イーロン・マスク氏率いるXが、新たなデジタル金融決済サービス「Xマネー」をアメリカで展開し始めた。
【映像】他社ではありえない…「Xマネー」驚きのサービス(実際の映像)
現在アメリカの有料会員を対象としたサービスで、Xのアプリ内で送金・受け取りが手数料なしでできるほか、決済にも対応している。お金を預けた場合の年利は6%、買い物での決済には3%のキャッシュバックが適用される。また、家賃など他の銀行への送金も可能で、銀行口座に近い使い方もできるという。現在、アメリカの40以上の州でサービスの許可が下りており、国際送金や請求書払いにも対応しているとされる。
Xでは「年利6%なら下手な投資よりお得では。もう銀行はいらなくなるね」「これは革命!」といった声が上がる一方、アカウントの凍結や乗っ取りへの懸念、サイバー攻撃・詐欺対策のサポート体制を疑問視する専門家の声も出ている。
『ABEMA Prime』では、いち早くXマネーを使い始めた利用者と、モバイル決済ジャーナリストを迎え、Xマネーが金融界に与える影響と課題について考えた。
■「6%は聞いたことない」実際に使い始めた日本人の感想

Xマネー利用者のニューヨーク在住の小野寺聡氏は、使い勝手について「物理カードはまだ届いていないが、AppleウォレットのバーチャルカードでVISAブランドのタッチ決済が使えている。地下鉄やタクシーでも利用できた」。送金は「Xのハンドルネームで相手に送れる。イーロン・マスク氏に3.9ドル、コメント付きで送ってみた」と明かす。
送金上限については、既存サービスとの違いを実感したという。「VenmoやZelleといった既存のアメリカの個人間送金サービスは、1日あたり3000〜5000ドル程度が上限になっていることが多い。Xマネーは初日から7万5000ドルまで送金が可能で、ちょっと大丈夫かなと思いつつ、金額の大きさに驚いた」と語る。
年利6%については「アメリカでも普通の銀行は3〜4%というところがある中で、6%は聞いたことがない。目を引くサービスだと思った」と述べた。
なぜ6%が設定できるのか。モバイル決済ジャーナリストの鈴木淳也氏は、「預かったお金を提携銀行に委託・運用することで還元するというビジネスモデルだ。ユーザーを集めるための入り口として6%を設定しているという認識で、いつまで続くかは別の問題だ」と解説した。
■イーロン・マスクの悲願?1999年から続く決済への執念

今回のXマネー参入は、マスク氏にとって四半世紀越しの悲願ともいえる。鈴木氏は経緯について、「マスク氏は1999年にオンライン決済サービスをスタートさせ、その後合併を経て現在のPayPalにつながる会社の前身となった。しかし内紛で追い出されてしまい、夢は途絶えた。その後Xというドメインを買い戻し、Twitterも買収。今はTwitterをXに変え、そのインフラの上に金融サービスを乗せることでようやく構想が実現した」。
マスク氏はXを「世界最大の金融機関にする」と発言しているとも紹介された。こうした流れについて、経済学者で慶應SFC教授の白井さゆり氏は、「決済が今後ユーザーの消費情報を集め、それを基にローンや金融商品の提案に誘導していく。そこまでできて初めて革命と言えるのではないか。銀行はこれをものすごい脅威と感じるだろう。銀行がなくなるわけではないが、顧客情報というビジネスの核を失うことになる」との見方を示す。
また小野寺氏は、マスク氏のこれまでの実績を踏まえて「テスラもスペースXも、人類が難しいと思っていたことを期待を超えてくる方だった。金融分野でも、マネーロンダリングといった課題をテクノロジーで超えようとしているのではないかと期待している」と語った。
■「決済はテスラやスペースXとは違う」
日本への展開について、鈴木氏は「日本では資金決済法のもと、資金移動業のライセンスで行える範囲は限られている。6%の利息をつけるとなると金融庁から指摘を受けるパターンになるし、預かったお金は全額保全しなければならないため融資もできない構造になる」。
セキュリティ面では「アカウントベースで管理されるXマネーは、アカウントが乗っ取られた際に本人証明ができなければ全て終わってしまう。ソーシャルセキュリティナンバーで確認できるかもしれないが、取り戻すまでに時間がかかり、その間の被害はどうなるのかという問題が残る」と述べる。
白井氏は「分別管理と帳簿管理がきちんとされているかの監視が重要だ。アメリカでは類似の電子マネー決済企業が潰れ、銀行側と企業側の帳簿が一致せずユーザーが守られなかった事例がある。Xがこれを徹底しているかどうかは外からは見えない」。
その上で、「決済はテスラやスペースXとは違う。国の根幹であり中央銀行とも関わる非常にセンシティブな領域だ。気をつけて見なければならない」とした。
(『ABEMA Prime』より)