世界中がAI一色となった今、話題が減ったように見えるメタバース(仮想空間)。しかし実際には、利用者が増加するなど、今もその勢いは続いている。
【映像】夢の共演!美少女アバター&操作中の“おじさん”(2画面表示)
メタバース「VRChat」に潜入すると、至る所に美少女を模したアバターがいた。しかし話してみると、「50代です」「40歳の男性です」と、中身は中高年男性というケースが少なくない。かつて話題となった「バーチャル美少女受肉」、通称「バ美肉」。ソーシャルVR利用者を対象とした調査では、男性回答者の約7割が女性アバターを使用しているという。
『ABEMA Prime』では、「バ美肉とは何か」をテーマに、美少女アバターを使う動機や、拡大するVR市場、そしてリアルとバーチャルの使い分けについて考えた。
■「なりたい自分になれる」バ美肉おじさん7年のケインさん

現実世界の自分にしんどさを感じている、バ美肉おじさん歴7年のケインさん(30代後半)。女性アバターを使う理由について、「カワイイものがすごく好き。自分がそのカワイイになりたい、表現したいからとなることが多い」と語る。
見た目は美少女だが、声は変えずそのままだ。「変える人もいるが、私はこのままの声でやりたいと、最終的にここに到達した」と話す。
バーチャル世界で過ごす時間は、「基本はもう生活に必要な睡眠や食事以外は、大体もういるような感じ。15時間とか」。仕事は接客業で、勤務中は現実の生活を送るが、「休みの日は時間がある。パソコン作業もこの空間でできるため、こっちにずっといて作業をしている」と明かした。
もともとはマッチョでモテる男性になりたかったというケインさん。バ美肉の世界での活動を続ける理由について「自分が表現したいものや、なりたい自分になれるところ。それが最大の理由」と説明する。現実世界でカワイイポーズを取れば変な目で見られるが、「このカワイイ姿で、自分の一番カワイイポーズを体験したい」と語った。
一方で、仮想世界と現実のギャップは大きい。「現実に戻った時に鏡で見るのは、さっき見ていた姿とは違うおじさん。生きていく上で現実世界に行かなきゃいけない。自分の姿や年齢、いろんなものを受け入れられないと思う時は結構あるので、VRの世界にずっといたいと思う」。できれば「こっちの世界に住みたい」と話す。
■「別腹で楽しんでいる」バーチャル美少女が語る動機

VTuberでメタバース文化エヴァンジェリストの「バーチャル美少女ねむ」氏は、バ美肉歴10年。「世間的には『オワコンだ』と言われることもあるが、実はメタバース世界で日常を過ごしている人口は増え続けている。ユーザーが増えて経済が生まれつつあるのが、最近のメタバース」と現状を説明する。
アメリカ企業が運営するメタバース「VRChat」では今年、同時接続者数が15万8000人を記録。日本の利用者数も3.9倍となった。また、日本のメタバース市場規模は、2030年に2025年の約5倍となる4兆円近くにまで成長すると推計されている。
男性ユーザーの7割が女性アバターを選ぶ理由については、ねむ氏は利用者を対象としたアンケート調査などをもとに説明する。「1つはファッション。男性型アバターの衣装も増えてきているが、女性型のほうがカワイイものが圧倒的に多く、幅広い姿を楽しめる」。
2つ目は“コミュニケーション”だ。「現実でも女性同士のほうが物理的・心理的距離感が縮まりやすいという研究があるが、不思議なことにアバター上でも、見た目が女性同士だと距離感が縮まりやすい。友達ができやすい」。トランスジェンダー的な動機を持つ人も一定数いるが、「それは大多数の理由ではない」とした。
リアルとバーチャルの両立について、自身は「どっちも別腹で楽しんでいるタイプ。現実は現実、バーチャルはバーチャルで、別々の人間関係を作っている」と語る。一方のケインさんは「私はそこまで器用じゃないので、現実とバーチャルのどっちでも離れていってしまった人はいる」と明かした。
■拡大するVR経済圏「アバター衣装で生計を立てる人も」

メタバースの経済圏も広がりつつある。ねむ氏は、「ソーシャルVRの世界は、別にみんな儲けるためにやっているわけではなく、SFの延長で違う自分としていろんな人とコミュニケーションするためにやっている」と語る。
その上で、ソーシャルVRの利用人口について「人口は推計で数百万人から1000万人ほどいると言われ、市場として大きくなってきている。知り合いにも、アバター用の衣装を作って生計を立て、現実の仕事を完全にやめた人がいる」と説明した。なお、自身は昼は会社員として働き、夜だけVRゴーグルを被って活動しているという。
地方自治体が観光客誘致のために独自のワールドを作ったり、VTuberがファンと直接会うイベントを開いたりといった事例もある。「現実でやると顔出しなどの危険もあるので、VRChatで一般住民を集める形は増えている。ただ市場としてはコミュニケーションのほうが大きい」。
外見や年齢を超越した世界で、新たな人間関係や経済圏が生まれつつあるメタバース。ケインさんは「ここにずっといたい」と語り、理想の自分として生きる日常を続けている。
(『ABEMA Prime』より)