日米両政府が円安是正のため、28年ぶりに円を買う協調介入を行ったことが今週、明らかになった。トランプ大統領は「友情の証し」と述べているが、アメリカの真意はどこにあるのだろうか?
28年ぶり協調介入
28年ぶり日米が円買いの協調介入。アメリカの狙いは?そんな中、トランプ政権の高官が、日本の消費減税に異論を述べたと報じられている。
まずは、日米協調介入について見ていく。円安を是正するための異例の対応だった。
片山財務大臣は談話で、先月31日に「アメリカ財務省と協調して円買い介入を実施した」と発表した。“円買い介入”とは、政府の資金によって市場で円を買い、円高に誘導するというもので、今回、日米が協調して実施したという。
日本政府は先月30日にも単独で円買い介入を行ったとみられ、協調介入を実施した先月31日と合わせると、介入の規模は11兆〜14兆円とみられている。
一方、アメリカの介入規模はというと…メディアのカメラが閣議中のベッセント財務長官のメモを捉えていた。
そこには「やること」として、「日本円を買う」「(日本円で)およそ8000億円〜1兆6000億円」と書かれていることから、これくらいの規模の介入があった可能性がある。
そして、協調介入の結果、1ドル164円に迫っていた円相場は、一時、1ドル155円台を付け、円高に向かった。
日米協調の円買い介入は、アジア通貨危機以来で28年ぶり。この時、日本は2312億円の介入だった。このことからも、今回の規模の大きさが伺える。
日米の政策金利差
なぜ今回、異例の大規模な協調介入が行われたのか?
そもそも円安の“主な要因”とされているのが、日米の金利差。この金利差が開くと、円安が進むと考えられていた。
日米の政策金利の差と円相場の推移を示したグラフは、青い線が政策金利の差、オレンジの線が円相場を表している。日本は「アベノミクス」のもと2016年にマイナス金利政策を開始すると、日米の金利差が開き円安傾向が続いた。
しかし注目すべきは、おととしのマイナス金利解除。日米の金利差が縮小したが、それでも円安が進行した。このことに、日米両政府が危機感を持ったことが協調介入の背景にあると見られているという。
「友情の証し」真意は?
協調介入に踏み切ったアメリカの狙いをみていく。トランプ大統領は、「友情」という言葉を口にした。
トランプ大統領は2日、「日本は円安で苦しみ助けを必要としていた。我々はいつでも日本のために力になる」と話し、介入について「友情の証しです」と述べた。
ただ、アメリカファーストを掲げるトランプ大統領…この発言を額面通り受け取っていいのか?
というのも、トランプ大統領は巨額の貿易赤字の解消を目指しているが、円安ドル高は、日本に輸出するアメリカ製品の価格上昇を招き、買い控えにつながることに不満を抱いているとみられている。
そのため、円高ドル安に向かわせることで、アメリカの利益になると考えている可能性がある。
さらに、アメリカ国債を日本に売られると困るとの見方もあるという。
ベッセント財務長官と片山財務大臣が言及したのが、アメリカの中央銀行にあたるFRBの、外国の中央銀行などを対象とした資金供給制度である。ある証券会社の幹部は、今回の介入でこの制度が使われたのではと話している。ここにアメリカの思惑が隠されているという。
そもそも日本が介入を行うには、所有するアメリカ国債を市場で売ってドルを得る必要があり、それで円を買う。
ただ、この制度を使うと、アメリカ国債を担保にアメリカ側からドルを借り受け資金を調達、円買いができる。そのため日本はアメリカ国債を売らずに円買い介入の資金を確保できることになる。
実は、アメリカは国債を売られると困るという。
アメリカ国債が大量に売られると、国債の信用が低下し、金利に上昇圧力がかかる。そうなると、家計では、連動する住宅ローン金利が上がり企業の借入金利も上昇。さらにアメリカ政府の国債の利払いが増えることで、財政の悪化にも直結しかねない。
ちなみにアメリカの30年固定住宅ローン金利の平均は、先月最終週で6.81%と、1年ぶりの最高水準となっている。
11月の中間選挙が迫る中、日本に米国債を売却させない狙いがあると見られる。
“悪い金利上昇”懸念
トランプ政権の高官が日本の消費減税に異論を口にしたと報じられている。
また、アメリカCNBCのインタビューで、ベッセント財務長官が「円安の是正に向けて、最終的には政策が決め手」と語った。つまり、協調介入だけでは十分でなく、日銀に追加の利上げを促す考えを示唆した。
金融アナリストで「ピクテ・ジャパン」シニア・フェローの大槻奈那さんによると、これを読み解くキーワードが「良い金利上昇」と「悪い金利上昇」の「2つの金利上昇」で、アメリカが懸念しているのは「悪い金利上昇」だという。
「良い金利上昇」とは、政策金利のことで、日銀が決める。金利が上がることで円建て資産の魅力が増す。すると海外に出ていた資金が日本に戻って来やすくなる。そうなると、円高が徐々に進行することになる。
一方、「悪い金利上昇」とは長期金利のことで、市場で決まる。その代表的な指標が10年物国債の利回り。消費減税などで財政の悪化が見込まれると、売りの圧力が高まる。すると、金利が上昇し、さらなる財政悪化が懸念される。結果、円安が続くことになるという。
「悪い金利上昇」は日本からアメリカに波及する可能性があり、アメリカの懸念はそこにあるという。
背景に「骨太ショック」か
先月9日、長期金利、10年物国債の利回りは、一時2.9%まで上昇。30年ぶりの高水準となった。
上昇の背景にあるのが、政府が6月末に示した経済財政運営と改革の基本方針「骨太の方針2026」の原案。小泉政権以降使われてきた「財政健全化」という文言が消え、「強い経済」の実現に向けて日銀による「適切な金融政策運営が行われることも非常に重要」と明記された。
これを、マーケットが高市政権は利上げに消極的で、政府が日銀の利上げを牽制(けんせい)するのではないかと受け止めた。
そもそも高市政権は発足当初から、積極財政と金融緩和を重視していると見られていた。「骨太の方針」の原案が、長期金利の上昇を招いたのではないかとして、「骨太ショック」と呼ばれている。
(2026年8月7日放送分より)






