物価高などの影響で、町の弁当店の倒産件数が過去最多を更新した。番組では、下町の弁当店を取材。店主が語ったのは、「あすは我が身」という切実な思いだった。
78歳店主が明かした経営難
東京・足立区にある弁当店「ペコペコ亭」。ちょうど昼時、おなかをペコペコに減らしたお客が次々と訪れる。
創業以来35年間、店を切り盛りしてきたのは、山口静江さん(78)だ。
店の看板メニューは、アツアツのご飯の上に白身魚のフライやちくわ天をのせた「のり弁当」。お値段なんと450円だ。
そして、ふたが閉まらないほどボリュームたっぷりの「唐揚げ弁当」。こちらは680円で味わえる。
物価高騰で節約志向が高まる中、お値段も量もお得なペコペコ亭の弁当は大人気だ。
「ここは安いしおいしいし、今物価が高いんで、この食材を自分で買ったら、この値段では作れないから」
「年寄り2人暮らしだから、買って食べたほうが便利ですし、手間がかからないし」
「何がおいしいって、おいしくないものがない。ペコペコ亭のことを考えると、元気が出てくるので。炊飯器のスイッチを入れるより、電話をして取りにくる」
地域の人に愛されているものの、その経営状況を山口さんに聞いた。
値段を維持 上げない理由
帝国データバンクによると、去年の弁当店倒産件数は55件に上り、2年連続で過去最多を更新した。
会議や冠婚葬祭などの大口受注の減少や、テレワークが浸透したことによる需要の低下があるという。
そして売り上げを圧迫している要因は、原材料費の高騰だ。
看板メニュー「のり弁当」の場合、原材料費はコメだけでも80円増加。のりも30円増加するなど1つにつき200円以上も上がり、利益が大幅に減少してしまった。
今の値段を維持していくつもりだ。
コストが膨らむ状況に置かれながらも、続けているサービスがある。
弁当の無料配達サービスを午前11時半から午後1時半まで、千住エリア限定で弁当2個から行っている。
こちらの会社は3個注文。山口さんが出来立ての温かい弁当を届けると、お客さんはこう話す。
経営は苦しくなっているものの、お客の笑顔と感謝の言葉こそが、山口さんは何物にも代えられないのだという。
低価格のビジネスモデルは
閉店が相次ぐ弁当店だが、厳しい現実は他にもあるようだ。
帝国データバンクによると、2025年度における弁当店の収支は41.9%が赤字。前年度から減益の22.9%と合わせると、6割以上が業績悪化となっている。
中小の弁当店では、食材費の割合が非常に高く、値上げしなければ原材料高騰の影響で利益が大きく削られる一方で、値上げをすると客離れが進み、売り上げが確保できないという板挟みに直面していて、低価格弁当のビジネスモデルに限界がみられるという。
専門家は、町の弁当店の生き残りには時代とともに変化してくことが必要だとして指摘している。
フードジャーナリストの山路力也氏によれば「個人経営の弁当店の登場は高度経済成長期の1960年代からで、女性の社会進出が進んで専業主婦が減るなど、ライフスタイルが変化したことで弁当は“作る”から“買う”という文化に変化していった背景がある」という。
「コンビニやフードデリバリーなどが弁当業界に進出し、時代のニーズが変わる中、町の弁当店が生き残るには、単なる食事の提供だけでなく、配達時の高齢者宅の安否確認など地域に根付いているからこそできる強みを生かすことだ」とし、「地域福祉としても高齢者を支えられる存在になれるかがカギだ」と指摘しています。
(2026年3月12日放送分より)










