歴史的円安とイラン情勢による燃油高は、地方空港間を結ぶ地域航空会社に大きな打撃を与えている。国際線を持たず、インバウンドという円安のメリットを享受することもできない。『BS朝日 日曜スクープ』は、地域の人々の暮らしと地域経済を支える地域航空会社の苦境と奮闘を取材した。
1)航空燃料の高騰が直撃…現場で積み重ねる“創意工夫”
静岡県に本社を置くフジドリームエアラインズ。小型ジェット旅客機で北海道から鹿児島まで29の路線を結び、陸路では行きにくかった地域と地域を近づける。しかし、もともと円安で燃料の調達コストが上がっていた中、アメリカとイスラエルによるイラン攻撃が直撃した。
「ジェット燃料は当初、私どもが今年度の計画を立てた時には、1バレルあたり75ドルで計画でしたが、3月4月の途中では1バレル220ドルまで、3倍近くなったのですね」
「かなり経営的、収支的には厳しい状況になっています」
現場では、安全を守りながら、様々な工夫を積み重ねている。
パイロットは離陸前、エンジンをかけ始めるタイミングを遅らせている。さらに地上を移動するときは、2つのエンジンのうち1つだけ使用することもある。さらに離陸時は…
「お客様の数や搭載燃料によって機体重量が軽い場合は、それほど推力も使わなくて飛べます。そうした場合にはエンジンの出力を1段階抑えた上昇の仕方ですとか」
逆に機体重量が重い時は、高度を上げて空気密度の薄い空域を飛行し、燃料の消費量を抑えるという。
フライトを終えた航空機のコクピットの窓は、ボードで内側から塞がれた。「目」を描いているが、実は日よけだ。清掃後は、機内の窓も日よけを下ろしたままにして、直射日光による機内の温度上昇を防ぎ、エアコンの負担を抑える。
しかし、こうした努力だけでは高騰する燃料価格を吸収しきれない。もともとフジドリームエアラインズは国内線で唯一燃油サーチャージを徴収しているが、サーチャージ引き上げは苦渋の選択だという。
「本当にお客様には申し訳ないのですが、路線をしっかり維持していくために、ご理解をお願いしたいと思いますし、応援して頂きたいと思っております」
2)地域路線と連動する企業誘致 “地域の雇用”守るためにも…
フジドリームエアラインズは、県営名古屋空港から山形空港まで、陸路なら5時間ほどかかるところを、4分の1以下の65分でつないでいる。名古屋と山形を空路で結ぶのは、同社1社のみだ。ものづくりが盛んな県として歴史のある山形は、中京圏からの企業誘致を積極的に推進していて、現在は24の誘致企業が操業している。もちろん、この24社以外にも、多数の企業が取引に利用していて、県と企業にとって重要な路線になっている。
降籏涼介課長
「中東情勢の影響もあり、見通しがなかなか利かない中、厳しい面もあると聞いてはいるが、県としてもフジドリームエアラインズ社としても、この地域路線の重要性はお互い共通認識と思っている」
番組が取材した山形県尾花沢市のオプテックス工業は、ロボットで工場を自動化するシステムを設計、生産している。自動車部品メーカーとの取引が多く、名古屋との関わりも深い。2024年には、フジドリームエアラインズの山形-名古屋便を会社全体で240回利用したという。同社の伊藤勝幸社長は「仮にこの路線がなくなってしまうと、移動時間もかかるので、他社との競争で不利になる」と語った。
人々の日常生活の足となっている地域航空会社もまた、深刻な影響を受けている。長崎空港と対馬、壱岐、五島といった離島の空港などを結ぶオリエンタルエアブリッジは、離島で暮らす住民にとって欠かすことのできない存在だ。経営は、全日空をはじめとした航空会社同士の協力や国や自治体からの補助金で支えられ、島民の運賃はピーク時も含め片道5,000円に抑えられている。
岩崎良一課長
「長崎県は、数多くの離島を有している。昨年、オリエンタルエアブリッジの離島航空路線は約30万人近くの利用があった。住民、そして観光客を誘客していくという意味で、この離島航空路線を守っていくことは非常に大切だ」
離島を結ぶという構造上の赤字を抱える中、イラン情勢と円安が追い打ちとなっている。
「短い路線で小さな飛行機だと料金的には全く採算が合わなくて、満席ご利用いただいても、経営的には非常に厳しい状況になります」
「しかし、公共性が非常に高い路線を飛ばしているので、ここはやめるわけにはいかないです。補助金を活用しながら、生活路線として島民の足として、飛ばし続けるというのが一番重要なところになってくるかと思います」
3)原油高に追い打ちをかける歴史的円安 日本経済・地方経済復活のカギはどこに
燃料高騰の大きな要因になっているのが、加速する円安だ。高市政権が発足した去年10月には1ドル151円だったが、今年6月30日には162円台に達した。およそ39年半ぶりの歴史的な円安水準だ。
アメリカ出張から帰国した今村卓氏(丸紅経済研究所社長)も為替相場の動向を警戒する。
今の円安のファクターの一つとして、日本の財政への懸念もあるので、日本としては財政運営にしっかり取り組んでいく必要がある。今後、160円から170円に向かっていく展開もありえるので、責任ある積極財政の「責任」が大事になってくる。
番組アンカーの末延吉正氏(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)は、「発想の転換」「選択と集中」「民間一体となったリアルな条件反射」など、日本の地方経済の現状打開に向けたキーワードを挙げた。
高市政権がまさに17の成長戦略分野を掲げているが、机上のプランでは上手くいかない。民間企業が“稼げる”“雇用を創出できる”と思い、参入できるような選択肢を示していくことが大切だ。そのためには、もっと官民が一体となって、実際に今、起きていることに対してリアルに条件反射をしていかなければいけない。民間からもっと声を挙げていった方がいい。
これまでは、高速道路でも何でも、東京を向いた設計がなされてきた。東京の高速道路で渋滞が起こるのは、一旦東京を通るように設計されているからだ。これからは、東京を経由させずとも、陸も海も空も、もっと地方同士で直接やり取りをしながら活性化させていくというような、発想の転換が必要だ。
(「BS朝日 日曜スクープ」2026年7月5日放送より)
<出演者プロフィール>
今村卓(丸紅経済研究所社長。2008年から9年間、丸紅ワシントン事務所長。米国政治・国際経済・金融などの情報に精通)
末延吉正(元テレビ朝日政治部長。ジャーナリスト。東海大学平和戦略国際研究所客員教授。永田町や霞が関に独自の多彩な情報網を持つ。湾岸戦争などで各国を取材し、国際問題にも精通)







