まで下がっていました。しかし、原油の先物価格は高値を付けていて、このスタンドでは、9日に一気に5円、値上げする予定です。さらに12日には、仕入れ値の大幅な高騰も予想されるといいます。
「(仕入れ値高騰は)間違いなく10円以上、20円未満としときましょう、絶対上がります」
「もう今日入れさせるわ、ヤバいな」
「私もこの間、自転車買いましたよ。できればもう車使わないで、近いところは自転車で」
続く円安も懸念“外国産”が高騰 3月も物価高の波
もともと日本では、イラン情勢が緊迫する前も、物価高の波が収まっていない状況でした。
「JR東日本など、鉄道各社で運賃が上がります」
JR東日本の運賃は、14日から平均で約7%引き上げに。全面的な運賃の値上げは、消費税が導入された時などを除くと、1987年の民営化後、初めてです。電気・ガス料金も、政府の補助金縮小などに伴い、大手各社そろって3月使用分が値上げとなります。使用量が平均的な家庭では、電気は月800円前後、ガスは月400円前後、高くなる見通しです。
ラーメン1杯を800円で提供している店でも、3月からの値上げを決めました。
「物価高で3、4年前からずっと上がりっぱなし。下がったものは1つもないです」
特に高騰しているのが、他のラーメン店でもよく使われているという、スペイン産の豚肉です。去年11月、スペインでアフリカ豚熱の発生が確認され、日本政府がスペイン産豚肉の輸入を停止した影響が大きいようです。この店では、この1年で仕入れ値が1キロあたり340円も上昇。月に8万円以上の負担増となっています。これは、実に、ラーメン100杯分の金額です。イラン情勢の悪化による円安で、さらなる値上げも懸念されます。
「来年もこの値段で行けるかっていうと、正直わかりません。半月後にまた値段を上げるかもわかんないし」
ただ、この状況でも、創業から24年間、頑なに守り続けてきたサービスがありました。
「(ラーメンを)頼むとコメとか無料なので、これで(チャーシューと一緒に)食える、これが好きですね」
コメ高騰の中でも死守してきた「ライス無料」。コメ価格下落の兆しは、唯一の光明です。
「すぐ下がって欲しいです。(ライス無料は)ずっとやってきたことなので、これからも続けたい」
“抹茶争奪戦”値上がりの裏に世界的ブームも
意外な影響による値上げも起きていました。外国人に人気の茶道体験でも使われている抹茶。
「(パリでは)多くのコーヒー店で抹茶ラテを買うことができます。ミルク無しで飲むのは初めてです。もっと苦いと思っていたけど、とても美味しかった」
「(ドイツでは)2年ほど前から、突然あちこちで見かけるようになりました」
「みんな抹茶の話ばかりしている感じです。甘いジュースよりも、健康的な飲み物を選ぶ人が増えています」
こうした世界的な抹茶ブームにより、京都では、抹茶の原料である「てん茶(一番茶)」の価格が、この1年で約2.6倍にまで跳ね上がっています。茶道体験の後にも、抹茶はお土産として次々と売れていき、いまや茶道の先生でさえ、入手が難しい状況だといいます。
「お茶会を自分で企画しようとした時に、去年、おととしだったら、(抹茶は)直前でも購入可能だったが、今はちょっと油断していると、2週間後のお茶会に全く間に合わないということが多々ある」
「おこめ券」は現場で混乱も 各自治体で物価高対策スタート
全国的な物価高対策も始まっています。東京・墨田区のスーパーで取材中に出会ったのは、5人家族の母親です。財布から取り出したのは…
「私はおこめ米券にしちゃいました」
墨田区の物価高対策の1つとして配布が始まった「おこめ券」。これは去年12月に国会で成立した補正予算に基づく、約2兆円の地方交付金を活用したもので、その使い道は各自治体に委ねられています。墨田区の特徴は、1世帯1万円相当の支援を5種類の中から“選べる”こと。「おこめ券」の他にギフトカードや商品券も用意し、多くのニーズに応えられるようにしたと言います。
「こっちがチョイスで出来るのが良いよ」
「もうちょっと出したっていいじゃない。2万から5万でしょうね。やっていけないよ、ギリギリでやってんだもん」
先ほどの女性は、早速レジで「おこめ券」を利用。しかし…
女性「全部だと6枚、コメ分の3480円に」
店員「2640円をお引きします」
女性「あ、じゃあもう1枚使っちゃっていい?」
実は、5つの支援のうち、「おこめ券」だけが、1万円分ではなく、9680円分。これは、「おこめ券」の発行団体への手数料などが差し引かれた結果、1枚の額面が440円になっているためです。
「440円の計算の仕方が難しい。私も戸惑っちゃうし、レジの人も何枚だっけ?って」
この少しややこしい「おこめ券」を女性があえて選んだ理由とは?自宅を訪ねると、その背景が見えてきました。中学3年生と高校3年生、2人の食べ盛りの息子がいるため、コメを炊く量は、毎日1升。食費だけで、月10万円近くかかるといいます。冷蔵庫には節約の知恵が詰まっていました。
「もも肉、豚バラ、これがロース。ただ国産じゃないけど、まぁいっかみたいな、もう妥協」
肉や冷凍食品は、それぞれ近所で一番安いスーパーでまとめ買い。野菜は、青果店で規格外のものを大量購入していると言います。
物価高対策の効果は?各自治体で対応さまざま
今回の「おこめ券」およそ1万円分で買えるコメは、13キロほど。この家庭だと、8日分以上のコメ代が浮いた計算になりますが…。
「ありがたいんだけど、結局毎月じゃないし、うちよりもっと家族が多い人とかだと、本当に足りないと思う。世帯っていうか、家族(人数)分でもらわないときつい」
この墨田区の物価高対策の予算は約24億円。そのうち、事務経費などを除いた約17億円が区民に還元される予定です。一方、東京都昭島市では、上下水道の基本料金を2月分から1年間“無料”にする予定。予算約9億円のうち、事務経費は約110万円のみで、選択肢も派手さも無い代わりに市民への還元率は高い、という対策になっています。