今年の上半期に日本を訪れた外国人観光客の旅行消費額が過去最高を更新しました。夏休みで訪日客が増える中、意外なところでもインバウンドが広がっています。
外国人観光客でにぎわう美容室
“KAWAII”文化の発信源、東京・原宿。連日多くの外国人観光客でにぎわっていますが、こんな所にもたくさんの外国人観光客の姿がありました。
午前10時、オープン直後の美容室です。
カットやカラーなど、美容師から施術を受けているのは、ほとんどが外国人観光客です。アメリカからの家族旅行中に美容室を訪れたという、いとこの2人。
「髪はカットする?」
「カットはしてほしいけど、長さは残したい。あとレイヤーを入れて動きを出したいんだよね」
男性はカットと、一部を染めるハイライトカラーをオーダー。
「バレイヤージュ希望?きょうは、ヘアカラーメインだよね?」
「そう」
女性は、カットとバレイヤージュをオーダー。バレイヤージュとは、毛先にかけて徐々に明るくなるグラデーションカラーと表面にハイライトを掛け合わせるメニューのこと。手間のかかる作業のため、完成までの時間は5時間です。
一方、そこまで時間がかかると知らなかったいとこは、笑うしかないようです。
なぜ日本の美容室に?
多くのインバウンド客が訪れるこちらの美容室。外国人旅行者たちはなぜ、観光ではなく、わざわざ美容室にやってくるのでしょうか。
「日本のヘアトリートメントは有名だから、検索して来たの」
「特にブリーチの技術を熟知していて、髪がひどく傷むこともありません。アメリカの美容室よりも技術が高いのに、価格は安いんです」
外国人たちが絶賛するのは、日本の美容師が持つ「技術の高さ」です。
「いろいろな国のいろいろな髪質の方がお越しいただいていますね。スタッフ全体で技術共有会を開いて、髪質ごとにトレーニングをしています」
日本では美容師として働くためには国家資格が必要で、専門学校などで一定水準の技術と知識を学ばなければなりません。
一方、他のアジアやヨーロッパの多くの国では資格は必要ないため、美容師によって技術に大きな差があるといいます。
日本の美容室が外国人に支持される理由は「技術の高さ」の他にもあります。
「インドではドライヤーの温度にあまり気を使わないから、髪がとても傷むの。でも彼(美容師)は常に『熱すぎない?』と聞いてくれるし、実際に熱すぎないのがとても良い」
「皆すごく親切だ。これは日本の『おもてなし』の精神がもとになっていると思う」
細かなところにまで気を配る「丁寧な接客」。これも日本独特のサービスだといいます。“おもてなし”の精神を外国人に伝えるために従業員はこんな努力もしています。
「Do you know duck? It’s an animal. You know what it is? What’s it in Japanese」
「犬」
「Duck Duck.Not Dog.Duck」
「Duckね、アヒル」
週に1回、英語の勉強会を行い、外国人客とのコミュニケーション能力を高めています。
来店客の6割が外国人
もともとは日本人向けの美容室でしたが、日本ならではの「高い技術」と「丁寧な接客」がSNSを通して世界各国に拡散され、今では来店客の6割が外国人に。日本の美容室は、今や外国人観光客の“旅の目的”になっているのです。
「オーマイゴッシュ。ソーグッド。ほんとかわいい。サイコー!」
施術開始から5時間以上が経過した家族旅行中のアメリカ人観光客も、ついにバレイヤージュが完成。
女性が受けた施術コースはアメリカに比べると安く、仕上がりにも大満足のようです。
「日本だとシャンプーした時に軽く1〜2分ヘッドマッサージを加えるという、トリートメントとかコンディショナーのタイミングで。それがすごく喜ばれたりしますね。日本のホスピタリティーの高さとか、やっぱり技術の繊細さというところを買っていただいて、お越しいただく方は多いですね」
ギャルに変身 渋谷の街へ
東京・渋谷区のビルの一角にあるこちらのお店で行っているのは、“ギャル体験”。2023年の営業開始から3年。今では、8割ほどが外国人観光客だといいます。
「ネットで見た日本のギャルのファッションがとてもかわいかったから、それにハマったの」
セイラさん
「プリティー!」
「オーマイゴッシュ」
