倒壊や火災などが懸念され、社会問題となっている「空き家」。その空き家を改修して、街の再生につなげようという取り組みを紹介します。
水族館…築123年の空き家改修
「崩れたら、けがじゃ済まない」
倒壊の恐れや火災の原因になるなど今、日本で大きな問題となっている空き家。
全国にある空き家はおよそ900万戸、30年前に比べ2倍と急増しています。
若狭湾をのぞむ福井県小浜市。人口減少に伴い空き家も年々増加、中心部の商店街でもシャッターが下りる店が目立ちます。
そんな町の一角にある建物に、家族連れの姿がありました。
座敷でくつろぐ人たちの視線の先にあるのは、ズラッと並べられた水槽。実はこちら、町家として使われていた築123年の空き家を改修し、今年5月にオープンした水族館です。
創設者 眞壁喜一郎さん(22)
「こっちの水槽は4メートルの超巨大水槽。別の施設にあったものをここに使わせてもらっています」
1階は、ふすまや引き戸を取り除き、受付や4メートルの大型水槽を設置。
2階は、町家の雰囲気を残しつつゆったりと過ごせるスペースに、全部でおよそ30の水槽が並びます。
展示しているのは、若狭湾や地域の川の生き物を中心に、およそ60種類。中には、生息する河川の環境悪化などで数が激減した幻の魚「アラレガコ」もいます。
「自分が担当しているのが、このカサゴ水槽です。顔が大きすぎるのがいいところやなと思うんですね」
水族館の館長を務めているのが、眞壁喜一郎さん(22)です。
幼い頃から魚をとることが大好きで、福井県立大学海洋生物資源学部に進学。大学で学んだ魚の飼育や養殖の技術を実践する場を作りたいと、地域で問題になっていた空き家を利用し、水族館を作ることを決めました。
「空き家の利活用で水族館という形に変えられたらいいなと。小浜の人にも、『こんな魚が小浜にいたんだ』みたいな発見になってもらえたらいいなと」
今では地域を結ぶ場所に
開業資金はクラウドファンディングなどで集め、地域の人から水槽や捕獲用の網を提供してもらうなど、協力を得ながら、空き家を水族館に再生しました。
村松建築 代表取締役 村松徹哉さん
「水族館をしたいという夢の話をしてくれたので、周りの大人を巻き込むような話だったので、すごく面白いなと思いました」
開業から4カ月で入館者は延べ8000人を突破。休日には60人ほどが訪れ、今では地域を結ぶ場所になっています。
「もう、町が変わりましたよ。おばま水族館ができてから、小さなお子様を連れたファミリーが(町を)歩くようになりました」
「使わないといけないなと思わないと、空き家はなくならないと思います。(水族館の)周りの空き家をうまく使ってもらいながら、一緒になって盛り上げていけたらいいなと思っています」
「再建築不可」物件を…
空き家は、地方の問題だけではありません。
東京都では、全国最多のおよそ90万戸が空き家に。都市部の空き家の特徴が「再建築不可」です。
建築基準法では、建物を建てる敷地が、原則として幅4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければならないと定められ、これを満たしていない土地は「再建築不可」になります。
戦後、急激に都市化された木造住宅密集地域では、この「再建築不可」物件が空き家となり、老朽化するケースが相次いでいます。
千葉県にある2LDKの一戸建て。接している道路の幅が4メートル未満の「再建築不可」物件で、およそ20年放置されていましたが、和室だった部屋は天井を取り払い、梁を生かしたオシャレなデザインの寝室に。
囲炉裏のあったリビングは、ウォールナットテーブルとソファーを置き、明るく落ち着きのある空間に生まれ変わりました。
この建て替え不可の物件をよみがえらせたのが、スウェーデン出身のアントン・ウォールマンさん(33)です。
2019年に日本に移住し、モデルとして活動するかたわら、これまでに再生してきた空き家は8軒。空き家を改修する様子をYouTubeで発信し、現在、登録者数は72万人超えに。
東京都のイベントで講演に呼ばれるなど、空き家再生のスペシャリストです。
「再建築不可」の物件を改修するには、資材などを自ら手作業で運び入れる必要があります。
「(Q.この重機どうしたんですか?)細い道に入れたんですよ。車が入らないんですけど、重機が入れるのが面白いですね」
横幅70センチほどのミニサイズの重機を巧みに操ります。
「(Q.なぜ空き家を再生している?)自分が生まれ育った家も築120年ぐらいの家に育って、ずっとお父さんとお母さんと直したりしていた。(海外は)古ければ古いほど良いというような考え方じゃないかと思いますね」
「ご近所付き合い」大切に
アントンさんが手掛けた空き家は、都内の人気住宅地にもあります。世田谷区・三軒茶屋の駅から徒歩10分の場所にあるのは、黒い壁がモダンな外観の一軒家です。
「(道幅が)2メートルもないし、再建築不可なんですね。買った時にはすごくボロボロだったんですけど」
もとは築89年、およそ80平米の「再建築不可」物件です。
「場所がいいし、そこまで高くないし、エリアが好きだったんですね。全然売れていなかったから、格好よくなるんじゃないかなと思ったから買ったんですね。逆に不動産屋さんに言われたのが、『なんで買うんですか』って言われてた」
高齢の家主が亡くなり売りに出されていましたが、1年ほど買い手が現れず、アントンさんが2100万円で買い取り、1300万円かけて宿泊施設に改修しました。
1階にあった6畳の和室とダイニングは、オシャレなリビングダイニングキッチンに。
アントンさんがこだわったのが…。
「ここが宮大工的な金輪継ぎっていう釘を使わないやつですね。もうちょっと、特別な家を造りたくて」
柱をつなぐ際には、釘やボルトを一切使わず木材同士で接合する「金輪継ぎ」を用いるなど、日本の伝統的な建築技法を取り入れています。
3室あった2階は部屋と部屋の仕切りを取り払い、広々とした開放感のある空間に。
寝室の天井は、杉を薄く加工し編み込んだ「網代天井」に。
「網代天井を作ったんですね。お寺ではよく見る天井なんですね」
「天井をかっこよくすれば、雰囲気が全然違くなるんじゃないかなと。全部合わせるには、すごい計算が必要じゃないですか。パズルみたいにつくっていったので、すごく大変でした」
伝統的な和のテイストを生かしつつ、北欧のインテリアをミックスさせ、シンプルでありながら温かみのある空間に変身させました。
間取りの設計や建材選びなどは、アントンさん自ら行い、水道・ガス・電気といった資格が必要な工事や耐震補強はプロの職人に依頼し、改修しています。
空き家を再生したことについて、住民は、次のように話します。
「ここ3軒空き家だったの。アントンさんが(空き家を)買ってくださったから、にぎやかになったの。回覧板当番もやってくださるから」
「(Q.回覧板当番?)回覧板当番もやっています」
アントンさんが最も大切にしているのは、ご近所付き合い。
地域住民とコミュニケーションを取りながら、空き家改修を行っています。
建物を改修することで景観を保ち、地域の治安悪化を防ぐことも期待できます。
「(日本には)空き家があるんじゃないですか。なんで新しい家をたくさん造るのかって、よく分からないですね。古い物のほうが個性があると思いますね。その歴史を使って、現代を組み合わせたほうが面白いなと思います」
(2026年9月15日放送分より)

















