日本銀行は、政策金利を31年ぶりの水準となる1%程度に引き上げることを決めました。
政策金利を引き上げた日銀の狙いと課題、生活への影響をみていきます。
■政策金利1% メリット&デメリット どこまで上がる?
日本銀行は半年ぶりに利上げを決めました。
「政策金利を0.75%程度から1.0%程度へ変更することを賛成多数で決定した」と発表しました。
『政策金利』とは、中央銀行が操作する金利のことで、景気が悪い時は引き下げて経済活動を刺激し、良好な場合は引き上げて、物価上昇を防ぎます。
政策金利の推移です。
戦後、日本経済の急成長に伴い、金利は高い水準で推移していましたが、バブル崩壊以降、景気対策として金利は大幅に引き下げられ、1995年には1%になりました。
さらにその後、政策金利がほぼゼロの状態で推移し、2016年にはマイナス金利政策がスタート。
2024年に解除され、少しずつ引き上げられましたが、1%未満の水準が続いてきました。
利上げの主なメリットとデメリットです。
メリットは、銀行の預金金利が上がり、物価が下がります。
デメリットは、住宅ローンの金利が上がったり、経済が冷え込む恐れがあります。
日銀の利上げを受けて、三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行の3行は、8月3日から普通預金の金利を0.3%から0.4%に引き上げます。
三菱UFJ銀行、三井住友銀行では1992年以降、みずほ銀行では2002年以降、最も高い水準です。
政策金利はこの先、どこまで上がるのでしょうか。
「過去には高い時で9%の時もあったが、今は日本経済に体力がないので、日銀が欧米並みの2%〜3%まで上げることは考えにくい」
■住宅購入者から嘆き 毎月の返済増 「すごく重たい気持ち」
住宅購入者からは利上げに嘆きの声も挙がっています。
40代男性Aさんのケースです。
Aさんは自動車向けの部品メーカーを経営していて、妻と子ども3人の5人家族です。
もともとアパート住まいでしたが、当時、中学生の娘さんから「私も自分の部屋がほしい」と言われ、この娘さんの願いをきっかけに家の購入を検討しはじめたということです。
住宅展示場に行くと、営業担当者から「今は低金利ですから」と勧められ、3年前に約4500万円の住宅ローン、35年・変動金利を組み、マンションを購入しました。
当初、金利は0.6%、月約12万円の支払いでした。
Aさんの世帯収入は手取り50万円ほどでした。
家計はギリギリだったということです。
こうした中、Aさんにある通知が届きました。
通知の内容は(住宅ローンの)金利の見直しについてです。
1.1%に引き上げるというもので、当初と比べると月に約9000円の追加負担になります。
仮に、この住宅ローンの金利が2.5%まで引き上げられた場合は、月の支払いは約16万円、金利0.6%の時と比べると4万円プラスになるということです。
※日本銀行が金融政策の目安とする名目ベースの中立金利(景気を刺激も抑制もしない水準)は、1.1%〜2.5%の範囲と推計されています。
「家計簿とにらめっこし、削れる支出を探す日々。息子の野球をやめさせるか考えてしまう。また金利が上がると思ったらすごく重たい気持ち」と話しています。
続いて50歳男性、Bさんのケースです。
妻と子ども2人の4人家族で、10年前に5000万円の住宅ローンを35年の変動金利で組みました。
当初の金利は0.5%で月に約13万円の負担でした。
これが現在は1%で、月に約13万9000円の負担となっています。
「今後金利が上がり続けるなら繰り上げ返済も考えている。ただ娘が大学受験の前で、まとまったお金も手元に必要で悩んでいる」と話しています。
個人の破産申立件数が2025年の速報値で8万3100件でした。
8万件台は13年ぶりです。
「(複数人世帯は)所得に占める住宅ローン返済が大きく、生活苦から破産に至る事例が目立つ。今後も似たケースが増えるのが心配だ」と懸念を示しています。
■町工場は利払い増 円安・物価高も追い打ち
企業への影響です。
静岡にある関原製作所は、半導体をつくる機械の部品の製造などを行っていて、従業員数は7人です。
緻密な精度や性能を担保した部品製造のため、数年に1度、新しい機械に買い替える必要があるということです。
設備投資について、2025年の12月に新たな機械の導入で、約1600万円を借り入れ、7月も老朽化による機械の買い替えで追加の借り入れを検討しているといいます。
「利上げにより利払いはかなり増えると思うが、設備投資は不可欠なため、借り入れせざるを得ない」といいます。
関原製作所では、ニッケル合金や銅などの原材料は、ほとんど輸入品で、円安や世界情勢などの影響を大きく受けています。
ウクライナ情勢の悪化以降、原材料の価格は上昇していて、ホルムズ海峡封鎖で、コスト高に追い打ちがかかっており、利益は4年前から約2割減少しました。
「コストが上がる一方で、価格転嫁は十分できていない状況なので、利上げとなったら、さらに経営は圧迫される。円高に動いてくれればいいが、正直、期待は持てない」
■利上げで円安・物価上昇に歯止め?日銀の狙いと課題
利上げした主な狙いです。
慶応義塾大学の白井教授によると、円安をストップし、急激な物価上昇を抑制することです。
円安だと、海外から買う燃料や食品の価格がその分高くなります。
輸入に頼る日本はモノの値段がつられて高くなるということです。
利上げした結果、どうなったのでしょうか。
利上げが発表された6月16日、為替レートは1ドル=160円台前半で推移。
円高に進む兆しはみられませんでした。
なぜなのでしょうか。
欧州中央銀行では、6月11日、政策金利を2%から2.25%に引き上げました。
中東情勢がインフレ圧力を生み出していると判断したためです。
アメリカのFRBでは6月16・17日、政策金利について、現在の3.50〜3.75%に据え置く見通しです。
イラン情勢に伴う原油高騰で、物価が急上昇していることが背景です。
「経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている」
「市場からは、日銀の会見が今後積極的に利上げを進めていくと受け取られなかったので、円高には進まなかった」
(「羽鳥慎一モーニングショー」2026年6月17日放送分より)













