料理の概念が変わりつつある。包丁を使わず料理をする、その名も「包丁キャンセル界隈(かいわい)」が若い世代を中心に注目されているようだ。なぜ包丁を使わないのだろうか。その界隈の事情を取材した。
キッチンバサミで手間削減
お肉はキッチンバサミでカット。ピーマンはコロコロ転がして…手でちぎる!包丁をあえて使わず、ハサミや手を使って調理する。
若者を中心に流行中の日常生活で「当然行うべき」とされている習慣などを“あえて”やめるライフスタイル「キャンセル界隈」。
その最新トレンドが、その名も「包丁キャンセル界隈」だ。
「(Q.お料理は包丁キャンセルしますか?)包丁使ってしまいます。包丁がないと、料理はできないです。料理をする時には、必ず包丁は出して使います」
包丁は欠かせない、という声がある一方で…。
「キッチンバサミめっちゃ使います。まな板を使わなくていいので、1ステップ楽です」
「(ハサミ)1本でいろんなことができるので。時短になるので、食事の時間を楽しめる」
キユーピーが既婚女性を対象に行った調査では、包丁を使わない料理を取り入れている人は、62歳以上ではわずか2%なのに対し、29歳以下では14.6%と7倍以上になっている。
手間はどこまで減らせる?
その影響は、料理道具の売り場にも出ている。
浅草・合羽橋の「飯田屋」では、キッチンバサミの種類が年々増えているという。
「各社から年々いろいろなキッチンバサミが出まくっています。(飯田屋では)去年に比べて150%、キッチンバサミの売り上げが増えています」
では、包丁を使わないことで調理の手間はどこまで減らせるのか。
教えてくれるのは、インスタグラム「はさみレシピ」でキッチンバサミを活用した料理を発信する管理栄養士の野川あやさんだ。
まず作るのは「サバの竜田揚げ」。大きな中骨をハサミで取り除き、そのまま食べやすい大きさにカット。
切ったサバは調味料と片栗粉を加え、袋の中でもみ込む。
あとは、フライパンで揚げ焼きに。包丁とまな板だけでなく、ボウルも使わずにサバの竜田揚げが完成した。
続いては切る食材の多い筑前煮。「包丁キャンセル界隈」では、どこまで手間を減らせるのか。
“包丁キャンセル”と比較
切る食材の多い筑前煮で、通常の作り方と“包丁をキャンセル”した場合を比較する。
まず包丁を使った場合、野菜をまな板の上で切り、さらに鶏肉を切るために野菜を一度別の場所へ。
食材を鍋に入れ、煮詰めること15分…ちょうど30分で完成した。
一方、包丁をキャンセルすると、鶏肉は切ったそばから鍋へ。火にかけながら、野菜も次々と切っていく。
切った食材を置く皿やボウルは必要なし。ここから15分ほど煮詰めたら…24分20秒で完成。包丁を使った場合と比べ、5分40秒短縮された。
さらに、実は調理が終わった後に大きな差があった。
包丁を使ったほうは、まな板やボウル、食材を置いた皿などでシンクがいっぱい。
一方、「包丁キャンセル界隈」では、シンクがすっきり!洗い物が減った。
切る手間だけでなく、調理後の片付けがラクちんに!
時間も時短になり、洗い物も減り、合間合間の手間も減っているので、料理をまたやろうかなという気持ちになる。
“刃物の町”はどう対応?
包丁離れとも言える「包丁キャンセル界隈」だが、刃物の町として知られる岐阜県関市の関係者はどのような思いなのか聞いてみた。
番組では、関刃物文化継承会の小松勇太さんに話を聞いた。
若者を中心に包丁離れが進んでいることについて「かつては食事を作るために包丁が欠かせなかったが、現在では調理しなくても食事を口にできる。包丁キャンセル界隈は、残念ながら仕方ないのでは」と話していた。
こうした中で小松さんらが掲げているテーマが「モノ需要からコト需要へ」。
食材を切る道具としてただ包丁を購入してもらうのではなく、包丁の切れ味を体験したり、包丁作りを知ってもらったりすることで、包丁の文化的な価値を高めていきたいということだ。
2月には関市と協力して、地元の大学生を対象にワークショップを開催したそうだ。
包丁作りの見学や包丁を研ぐ体験のほか、「若者の包丁離れ」をテーマにディスカッションを行ったという。
新たな「キャンセル界隈」
この「○○キャンセル界隈」という表現は「お風呂キャンセル」、“風呂キャン”がブームになって火がついたと言われているが、最近、新たな「界隈」が続々と生まれてきている。
まずは「コンロキャンセル界隈」。特に夏の季節は電子レンジなどを活用する人が多いようで、成城石井が行ったアンケート調査で、夏の食事作りで負担に感じることを聞いたところ、「火を使う調理がつらい」という回答が最も多かったという。
そして、続いての界隈は「バスタオルキャンセル界隈」。およそ3割の人が「バスタオルを使っていない」もしくは「以前よりも使う頻度が減った」と回答したという。
代わりにスポーツタオルを使用するそうで、「干すスペースに余裕ができた」や「洗濯が楽になった」という意見が多かったという。
こうしたタイパ重視の若者のライフスタイル「キャンセル界隈」はビジネスチャンスにも直結している。
最後の界隈は「行列キャンセル界隈」。飲食店のテイクアウトを利用する際、事前にスマホで注文を済ませ、店舗で待ち時間なく受け取れるサービスが増えている。
さらに、行列ができている飲食店でスマホでファストパスを購入すると、行列をスキップできるサービスもある。
(2026年9月15日放送分より)















