経済

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2026年5月9日 02:27

飲食店が苦境“在留資格”厳格化で閉店相次ぐ“特定技能”上限で外国人受け入れ停止

飲食店が苦境“在留資格”厳格化で閉店相次ぐ“特定技能”上限で外国人受け入れ停止
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香港料理やスリランカ料理など、海外の本場料理が楽しめる飲食店。外国人オーナーが経営する、こうした店舗が次々と閉店しています。背景にあるのは経営に必要な“在留資格”の厳格化です。資本金大幅アップなどのハードルが外食産業に重くのしかかっています。

資本金3000万円の壁

東京・江東区にあるインド料理店。できたての大きなナンや、スパイシーなカレーが手軽に味わえる人気店です。お店が繁盛する一方で、オーナーの頭を悩ませていたのが…

インド料理店『サッカール』オーナー ケーシーさん
「お客さんも入っていて、経営もうまくやっているところを、ビザの資本金の審査によって(店が)なくなるのは良いことじゃない」
在留資格の基準

これまで、外国人オーナーが店を経営するための『経営・管理』の在留資格を取得するには、資本金500万円以上、もしくは日本人や永住者の従業員が2人以上のどちらかが必要でした。この条件が去年10月以降、厳格化され、資本金3000万円以上、かつ従業員1人以上の両方が必要であるとされました。

厳格化の背景にあったのは、一部の外国人が作る、いわゆる“ペーパーカンパニー”の存在です。

GHRS法律事務所 杉田昌平弁護士
GHRS法律事務所 杉田昌平弁護士
(Q.ペーパーカンパニーを作ってどういうことを日本でしている)
「日本の高額医療制度などで医療費の負担の上限が設けられる。そういった制度を利用する。本当に一部の例かもしれませんが、そういう利用はあるかもしれない」

すでにお店を持っている人に対しては3年間の猶予がありますが、6倍もの資本金は調達も容易ではありません。

インド料理店『サッカール』オーナー ケーシーさん
インド料理店『サッカール』オーナー ケーシーさん
「エアコンでしたり、飲食店だと冷蔵庫が主な設備になるので、それを改正前に2025年10月前に入れた。その時はこういう話を予想していなかったので、こんなに厳しくなる?と予想外です」
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人材確保できず 6日前に閉店

今、こうした店が続出しています。東京・練馬にある香港のお粥の店は、女性に人気ということですが、資本金3000万円を調達するめどが立たず、店の前には閉店のお知らせが貼られていました。

スリランカ料理店

栃木県下野市にあるスリランカ料理店も先週に閉店。後片付けの真っ最中でした。

スリランカ料理店『ダイヤセイロン』オーナー アディさん
スリランカ料理店『ダイヤセイロン』オーナー アディさん
(Q.この皿はもう使わない)
「もう終わっちゃったから最後です。本当に悲しいです。説明できないんですけれど、本当に悲しいこと」

アディさんの場合、資本金のあてはあったものの、在留資格を満たす人探しがネックだったそうです。

スリランカ料理店『ダイヤセイロン』オーナー アディさん
「『従業員は何人?従業員のリストを出してください』ということで、その時は誰もいなかったから、返事はだめだった」

結局、ビザが下りることはなく、20日後に帰国を迫られているといいますが、この日も取材をしていると、別れを惜しむ常連客の姿がありました。

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『経営・管理ビザ』新規申請96%減

制度に猶予はあるにせよ、厳格化に伴う“廃業”続出などの恐れについて、法務大臣は。

平口洋法務大臣
「施行日から3年を経過した後は、経営状況や法人税の納付状況等を総合的に考慮して許否の判断を行うなど、個別の状況を踏まえて対応する予定です」
内閣府

内閣府によると、改正前は1カ月約1700件あった申請数は、約70件と数は96%減少しています。

“特定技能”上限で受け入れ停止

また、飲食業界は、別の在留資格である『特定技能1号』の受け入れが上限に達し、一時停止。大きな影響が出ています。

特定技能制度

特定技能制度は、人材確保が困難となる分野で、技能を持つ外国人の受け入れを目的として、7年前に運用を開始した在留資格です。外食分野は5万人を上限としてきましたが、資格取得者数は年々増加。法務省は先月、新たな受け入れを一時停止しました。

こうした状況は、人手不足の続く飲食業界にとって相当な痛手です。そこで外国人材の就業を支援する企業『ワールドインワーカー』では、在留期間が5年間の特定技能1号を、期間のない2号へと引き上げるトレーニングを行っています。

ワールドインワーカー 小西悠太取締役
「特定技能2号を目指す社員に向けた、副店長やサブリーダーの仕事をやるための知識とスキルを学ぶ副店長用コース。生産年齢人口の減少が起きている日本においては、社員育成をするためのポイントや、店舗の計数管理のスキルが必要になる。その部分の学習サポートをしている」
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2年後には建設・介護などでも…

『特定技能制度』とは、生産性向上や国内人材確保の取り組みを行ってもなお人材確保が困難な分野に限り、専門性・技能を有し“即戦力”となる外国人を受け入れる制度です。

特定技能制度

これには2種類あります。1つは、日本にいられる“年数”も“受け入れ人数”にも上限がある『1号』。もう1つは、年数も人数も上限がない代わりに、高度な知識や技術が求められ、難易度が高い『2号』となっています。

特定技能1号 指定分野

今回は『1号』についてみていきます。「人材確保が困難」として16の分野が指定されました。外食業の他に農業・漁業・飲食料品製造業など食に関わるインフラ、鉄道・自動車運送業・航空など移動に欠かせない分野、さらに建設・林業・木材産業などに加え、私たちの老後を支える介護分野などもあります。

さらに今年は、物流倉庫や資源循環、つまり廃棄物のリサイクルなど3分野が新たに設定されています。

外食業

一方で政府は「国内労働市場への過度な影響など」を避けるため、受け入れ分野ごとに上限を設けています。その上限に達する見込みとして、すでに受け入れを停止したのが外食業です。杉田弁護士が行った入管庁のデータによる試算では、建設業では2年後の2028年4月、介護では同じ2028年3月には上限に達する見込みだということです。

介護職員

2年後に上限が見込まれる介護の分野をみていきます。高齢者が2040年までに約300万人増えるということで、直近で約212万人いる介護職員(2024年度)が、2040年度には今より60万人多く必要になると厚労省は試算しています。

人手不足の現状や外国人労働者問題に詳しい、ニッセイ基礎研究所の鈴木智也さんに聞きました。

ニッセイ基礎研究所 鈴木智也さん
「労働力確保に向け、女性活躍を促し、高齢者が働きやすい環境整備を進めてきた。それでも急速な少子高齢化で人材確保は追いつかず、今後、AIやロボットなどの導入をさらに進めたとしても、当面、外国人材に頼らざるを得ないのが日本の現状。外国人が日本で働く上では社会との摩擦が問題になる。そのため、外国人材の日本語学習をサポートするなど、摩擦を減らす取り組みを進めることも大事。さらに、給与面で外国に劣る状況を改善し『日本で技能を高めて頑張れば、給料も上がる』仕組みを作る必要があるのではないか。教育現場で多様性について早くから教えたりするなど、日本人側の意識を変えることも大事」
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