今月から2500品目以上の食品や飲料が値上がりします。中東情勢悪化の影響が、この夏から本格的に食料品にあらわれます。
食品値上げ 生活直撃
買い出しを終え、自宅に戻る女性。電動車椅子の荷台にバッグ2袋分の食品が積まれています。女性は週に1度、決まったスーパーでまとめ買いをすると言います。
電動車椅子で往復40分。わざわざ遠出をするのには、切実な理由がありました。
都内の公営住宅で暮らす緒方明子さん(76)。両足と左手に障がいがあり、車椅子での生活を送っています。暮らしを支えるのは、月9万円ほどの年金です。
削るに削れない、毎日の食費。激しい物価高が年金生活に重くのしかかります。
“頼みの綱”に値上げの波
1円でも安い店へ。徹底した節約を重ねても、出費を抑えられない理由がありました。
手足に障がいがあり、筋力の衰えも進む緒方さん。車椅子に座りながら片手で調理するのは難しく、毎食の自炊は困難に。
緒方さんが生活を維持するため、頼らざるを得ないのが冷凍食品やカップ麺、パンなど調理を必要としない食品です。
しかし、まさにその“頼みの綱”を値上げの波が直撃しています。
帝国データバンクによると、今月からカップ麺などの加工食品は1084品目、パンも1000品目以上が値上げしました。さらに9月からは冷凍食品も大手メーカーが一斉に値上げします。
激安スーパーでまとめ買い
急激な値上げの一因となっているのが、中東情勢の悪化。今月の飲食料品の値上げは2566品目と、3カ月ぶり2000品目を超えました。
帝国データバンクは、「トレーやフィルムの資材価格や原材料高といった影響が表面化し、品目の数を大幅に押し上げた」と分析していて、この夏以降さらに値上げラッシュが本格化するとしています。
先月末、値上げを目前に控えた都内の激安スーパーを訪ねると、台車にコメを6袋積み込む男性の姿がありました。
「(Q.100円節約するでも大きい?)やっぱり違いますよ。(物価高で)儲けが出せないから(食材費を)削って出していくしかない」
まとめ買いは他にもありました。
来月、値上げが予定されている砂糖です。
値上げ直前の“防衛策”
さらに、値上げ目前の“防衛策”をとっていたのは、消費者だけではありませんでした。
案内されたのは、店の近くにある倉庫。
「(一部の)カップラーメンが7月から値段が上がるということで、定番品の商品をストックして、多め多めに買っています」
倉庫の前に積まれていたのは、カップ麺が入った大量の段ボール。値上げ前に大量に仕入れていたため、価格改定は今月いっぱいまで遅らせることができるといいます。
倉庫の中は、大量の段ボールが並べられています。実はこちらのスーパー、卸売業も営んでいるため、倉庫には常に100種類以上の商品を大量にストック。カップ麺以外の商品も値上げを見越し、通常より多く仕入れていたといいます。
月に一度の特売に殺到
値上げの波が押し寄せる中、都内の精肉店では朝から行列ができていました。平日の朝9時半にもかかわらず、店の前には100人以上がずらりと並び、10時の開店を待ちわびます。
行列の訳は、月に一度の特売。開店直後、店内は人であふれかえり、次々と肉のパックをかごへ入れていきます。
飛ぶように売れるのは、目玉商品の宮崎牛を使った焼肉弁当。値段は通常980円のところを半額の490円に。黒毛和牛の切り落としも100グラム当たり100円以上お得とあって、こぞって手に取ります。
「(Q.お弁当どうでしたか?)(お弁当)ゲットできました」
「(Q.お弁当どうでしたか?)4つ買いました。お昼に皆で食べて…安いですよね」
近年、輸入牛肉の価格は徐々に値上がりし、先月、最高値を更新。一方、和牛や国産牛の卸売り価格も去年の1〜2割ほど値上がりしていて、店側も苦しい状況です。
「基本的に肉の値上がりもそうなんですけれども、トレーとか、石油製品ですよね。ビニールとか、そういったものが軒並み全部上がっていますので」
中東情勢の悪化によるトレーやパックの高騰も進み、さらに経営を圧迫。企業努力では立ち行かない状態です。
“食文化存続の危機”も?
価格高騰は“食文化”にも危機をもたらしています。
朝の時間帯にドリンクを注文すると、サービスでトーストやゆで卵が提供される愛知の代名詞“喫茶店のモーニング”。
「どれだけ来ていただいても、やればやるほど苦しくなるっていう」
創業当時からこちらの喫茶店で提供するモーニングには、トーストとゆで卵がついてきます。しかし…。
パンの仕入れ値はこれまでより、1割ほど値上がりしました。トーストに欠かせないマーガリンはコロナ禍以降高騰を続け、仕入れ価格は1.5倍以上に。さらに…。
卵は8月から1キロ15円の値上がりが決まっているといいます。
モーニングのサービスをこのまま維持できるのか、正念場を迎えています。
愛知が誇る“食文化の存続危機”に、県内の喫茶店組合も不安をにじませます。
鷲津尚宏副理事長
「(モーニングサービスを)本音はやめたいんですよね。モーニングの本場としては、やっぱりやめるわけにはいかんですね。だから今、企業努力っていうか、皆さん本当に努力されて、なんとか今耐えてる時代じゃないですか」
影響は介護施設でも
神奈川県葉山町にある介護施設。施設長が今、頭を悩ませているのが…。
「利用者の楽しみの一つである食事の質を下げることはできませんので」
利用者の食事代を値上げするべきか、判断を迫られています。
厨房(ちゅうぼう)を見せてもらうと、大量の食材を使い、栄養士らがおよそ110人分の昼食を準備していました。
「鶏のひき肉を使うんですけれども、2年前で550円だったのが、今が750円。卵だと、大体おととしは(10キロ)約3900円くらいだったのが、今だと5250円」
食材費は、2年の間におよそ400万円も跳ね上がったといいます。
「こんなにトントントンって(値段が)上がることはなかったので、びっくりですね」
施設では食材コストを抑えるため、調理で使う魚を冷凍の切り身に変更したほか、調味料も低価格のスーパーで購入するなど、仕入れの見直しを進めています。
「とてもおいしいです」
「(Q.食事は楽しみ?)いくつになっても楽しみでございます」
「少しでも自分にできることをしないと、結局値上げをしなければいけなくなる」
一方、施設長は次のように話します。
急速に進む物価高に、コスト削減だけでは対応しきれず、去年に続き今年も食事代の値上げを検討せざるを得ない状況だといいます。
(2026年7月7日放送分より)
















