今、全国の自治体などで公共施設の命名権を売り出す動きが広がっています。
命名権の売却は道路や公園など様々なものに広がっています。
その背景をみていきます。
■『命名権』 大型施設からバス停 歩道橋など“小型化”へ
企業による命名権の取得で国立競技場の名称が変わりました。
三菱UFJフィナンシャル・グループが命名権を取得し、2026年1月から『MUFGスタジアム』という新呼称になりました。
契約期間は、5年間。
契約金額は公表されていませんが、総額100億円程度とみられています。
さいたまスーパーアリーナは、GMOインターネットグループが命名権を取得。
2026年4月から『GMOアリーナさいたま』という新呼称になりました。
契約期間は、6年間。
契約金額は、総額28億円です。
命名権とは、契約料を支払った企業や団体が、施設に企業名やブランド名を愛称としてつける権利のことです。
メリットは、企業側にとっては、企業の認知度やブランドイメージの向上、地域貢献活動のアピール、新たな顧客獲得のチャンス。
自治体や施設側にとっては、施設の維持管理費や運営費の財源を確保、地域企業との連携強化、などがあります。
命名権は街の中にも広がっています。
バスの停留所です。
愛知県北名古屋市の市内循環バス『きたバス』は、運行維持のため停留所の命名権を募集しました。
現在10社が契約を結びました。
命名権料は、1カ所あたり、年間9万6000円〜12万円。
例えば、以前『山之腰南』だった停留所は、現在は地元企業の名前が付いた『名工銘鈑前』になっています。
歩道橋です。
大阪市の、あべのハルカスの真下にある歩道橋は、家具の製造やカフェの経営などを行う友安製作所が2025年12月まで命名権取得し、『友安製作所Cafe 阿倍野歩道橋』となりました。
命名権料は年間135万円です。
「取引先から『あの歩道橋の?』と言われ、認知度の向上を実感している。求職者からも『歩道橋を見て社名を知った』と採用面でも効果がある」と話しています。
駅です。
銚子電気鉄道では、SNSでの交流をきっかけにナウル共和国が笠上黒生駅の命名権を取得。
『ナウル共和国駅』になりました。
ユネスコが消滅危機言語に指定するナウル語での車内放送を実施しています。
海外では、意外なものも命名権の対象になっています。
ドイツにあるベルリン自由大学の気象研究所では、欧州の高気圧と低気圧の命名権を募集しています。
2026年の命名分ですが、高気圧には、約7万2000円で男性の名前をつけることができ、低気圧には、約5万4000円で女性の名前をつけることができます。
収益はベルリン・ダーレム基地の学生による連続気象観測の資金に利用されるということです。
続いてスイスです。
インターネットプロバイダーの『Twifi(トゥウィフィ)』は、子どもに社名にちなんだ名前をつけたら18年間インターネット無料というキャンペーンを実施。
すると、ある夫婦が娘に『Twifia(トゥウィフィア)』と命名し、18年間の無料特典を獲得しました。
■北見市 財政難で『命名権』4000超募集 市内企業 続々購入
命名権を積極的に販売しているのが、財政難にあえぐ北海道の北見市です。
2024年の中期財政計画では、2026年度以降、毎年約30億円の収支が不足する見通しだと公表しました。
その背景には、1市3町の合併で面積が広くなり、人口密度が低くなったことに加え、公共施設の維持にかかるコストが増えたことがあります。
北見市はこの対応策の1つとして、2025年から命名権の積極な募集を開始しました。
北見市では命名権売却の先行事例があります。
2013年に 日本初の屋内カーリング場『北見市常呂町カーリングホール』の移転・新設に伴い、命名権を愛知県の企業が取得。
『アドヴィックス常呂カーリングホール』という名称がつきました。
現在の北見市の命名権の導入状況です。
・市道や広場、公園など4352カ所で募集
・契約期間は、約5年で、年間11万から550万円まで
となっています。
これまでに35施設で契約が成立し、収入見込みは年間約2300万円となっています。
「財政難で維持管理費が削減される中、『自分たちの財源は自分たちで確保する』との思いで、できるだけ多くの施設を対象にした」ということです。
実際に市道の命名権を取得した焼肉店です。
『三輪通道路」は、市内の焼肉店が2025年10月から年間33万円で命名権を取得し、『和牛焼肉あべべ通』と愛称をつけました。
「営業して5年目、コロナ禍で苦しいときに市民に支えられて営業してきた。北見市が財政難だと知り何かできないかと思って命名権を取得した。宣伝効果も期待したが今のところ来客数に影響ない。市に恩返しできればと思っている」と話しています。
追加で費用負担が必要となる場面もあります。
貼り替え費用は自己負担のため、ステッカー作成し貼り付けを専門業者などに委託。
5カ所で総額15万円ほどかけて貼り替えましたが、20カ所以上はまだ貼り替えできていないということです。
「命名権費用より貼り替え費用の方が高くなるかもしれない」と話していました。
ほかの事業者です。
三輪平和公園など2つの公園の命名権を取得したのは児童福祉事業者で、年間総額約40万円の契約となっています。
2025年10月から『三輪平和公園』は『青空みらいダイバーシティ・パーク』、『常磐こぶし公園』は『青空みらいコミュニティパーク』と命名されました。
「財政難の市への貢献と地域の方々と交流できる場にしたい」と話しています。
一方で、命名しなかった企業もあります。
『ひかり野ふれあい公園』の命名権を取得したのは市内の保険代理店で、2026年4月から契約しました。
年間総額11万円で命名権取得しましたが、公園名を変更しませんでした。
「市から未取得の公園命名権について声がかかり、地域貢献になればと思い取得した。親しまれた名称の維持と看板設置にかかる費用を抑えるため、公園名の変更は見送っている」と話しています。
■命名権募集も 関心わずか2件 自治体が直面する“現実”
命名権を募集しても上手くいかないケースもあります。
秋田県は財政力指数が全国47都道府県の中で44位です。
さらに、出生率は31年連続で全国最下位。
婚姻率も26年連続で全国最下位と深刻な人口減少も追い打ちをかけ、税収確保の見通しが立っていません。
そこで“脱・財政難”の一手として、2026年4月から6月にかけて、秋田県が所有する体育館など373施設の命名権売却や施設の利活用のため、企業側に希望や条件を聞き取り調査しました。
「命名権を取得することで、企業名・商品名の認知度向上のほか、社会貢献を通じたイメージアップにつながります」とPR。
企業や法人の所在地は問わないとしました。
しかし、関心があると手を挙げた企業は自然公園と周遊バスに興味を示した、わずか2社でした。
「全国的に例がない施設でもフィルターをすべて取り払いやっていきたい。命名権以外の施設の利活用についても色々な観点で検討の材料にしたい」と話しています。
(「羽鳥慎一モーニングショー」2026年7月17日放送分より)










