今日本は物価も上がって景気が悪い、そう思っている方がたくさんいるのではないでしょうか。でも実は今日本の景気は悪くないんです。なぜ景気がいいと言えるのか、そして実感できない人がたくさんいるのはなぜなのか、解説してまいりましょう。
日本の景気…いい・悪いは誰が決める?
今回街で「景気はいいですか?」と聞いたところ、「いい」という人「悪い」という人、様々な意見がありました。
では日本の景気がいい、悪いは誰が言っているんでしょうか。実は政府です。月例経済報告といって様々な経済指標をもとに毎月政府が発表しています。この5月は「景気は緩やかに回復しているが、中東情勢の影響を注視する必要がある」というものでした。
簡単に言うと、今景気は悪くない、ということです。ではなぜ景気は回復してきているといえるのでしょうか。いくつか根拠があります。順番に解説しましょう。
景気がいい!?理由(1)…輸出企業がもうかっている
今物価高がニュースとなっていますが、その原因の一つは円安です。
その円安によって儲かっている会社、業種があるんです。そう、輸出企業です。例えばアメリカに2万ドルの車を輸出していた場合、1ドル100円なら200万円の売り上げですが、円安で1ドル150円になったら300万円の売り上げになります。かなりの差です。
同じように海外の工場で生産、販売するなど、世界展開している企業も円安によって儲けが大きくなります。海外で売り上げたお金を日本に持ってきて円に換算すれば円安の時の方がたくさんのお金になります。
もちろん円安でいいことばかりではありません。原材料を輸入している場合はコストが高くなってしまいます。実際、原材料高騰などの理由での倒産が今年4月は集計開始以来最多となりました。(帝国データバンク調べ)円安によって儲かっている会社もあれば倒産する会社もある、というわけです。
景気がいい!?理由(2)…給料が上がっている
日本は長年給料が上がらないと言われてきましたが、最近は違います。物価高に賃上げが追い付いていない、と思われがちですが、実質賃金を見てみるとそうではありません。ちなみに実質賃金とは給料(額面)から物価変動の影響を除いた金額です。今年に入ってからを見てみると、1月は0.7%増、2月は2.0%増とプラスになっていることがわかります。
これまでは給料の増加分より物価上昇分が大きかったですが、最近は給料増加分の方が物価上昇分より大きくなってきているんですね。ただすべての企業が上がっているわけではもちろんありません。例えば中小企業の賃上げ率で見てみると、賃下げした会社や賃上げできなかった会社が2割ほどある、という調査結果が出ています。
ものすごく儲かっている会社と経営が苦しい会社と両方がある、二極化が進んでいるということです。
ちなみに賃上げ率が高い業種は情報通信や情報サービス、金融などです。逆に賃上げ率が低い業種は医療や福祉、小売業などとなっています。
景気がいい!?理由(3)…金利が上がっている
ゼロ金利が続いていましたが、いまだんだん金利が上がってきています。この金利と景気は大きく関係しています。どういうことでしょうか。
まず金利が下がると企業はお金が借りやすくなります。するとたくさん借りて工場を造ったり、たくさんの社員を雇ったりします。もちろん景気は良くなります。でも景気がよくなりすぎた、このままではインフレになるかもしれない、と金利を上げますと、今度は企業がお金を借りづらくなります。そうすると新しい工場を造ることも減ってしまいます。そうなると景気は落ち着いたり、ちょっと悪くなったりします。こうして金利で景気をコントロールしているんです。
金利をコントロールしているのは日銀です。金利というのはそれぞれの銀行が自由に決めていいんですが、銀行の親分的存在の日本銀行が「金利の目標」を決めているんです。バブルの頃から金利の動きを見てみますと、高い時は6%くらいまで政策金利は上がっていました。これでは景気がよくなりすぎる、とどんどん下げました。その後景気が悪化したのでゼロ金利時代が続いて、最近少しずつ上がり始めている、というわけです。
今金利が上がってきている、つまり日銀は「景気がいい」と判断しているというわけです。金利の動きをみることで、景気がいいのか悪いのかわかるんです。
景気がいい!?理由(4)…日経平均株価が史上最高値
日経平均株価が最高値を更新しています。ということは株をたくさん持っているお金持ちや投資家は景気がいい人が多い、ということになります。でも株価がこれだけ上がっても、バブルの時のような好景気、という実感はない方が多いのではないでしょうか。一体なぜでしょう。
そもそも日経平均株価とは東証プライム市場の主要225銘柄の株価をもとに算出されています。でも実は4月に日経平均株価が初めて6万円台になった時、東証プライム市場では全体の7〜8割の銘柄が下落していました。つまり一部の会社の株価だけが上がっていたというわけです。
今特に株価が上がっているのはAIや半導体関連です。今好調なこれらの業種が大幅に株価を上げているため、ほかの会社の調子が悪くても平均株価は上がっていくんです。なので日経平均株価が上がっている割には景気の良さを実感できないというわけですね。
こうしてみていきますと今の日本は一部の人が儲かる格差社会になってきてることがわかります。1970年ごろには日本は一億総中流と言われてみんながどんどん豊かになっていく時代がありました。こうして格差が広がってきますと、今「中流」という人が少なくなってきています。そういう時代に富裕層にたまっているお金をどう循環させていくのか、それがまさに政治家の責任、というわけですね。
(池上彰のニュースそうだったのか!!5月30日OA分より)
もっと詳しい景気についての池上解説はTVerへ!











