2人組の女性ラッパー・ユニットHALCALI(ハルカリ)が22年前に発表した「おつかれSUMMER」が、TikTokでの総再生回数が8億回を突破した。さらにSpotifyのストリーミング回数も1000万回の大台をクリアするなど、アメリカやアジアの国や地域を中心にブレークしている。
音楽関係者は「昭和・平成レトロのリバイバル作品としては、今年の上半期で最もバズった楽曲になったのではないか」と絶賛している。
ここ数年、日本のアーティストの海外進出は目覚ましい。YOASOBIや米津玄師をはじめ、藤井風らが活動の場を海外に向けている。その一方で、リバイバル作品にも注目が集まり、松原みき「真夜中のドア〜stay with me」(1979年)や杏里「悲しみがとまらない」(1983年)といった、昭和レトロのシティポップもアメリカやアジアで注目されている。
そんな現状で、HALCALIのリバイバル・ブレークは「これまでにはない現象」(音楽関係者)と言われており、今後の日本の音楽業界の流れに、大きな変革をもたらしていく可能性が出てきた。
HALCALIは、HALCAとYUCALIによる音楽ユニット。2002年に「female ラッパー・オーディション」での優勝をきっかけに、翌03年1月にシングル「タンデム」でメジャー・デビュー。プロデュースしたのは、人気ヒップホップグループRIP SLYMEのメンバー、RYO-ZとDJ FUMIYA。2人は「O. T. F(オシャレ・トラック・ファクトリー)」というプロデュース・チームも結成しており、彼女たちの才能をいち早く目をつけていた。
O. T. Fは、HALCALIの「ダンデム」をはじめ、「エレクトリック先生」「ギリギリ・サーフライダー」などのメイン作品を手がけてきた。音楽関係者は「当時は、Winkを筆頭に、PUFFY、さらにはロシアのお騒がせデュオのt.A.T.u.まで登場するなど個性的な女性デュオが活動する流れが続いていたが、その中でHALCALIも独自のセンスを持ったヒップホップ系女性デュオとして注目されていた」と振り返る。
ちなみに、HALCALIは、デビュー曲だった「タンデム」こそオリコン19位だったが、第2弾の「エレクトリック先生」は16位、そして第3弾「ギリギリ・サーフライダー」で10位となり、その後に発売された初アルバム「ハルカリベーコン」(03年9月)では初登場で5位にランクされた。
だが、現在、バズっている「おつかれSUMMER」は彼女たちにとってのメイン曲ではなく、アルバム「ハルカリベーコン」に収録された中の1曲。FPMとして活動していた音楽プロデューサーでアレンジャーの田中知之氏が制作に携わったものだったが「プロモーション用の映像も制作されなかった1曲」(フォーライフ関係者)だった。
ところが、ここにきてアジアの国や地域で一気に脚光を浴びるようになった。「22年前の作品とはいうものの、斬新なヒップホップと彼女たちの音楽性が見事に融合した楽曲で、特に海外ファンがアップしたTikTokがバズっていたようです」(前出のフォーライフ関係者)。
SNSやメッセージアプリでの反響を元にしたSpotifyのバイラル・チャートでは、マレーシア、タイ、ベトナム、カザフスタン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、韓国といった国々で突出した動きを見せていたそうで「2〜3カ月前までは1日あたり2500回程度だったのが、ここにきてTikTokの再生回数が一気に急上昇した」と言う。フォーライフによると「アジアから米国に飛び火したようで、最近になって8億回を突破したという報告がありました。社内でも驚いています」と話す。
背景としては「今年4月にRIP SLYMEが5人体制で活動を再開したこともあるかもしれません」と推測するが、過去には、TikTokによる昭和・平成レトロの火付け役となった広瀬香美「ロマンスの神様」の16億回は別格として、松田聖子「夏の扉」は1億8000万回、さらにアジア圏を中心にダンス動画で話題となったORANGE RANGE「ロコローション」でも1億回程度で、今回のHALCALIのように、8億回というのは突出した再生回数であることに違いない。
音楽関係者は「ここ数年は“昭和歌謡”や“昭和のJ―POP”がムーブメントを起こしてきましたが、今回のHALCALIが大きな起爆剤になって、今後は“平成レトロ”の掘り出しを考えるキッカケになれば」と話している。