経済

ABEMA TIMES

2026年7月18日 11:00

悪質アクティビストから「舐められている」日本 企業を守る規制強化の是非 良質アクティビストまで妨げる壁になる?

悪質アクティビストから「舐められている」日本 企業を守る規制強化の是非 良質アクティビストまで妨げる壁になる?
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 先月の株主総会では、アクティビスト投資家等による株主提案を受けた企業数が過去最多となった。こうした状況を受け、自民党は株主提案制度の要件厳格化など、ルール見直しに向けたプロジェクトチームを設置。改革プロジェクトチームの座長を務める小林史明議員は、「一部の短期的な株主還元や利益を求める行動によって企業も短期的な株主還元に引っ張られ、将来の成長投資の原資が失われている可能性がある」と懸念を示しており、今月中にも政府への提言をまとめる予定だという。

【映像】日本は甘い?株主提案権利のハードル(海外との比較)

 一方で、アクティビストの活動が企業のガバナンス改善に貢献した事例も存在し、規制の是非をめぐっては賛否が分かれている。『ABEMA Prime』では、アクティビストと企業の関係、そして株主提案制度のあり方について考えた。

■「日本はアクティビスト天国」規制議論の背景

アクティビスト

 プロジェクトチームで事務局長代理を務める自民党の神田潤一衆議院議員は、議論の趣旨について「必ずしもアクティビストを狙い撃ちにしたPTというわけではない」と前置きした上で、「企業の収益はかなり上がってきているが、設備投資や従業員の報酬、研究開発投資といった成長投資の方がなかなか伸びない。どうも自己株取得や配当など株主への還元の方が増えている。これはアクティビストの活動の活発化と関係があるのではないかという問題意識がある」と説明する。

 株主の権利に詳しい弁護士の太田洋氏は、現行制度について「日本の会社法上、株主の権利は諸外国と比べても非常に強い」と指摘する。現行の株主提案権は、総株主の議決権の1%以上、または300個以上の議決権を6カ月前から保有する株主が行使できる。太田氏は「ドイツは5%以上または約8000万円相当、フランスは5%以上という要件になっている。日本の3万株という要件は、株価によっては300万円程度で満たせてしまう。しかも複数人で合算して満たすことも認められており、この部分はかなり緩い」と述べ、「アメリカの有力アクティビストが『日本は天国だ』と語っていたという報道もある」と付け加える。

 神田氏は、株主提案が行いやすくなった背景として、「個人にも投資しやすいよう株式の投資単位を引き下げてきた経緯がある。昔は3万株というハードルは高かったかもしれないが、今はだいぶ下がっている。さらに円安で日本企業への投資がしやすくなり、PBRなど日本の株式会社のパフォーマンスの問題も重なって、日本が狙い撃ちにされる要因になっている」と説明する。IBコンサルティング代表の鈴木賢一郎氏は「300個の制限が取れたとしても、アクティビストの活動には全くとは言わないが悪影響は出ないはず。法改正がなされたからといって上場会社は安心してはいけない」とも述べた。

■悪質なウルフパックの標的に 経営者が語る実態

ウルフパック

 大手宝飾品メーカー・ナガホリの代表を務める長堀慶太氏は、実際にアクティビストの標的にされた経験を持つ。「いわゆるウルフパックと言われるような、今まで見たことのないような株主が株主名簿上にたくさん出てきた。大きく分類すると地上げ屋系、中華系のメンバーがいた」と明かす。

 発端は土地の地上げ話を断ったことだったという。「断った途端に株の買い上げが始まった。気がついたら仲間を募って一気に攻撃をかけるウルフパック戦術が展開されていた」と振り返る。2022年3月末の株主名簿で状況が発覚し、4月22日に取締役会で買収防衛策を導入した。

 神田氏はウルフパック対策について、「今年5月に施行された改正金融商品取引法で、どのぐらいの人が結託しているか厳密に測れるようにし、罰則をこれまでの70倍にした。その効果を見ているところだ」と説明する。鈴木氏は「ウルフパックは完全に違法行為。極力、法改正でできないようにしてほしい。ただ違法行為をしてでも金儲けしたいという人たちが相手なので、法規制だけでは難しい面もある。上場会社も企業防衛の自助努力を怠ってはいけない」と強調する。

■「良質なアクティビスト」の役割 株主が言えることもある

アクティビストに狙われる企業

 一方、アクティビストとして投資先企業のガバナンス改善に取り組むカナメ・キャピタルのパートナー・槙野尚氏は、「ウルフパックとは全く違う。我々は適法に株式を取得した上で、会社の価値を上げてほしいと思っている」と語る。槙野氏が手がけた事例として挙げたのが、時価総額約3000億円規模の医療機器メーカー・フクダ電子だ。「2019年から投資を始め、経営ガバナンス上の問題が分かった。やがて内部から、会長が本社地下駐車場に外国車を数十台駐車していたり、高級ワインの飲食代を会社経費にしていたりといった情報が寄せられた」と説明する。

 この情報を監査役に送り、会社が調査した結果、不正が認定されて会長は辞任。「最終的に会長が約1億5000万円を返還し、株価も上昇した。我々がいなかったらこの変化はなかった」と述べる。「経営者は会社の中で絶対的な力を持っており、40年間代表取締役を務めていれば周りはなかなかものを言えない。株主提案で従業員の賃金引き上げを求めたこともある。内部通報を考えたが社内では握りつぶされると感じた人が、株主に情報を託してくれたのだと思っている」と話す。

 槙野氏はまた、「株主の権利に制限を加えるなら、代わりに取締役会の機能強化を求めるべきだ。フクダ電子ほどのことをしても解任にならない国というのは、取締役会がかなり緩い。株主の権利を制限するなら、取締役会をもっと強くしてほしい」と訴える。これに対し神田氏は、「金融庁がコーポレートガバナンスコードの見直しを進め、経産省も成長投資につながるガイダンスを設けようとしている。経営者が自分たちの方針をしっかりと発信し、株主などからフィードバックを受けながらPDCAを働かせていくことをさらに前に進めていかなければならない」と応じた。

 2ちゃんねる創設者・ひろゆき氏は「提案がどんなくだらないものでも、最終的には株主が投票して決める。間違った投票をしたとしてもそれは株主の責任だ。株主提案を制限することで、株主が現経営陣に対抗できなくなる方が問題だと思う。短期で利益を上げるのが良くないかどうかも、株主が決めることだ」と主張する。

 経済学者・竹中平蔵氏も「日本はもともと物言わない株主が多かった。物言う株主を期待していたところ、その中で少し極端な人が出てきたということだ。物言わない株主がもっと責任を持ってちゃんと決めればいい。またPBRが悪いから、アクティビストから舐められている」と述べた。また、良質なアクティビストによる成功例として「(半導体メーカーの)キオクシアだ。東芝に対してアクティビストが『売れ』と言って切り出し、そこにブームが来て今では企業価値1位を争う規模になった。基本的にアクティビストの活動を毀損しない方向にするものだ」と語った。

 長堀氏は「株主提案権のハードルが上がったからといって、提案が減るとはあまり思えない。企業側からすると株主提案が来ると、中長期的な付加価値の創造という部分からエネルギーをそがれる。本来投資すべき本業への投資ができなかったり、新たな成長戦略に踏み切ることを様子見したりという実務的な影響がある」と話していた。 (『ABEMA Prime』より)

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