日本の長期金利が30年ぶりに3%を突破した。指標となる新発10年物国債の利回りが3%台に上昇し、1996年9月以来およそ30年ぶりの高水準となった。背景には、中東情勢による原油高などで強まったインフレへの警戒感、過去最大となった2027年度予算の概算要求による財政悪化への懸念、そして日銀の早期利上げ観測などが重なったと指摘されている。また、アメリカのベッセント財務長官が日本に金融政策の転換を促す趣旨の発言をしたことも、日銀の早期利上げ観測を強め、長期金利の上昇を後押しした。 この金利上昇は正常化なのか、それとも日本経済への警告なのか。『ABEMA Prime』では長期金利3%突破が意味するものと今後の行方について考えた。
【映像】2020年はマイナス金利 急上昇した長期金利(推移)
■「3%はまだ通過点」か「そこまで加速しない」か

2ちゃんねる創設者のひろゆき氏は、「10年物国債金利が2年で2%ほど上がったが、3%はまだ通過点だと思う」と述べた上で、アメリカと日本の金利上昇の性質の違いを指摘した。「アメリカはインフレが高く株も上がっているから景気を抑えるために政策金利を高くしている。日本は逆にみんなが国債を買わないし円もいらないから金利が上がっている。景気が良い国と良くない国で金利が近づいているわけで、アメリカと同じくらいの金利だから大丈夫というのは無責任だ」と語った。さらに、「元本保証で3%の国債があるなら、利回り3%以下のリスクのある株や不動産を買う人が減るリスクがある」と警鐘を鳴らした。
元モルガン銀行東京支店長兼在日代表の藤巻健史氏も「まだまだ通過点に過ぎない」との立場をとる。「1980年には10年金利が11%くらいまで行っている。1985年に先物市場ができた当時、10年金利は6%が常識だった。現役のトレーダーは高い金利を経験していないから3%を高いと思うが、長い目で見れば全然低い」と述べた。上昇の根本的な原因については、「2013年の異次元量的・質的緩和において、日銀が長期国債を一時600兆円規模まで買い入れ、人為的に金利を極端に低く抑えてしまったことにある。今は520兆円程度まで減らしているが、完全な出口に向かうためには、これを減らさないといけないし、そうすれば金利はとんでもなく上がる」と説明する。
一方、第一ライフ資産運用経済研究所の首席エコノミストである永濱利廣氏は「金利がとめどなく上がっていくとは考えにくい」との見方を示した。「足元では日本の金利だけでなくむしろ海外の金利が上がっていて、イラン情勢の緊迫化に伴う世界的なインフレ懸念やAI関連大企業の大規模な社債発行によるアメリカ金利の上昇に引っ張られている部分がある。日本の財政を懸念する向きもあるが、(国の信用リスクを示す指標である)クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を見ると下がっているので、財政要因はそんなに大きくないと思っている」と述べた。また、「政策金利の中立水準はその国の経済の強さでだいたい決まってくる。残念ながら日本経済はあまり強くないので、政策金利の水準もなかなか上がりにくい。べらぼうに上がっていくのはちょっと考えにくい」とも語った。
経済学者の柿埜真吾氏も同方向の見解を示す。「今の日本のインフレ率はだいたい2%程度で、名目経済成長率も4月から6月は年率4.8%だった。その状況を考えれば3%が極端に高いとは言えないし、市場金利が上がったからといってすぐに全体の金利が一気に上がるわけでもない。物価上昇がそんなに加速している状況には今ない。インフレがとめどなく加速していくというのはちょっと大げさだ」と述べた。
■日銀の国債保有残高と財政をめぐる論点
金利上昇が加速するかどうかをめぐって、論点の一つとなったのが日銀の国債保有残高の評価だ。永濱氏が「日銀は国債を年間40兆から50兆円ペースで減らしている」と指摘すると、藤巻氏は「減らしているとはいっても520兆円もまだ持っている。(人に例えるなら)体重180キロが160キロになったからといって健全とは言えない。日銀が国債を買いすぎているから金利が低いのであって、日銀がいなくなるととんでもなく上がる」と反論した。
さらに藤巻氏は、CDSが低いことをもって財政が大丈夫とは言えないと強調する。「政府が倒産しないのは不足分を日銀が紙幣を刷って放出しているからだ。だがその結果、貨幣価値がどんどん希薄化してインフレが加速していく。ハイパーインフレになってもCDSは低いままだから、CDSが低いから財政大丈夫というのは全然成り立たない」と語った。
ひろゆき氏もCDSについて、自身の解釈として「CDSとは5年以内に日本が破綻する割合を示すもの。それが低いからといって、5年の間に日本の景気がとんでもなく悪くなる可能性がないことを保証しているわけではない。CDSが動いていないから大丈夫というのは違う」と述べた。
一方、柿埜氏は日本の財政状況について、「すごくいいというわけではないが、このところ改善してきたことは否定できない」との見方を示した。また、日銀が債務超過に陥る可能性については、「FRB(米連邦準備制度理事会)なども債務超過になっているが、通常はそこまで心配する話ではない」と語った。
■住宅ローンへの影響と「固定か変動か」

長期金利の上昇は住宅ローンにも影響する。フラット35の金利は3.46%に上昇しており、変動金利も上昇傾向にある。番組では、住宅ローン利用者のおよそ8割が変動金利で借りていると紹介された。 こうした中、住宅ローンをどう考えればいいのか。
永濱氏は「変動金利は景気が悪くなれば下がる可能性もある。金利を考えるときは物価上昇率を引いた実質金利で考えるべきで、今、高い金利で借りて住宅を買っても将来は値段が上がる。物価上昇分を割り引いて考えれば実質の金利はそこまで高くない」と説明した。また、「住宅価格が上がっているわけだから、金利がやや高くても今借りて買っておけば将来もっと高くなる、という考え方もできる」と述べた。
ひろゆき氏は「6000万円を35年ローンで借りると35年後にはおよそ1億円を支払ったことになる。35年後に1億円以上の価値になっていないと損なわけで、毎月利率を払い続けて本当に得になるのかが未知数だから人は不動産を買わなくなる。金利が4%や5%になればもっと減り、不動産市場は縮小する」と懸念を示した。
藤巻氏は変動金利から固定金利への切り替えを勧める立場だ。「短期金利が7%や8%、あるいは10%に上がるときに、例えば今、4%の住宅ローンに固定できれば生活設計ができる。日銀はこれ以上政策金利を上げると、日銀自身が債務超過になって存在できなくなると思っているので政策金利は上がらないかもしれないが、歴史的に初めて短期金利を中央銀行がコントロールできなくなる時が来る可能性がある。だからこそ今こそ長期固定に変えるべき時期だ」と語った。
ひろゆき氏も「2年前の変動金利は0.3%から0.5%程度だったが今は1.5%の水準も出てきた。2年で1%上がったということは、このペースが続けば6年後には変動金利が4%になっているかもしれない。そうなら今の時点で3%の固定で契約した方がまだ長期的にはましかもしれない」と述べた。 (『ABEMA Prime』より)