中東情勢を受けて大手菓子メーカーのカルビーが、ポテトチップスのパッケージを白黒の2色に変更すると発表しました。ナフサの供給不足の影響が医療、住宅など、さまざまな分野に広がってきています。
袋が白黒「石油原料節約」
1975年の発売から、およそ半世紀。長年愛され続けてきたカルビーのポテトチップス。
そのパッケージがなんと…白黒に。商品には「石油原料節約パッケージ」の文字もあります。さらに下半分に印刷されていた商品の写真やキャラクターのイラストなどはありません。
白黒の2色でもフレーバーの違いが分かりやすいよう、パッケージの上半分や帯の濃淡を変えています。
3つの白黒パッケージを見比べてみると、上半分が「うすしお」が一番濃い色。「のりしお」が少し薄く、「コンソメパンチ」は最も白っぽい色になっていて、白黒でもフレーバーごとに違いが出るよう工夫されていました。
カルビーは12日、「ポテトチップス」など14の商品について、パッケージに使う色の数をカラーから白黒の2色に変更すると発表。
カルビーは、中東情勢の緊迫化でナフサなどの供給に影響が出ていることを踏まえた対応で、商品の品質への影響はなく、安定供給のための措置としています。
カルビーから報告を受けた農水省の担当者は、このように話します。
中東情勢が緊迫する中、あらゆる業界でナフサの安定供給への懸念が広がっています。
バナナ“熟成”懸念
訪れたのは東京・江東区にあるバナナの加工施設。高く積み上げられた段ボールの中には、熟す前の青いバナナの束。
ファーマインド青海センター
八子和弘マネージャー
「入荷してくるバナナは、このように青い状態で入ってきます。なので、エチレンガスを使って、およそ1週間かけてこのように黄色い(熟した)バナナ、食べられる状態に仕上げています」
海外で収穫されたバナナは、検疫上の理由で熟す前の青い状態で輸入されています。
黄色く熟成させるために使われているのが、ナフサ由来のエチレンガスです。
熟成するためにバナナも自らエチレンガスを出しますが、保管されている倉庫にエチレンガスを入れることで効率的に熟成加工ができるといいます。
バナナの熟成には欠かせないエチレンガスですが…。
ファーマインドセンター事業本部
大江慎本部長
「エチレンの供給を受けている仕入れ先からエチレンがナフサの不足で、一部(出荷)制限をかけます。あるいは、もう停止してしまいますというような通達がありました」
ナフサ不足による影響で、エチレンガスの確保が困難な状況に。バナナの供給を止めないために行っているのが…。
「(エチレンの)新たな仕入れ先を探して、国内だけでなく、海外も含めた新たなルートというものを模索して走り回っている」
国内でのエチレン確保が難しいため、新たに海外からも輸入をしているといいますが、輸送費などのコストが重くのしかかるといいます。
「例えば数倍から10倍ぐらい、従来のものに比べるとコストが上がってしまっているという」
日々、エチレンの確保に奔走しているといいますが、今後については危機感も…。
「今の状態がずっと続くとですね、我々の努力だけでは、限界が来るのは間違いないですね。バナナというものの供給が止まる可能性がある。そういった危険性があるということを幅広く理解いただいてエチレンの安定的供給に、ご支援いただきたいと」
医療用グローブ「綱渡りの状態」
ナフサ不足の影響は医療にも…。
「実際問題、物が結構欠品が出てきていたりとか、あとは購入制限がかかったりというものがかなり多く出てきています」
こちらの歯科医院では治療に必要なさまざまなものが手に入りづらくなっているといいます。
実際にナフサを使った製品は、どういったものがあるのでしょうか。
医療用のグローブなど8割〜9割の製品がナフサ関連のものだといいます。実際にグローブを発注する際の画面を見せてもらいました。
他にも紙エプロンやガーゼなど治療に必要不可欠な製品の在庫が枯渇しているといいます。
事前に備蓄していた在庫もあるといいますが。
住宅業界 断熱材入らず
ナフサの供給不安で、すでに影響が出ていた住宅業界。状況は悪化しています。
関尾英隆代表
「こちらが断熱材で家をつくるためには必需品になっています。これが4月1日から4割値上げ、(連絡があったのは)3月の中旬です」
先月7日に番組が取材した工務店の関尾さん。あれから1カ月、メーカー各社から来た通知には。
「納期未定としてご注文をお受けいたします」
中東情勢の影響で、ナフサなどの原材料の供給不安が続いているとして納期回答の未定・停止などの文字が。
「5月の着工分なので取材を受ける前に発注はかけてあった。(メーカーは)受注を受けたわけですよ。『あっよかった、ちゃんと発注できた』って安心していたところ。板状の断熱材が全く入ってこない。それ以降も手に入らない」
納期の回答が出ている資材もあるといいますが、「7月以降になってしまう」という回答が多いといいます。
来週には、柱などの基本構造を組み上げる「上棟」があるといいますが…。
「5月着工のお客さん、来週とかに上棟しようと思っているのが上棟できずにいるんですよ。基礎の下に敷く断熱材が発注したものが入ってこないので、それがないと上にモノが建たないので…」
関尾さんの工務店の受注単価(一軒当たり)は、およそ5000万円。今後250万円〜300万円値上げする可能性もあるといいます。
「(客には)『頑張っています』と、もしかしたらこの1週間で入ってくるかもしれないので、早く入ってこないことには先に進めない」
鮮魚店 トレーなど値上げ
茨城県日立市にある鮮魚店「あかつ水産」。鮮魚店で欠かせないのが、プラスチックトレー。およそ150種類のトレーを仕入れて毎日使っているといいます。
3月の取材時には、すぐにトレーなどの値段は上がらないと言っていましたが…。
「4月に(トレーなどの値段が)5月とか6月から上がるよって連絡がきまして、全体的に平均してだいたい130%の金額(値上げ)でということに」
トレーなどの包装資材が、平均で3割の値上げになったといいます。資材高騰の影響で、あかつ水産は今月1日から一部商品の値上げに踏み切りました。
先月には、こんな連絡も…。
幸い、ゴールデンウィーク明けに状況が改善し、入荷のめどが立ったといいますが…。
ビーサンに時計洗浄も…
これからかき入れ時を迎える業界にも影響があります。
中島広行代表
「すでにゴールデンウィーク前くらいから(合成ゴムの)納品が遅れたり、直近で(仕入れ価格が)1〜2割上がっているが、仕入れ先によっては5割ぐらい上がっているという話も聞くので」
夏に向け需要が高まるビーチサンダルの材料となるのが、ナフサから作られる合成ゴムです。
入荷が3カ月遅れている素材もあるため、今シーズンの新商品投入は断念。仕入れ価格が上がっても商品への価格転嫁は難しいといいます。
「気軽に履けるものだろうというイメージが消費者の方についているので、(値上げは)お客さんは離れていってしまうんじゃないのかなという懸念がありますね」
さらに、こんな意外な場所でも…。
「ベンジンで手洗いで(時計の)油汚れとかゴミを落とします」
時計職人を育てる専門学校で、精密な時計の洗浄をするために使われるベンジンもナフサから作られています。
時計業界には欠かせないというベンジンですが…。
時計技術担当 長沼寛樹講師
「この情勢になってから10〜20%、値段が急に上がった印象」
ナフサ不足や値上げにさまざまな業界から上がる不安の声。政府は“必要な分は確保されている”としている中、なぜこのような事態になっているのでしょうか。
(2026年5月13日放送分より)