経済

ABEMA TIMES

2026年3月14日 11:00

“いちご狩り”はなぜ「食べ放題」で儲かる?何個食べたら元が取れる?農家が明かすビジネスモデルの裏側

“いちご狩り”はなぜ「食べ放題」で儲かる?何個食べたら元が取れる?農家が明かすビジネスモデルの裏側
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 いまが旬の「いちご狩り」。最近では夜のいちご狩りも登場し、カップルに人気なのだとか。

【映像】カップルに人気の「夜のいちご狩り」(実際の様子)

 いちご狩りといえば、時間内で摘み放題、食べ放題がほとんど。いちごもお店で買うとそう安くはないが、いちご狩りの相場は約2000円から3000円。さらにいちごの収穫時期は12月から5月中旬までの、わずか半年間だけ。果たして農園はどんな戦略で儲けを出しているのか。

 今回その仕組みを明かしてくれたのは、栃木県益子町にある吉村農園。開店30分前となる朝8時半には、およそ40人がすでに並んでいた。

 行列を仕切っていたのは、いちごのキャップを被る吉村農園の二代目、吉村収社長。創業はいまからおよそ40年前の1985年で、いちご王国栃木で他社に先駆け、栃木県初の「観光いちご狩り」を始めたパイオニアだ。現在は長男の想一副社長とともに、15人の従業員を束ねている。

 吉村農園のいちご狩りは入場料2500円(3歳から小学生は1500円、3歳未満は無料)。時間は無制限でもちろん食べ放題だ。客の9割以上がリピーターだという。客たちは「めっちゃおいしいです」「最高です」「おいしい!」とご満悦で、「今日何個食べた?」と質問を投げかけると「70個くらい。200個食べます!」と答えた客もいた。

 1ヘクタールの敷地に40棟のビニールハウスがあり、そのうち22棟がいちご狩り用で、残りの18棟は販売用として運用している。こちらで食べられるいちごは、酸味が控えめで優しい甘みが特徴のとちあいかや、大粒でみずみずしいスカイベリーなど、合わせて10種類だ。

 人気の理由について客たちに話を聞くと「いつも時間制限で戦争みたいになるので、それがないのがすごく味わえる」「種類豊富なところと、時間が無制限なのがとてもありがたい」とコメント。客がゆっくりと食べられるように、ハウスの横にテーブルや椅子も設置されており「今日はいちごが嫌いになるまで食べようと思う」といった声も聞かれた。

 この日は開園から1時間ほどでチケットは完売した。

 テレビ朝日の田中萌アナウンサーもいちご狩りを体験。田中アナは「こんな大きいいちご初めて」と手のひらサイズの大きないちごにかぶりつき「おいしい、本当に甘い」「まだまだいけるけど……」と言いながら、約15分でいちご23個を完食した。

 時間無制限で食べ放題の吉村農園では、3パック半にあたる40個以上を食べるとざっくり元が取れるという。さらに人気の秘密は、練乳など何でも持ち込みがOKなところで、ある常連は歌舞伎揚げを持参。「交互に食べれば一生食べていられる。2倍おいしい」いちごと塩気が意外に相性が良いそうだ。

 田中アナが「いちごはなくならないのか」と問いかけると、吉村社長は「なくなりますね。そこをなくならせないのが“腕”」とコメント。吉村農園では夏場に8万本のいちごの苗を手植え。シーズン中にいちごがなくならないために、いちご狩りが始まると22棟のハウスを生育ごとに分け、1週間ごとにローテーション。それぞれのハウスで客が食べているあいだに、まだ青かった実がおよそ1か月後には、次の食べごろを迎えるという。

 こうして来客数を見越し、食べごろを逆算。その緻密なローテーションは半年前の苗づくりのときから計算されているそうだ。吉村社長は「実際、食べたらなくなっちゃう。難しいところ、自然のものだから」と語る。さらに来園の人数も平日は50人、土日祝日は100人と調整し、いちごがなくならない仕組みを作っているという。想一副社長は「月ベースで見ると、儲かっている。でも年間トータルだとトントン」と明かした。

 食べ放題なのに利益がでる最大の理由は、いちご農家が抱える問題が解消できているからだという。客自身が摘み取って食べるいちご狩りのスタイルこそが、いちご農家が抱える経費を削減させ、利益を生んでいるそう。想一副社長は「いちご狩りの観光農園の場合だと(いちごを)お客がとるので、作業が省力化できるところが最大のポイント」と語った。

 農園にとって負担の大きい箱詰め作業などの手間が解消できるのが最大のポイントで、農業経営に詳しい公認会計士の佐藤宏章氏は「一般販売と観光農園でコスト的に2割から3割は違ってくる」と解説。

 佐藤氏の試算によると、一般的に市場に販売する農家の場合、パック詰め、輸送費、仲卸などの経費で、売上のおよそ半分が消えてしまう。いちごの市場価格を1パック500円と仮定すると、農家の取り分はおよそ250円。一方いちご狩りの観光農園では客が収穫してその場で食べるため、パック詰めや輸送などの経費はほぼかからず、その分を利益に回すことができる。

 佐藤氏は「一般販売だと全部ルールが決まっていて、それに合わせてやらないと駄目。販売手数料がかかるし、その分手取りの儲けが減る。観光農園の場合は自分で価格設定ができる。ここがやっぱり一番のメリット。喜んでくれたらそこで贈答用として買っていく。ビジネスモデルとしては本当に無駄がない」と評価した。

 例えば吉村農園の場合、生産にかかる経費は月およそ137万円で入園料が2500円のため、単純計算で1日に18人の来園で元が取れる計算だ。

 楽しいいちご狩りの裏でも吉村社長は大忙し。農園では「日中が30〜40度になるからハウスを開ける」と作業する姿が。昼間はハウス内の温度が常に18度前後になるよう、こまめに換気。儲かる仕組みはあるが、それを支えるのは客には見えないところでの絶え間ない努力と工夫。誰にでもできるわけではない。

 農園に並ぶいちごは、毎朝3時起きで収穫。いちご狩り農園は、いちごのシーズンのおよそ半年だけで1年分の収益を確保。残りの半年は次のシーズンに向けた準備に費やすという。

 吉村社長は「生き物なので、温度帯や日差しも関係するので夏は作れない。頭の中で考えているようにはいかない、というのが自然界」、想一副社長は「ゆっくりいろいろないちごを見て、談笑しながらひとときを楽しんでもらえたらいいなと思っている。利益を考えると微妙なのかもしれないけど、“無制限”でずっと今後もやっていきたい」と語った。

(『ABEMA的ニュースショー』より)

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