アメリカから観光に来た女性は、ギャルのスタッフと楽しく会話。メイクも着々と進みます。
「これ、私の“ホクロ”。ブラックポイント」
「小さい点ね。とってもかわいい」
メイクが完成した後は、服やウィッグを選び、ギャルに大変身。わずか30分ほどで印象がガラッと変わりました。
こちらは韓国から観光に来たという女性。韓国にギャルという文化はありませんが、K-POPアイドルがきっかけでギャルを知ったといいます。
「最近はギャルの格好をするK-POPアイドルもいて、それが若者の間で人気なの。“RESCENE”のミナミ。ミナミを通して、皆がギャルのことを知ったの」
ふきてぃす店長
「海外でギャルをやってくださっている方がすごく多くて。ギャルは世界中に知られているんじゃないかなって思っています」
ギャルに変身して自撮り撮影を楽しんだ後は、店のスタッフと渋谷の街へ繰り出します。
ギャル姿でプリントシールの撮影。初めてづくしの体験をした感想は…。
「とっても楽しかった。アメリカにはフォトブースはあるけど、ただ写真を撮るだけで、落書きや編集はできないの」
「(Q.どう?)とても気に入った。めっちゃかわいい」
大満足のギャル体験でした。
バーに現役のお坊さん
東京・新宿区にあるバーにも外国人観光客の姿がありました。
「中国では、こんなお店は聞いたことないです」
「インターネットで『東京で面白い場所』と検索して、このお店を見つけました」
バーカウンターの中にいるのは、なんと現役のお坊さん。日本の仏教を間近に感じる空間でお酒を楽しめる「坊主バー」です。
午後9時過ぎ、週末の店内は大にぎわい。ほぼ満席状態の半分の席を外国人観光客が占めていました。
「社交の場というバーが、厳かさと安らぎをあわせ持っているところが面白いわ」
カウンターでは、お坊さんが慣れた手さばきでお酒をサーブ。青いリキュールの上からマンゴーとクランベリーのジュースを注いだ人気ナンバー1のカクテル、その名も「極楽浄土」。極楽浄土に咲くといわれる蓮(はす)の花を青、黄色、赤でイメージしています。
また提供しているフードメニューは、お麩(ふ)や豆腐、豆を使った精進料理がメインです。
写経や読経、座禅も
ドイツから来た夫婦は写経にチャレンジ。自分たちの名前を漢字で書いてみることに。
「ありがとうございます」
2人とも上手に書けました。
坊主バーでは、1日2回読経体験が行われます。配布される紙には、お経がローマ字で書かれていて、外国人観光客たちは木魚のリズムに合わせてお経を読みます。
続いては、座禅の体験です。
「ゆっくり鼻から吸って、ゆっくり鼻から吐く呼吸が座禅の正しい呼吸です」
座禅といえばおなじみの、こんな体験も…。
さらに極め付きの体験が、棺に入る「入棺体験」です。
棺に入っているのは、イスラエルからの観光客。イスラエルの葬儀では、棺桶を使うことは少ないといいます。
「ここで良い夢を…」
「暑いです」
「すごく不思議な感じ。彼のお経が気に入ったわ」
SNS通して外国人客増加
こちらの「坊主バー」は2000年にオープン。日本人に仏教の教えに触れてほしいと営業を続けてきましたが、ここ2、3年でSNSを通して外国人観光客が増えてきました。
「別に、そこにアプローチしてやったわけじゃなくて、本来仏教が持っていたものを追求していった表現の結果っていうのもあります」
日本の仏教を象徴する「お坊さん」。そして、夜の社交場である「バー」という通常ではあり得ない組み合わせが、外国人に人気のようです。
「お坊さんとお酒。なかなか想像しづらい部分もあって。ちゃんと規則正しいっていうイメージが強いですね」
「(Q.中国じゃあり得ない?)あり得ない。あり得ないですね」
「日本のお坊さんはもっと真面目なイメージがあったけど、楽しそうな感じがしました。ポーランドの神父は、絶対にバーをやったりしないよ」
「絶対にやらないわ」
「本来は戒律というのがありますから、厳格に(僧侶は)結婚してはいけない、お酒を飲んじゃいけない。それは厳格で素晴らしいなと思うんですけど、『煩悩を認めていく』というか、『清濁を全部あわせ持つ』というかね。すべてのものを融合しながら、そしてそこを順化させていくというか。そういうものが作れたらいいなと思っています」
(2026年8月13日放送分より)




















