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2025年7月8日 14:12

山中聡 公開中の高橋伴明監督の映画「『桐島です』」のオファーは「本当にうれしかったです」

2025年7月8日 14:12

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映画「ハッシュ!」(橋口亮輔監督)、映画「運命じゃない人」(内田けんじ監督)、津川雅彦さんがマキノ雅彦名義で監督した映画「次郎長三国志」など話題作に出演して注目を集めた山中聡さん。2018年には、「相棒 season16(第17話)」(テレビ朝日系)に出演し、兄・山中崇史さん(芹沢刑事役)と共演。「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019」国内コンペティション部門 短編部門で観客賞を受賞した「歩けない僕らは」(佐藤快磨監督)、映画「人数の町」(荒木伸二監督)、大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」(NHK)などに出演。映画「『桐島です』」(高橋伴明監督)が公開中。(この記事は全3回の後編。前編と中編は記事下のリンクからご覧になれます)

■謎めいた男を演じるのは楽しかった

2020年、映画「人数の町」(荒木伸二監督)に出演。この作品の舞台は、簡単な労働と引き換えに衣食住が保証され快楽をむさぼることもできるが、一度足を踏み入れたら決して離れることができない謎の町。

借金取りから暴行を受けていた蒼山(中村倫也)は、ひょんなことからその町で暮らすことになるが、そこで出会う人々と交流するうちに町の謎に迫っていく…という展開。山中さんは、借金取りに追われる蒼山を助けてその町に連れていく謎の男・ポール役を演じた。

「謎めいていて不思議な話で、面白い映画だと思いました。僕が演じたポールは、怖い感じの人なんだろうなって。映画自体が不思議な感じだったので、こういう作品だと遊べるというか、いろいろなことがやれるという点で面白かったです。

それこそ理学療法士を演じた『歩けない僕らは』みたいな作品だと、実際に病気で大変な思いをしている人たちがいるわけですから、傷つけないようにきちんとやらなきゃいけないという思いが強くなるんですよね。

あと、実在の人となると、やっぱりどうしても『失礼にならないようにいなければいけない』と、自分で壁を作っちゃうところがあるんですけど、『人数の町』の役とかだと、わりと発想が自由というか、やりたいようにやれる。『こうしようか』とか、『ああしようか』とか、どんどん扉を開いていけるんです。

ストップをかけないでできるという感じに僕はなっていて、やっていてどんどん楽しくなってきたりするんですよね。だから、『人数の町』は相手役を見ながら楽しく演じることができました」

――あそこは、ある意味「夢の町」なのでしょうかね?

「どうなんですかね。借金や問題を抱えてどうしようもなくなってしまった人にはそうかもしれません。生活の心配もなく、性欲も解放して相手がイヤでなければやりたい放題ですから。ただ、それまでの友人とか、周りの人たちとは全然連絡が取れなくなってしまう。

だから、ある一面では『資本主義』と『社会主義』みたいなことなんだと思うんですけど。

社会主義国家でいろいろな制限を受けている人たちも、中に入って生活している分には

結構平和で楽しいと言ったりするじゃないですか。ある意味情報が遮断されていますから、そういうものだと思って育ってきているとそうなのかなと。

だから慣れればきっとそれはそれでいいと思っているのかもしれないなって。ただ、普通の生活を知った上で、ああいうところに連れて行かれちゃったら、またちょっと話は違ってくると思いますけど」

――ああいうところで生活してみたいと思います?

「いいえ、こっちの世界を知っているからだと思いますけど、あの町で暮らしたいは思いませんね。借金とか、いろいろな問題を抱えて切羽詰まっている人には魅力的な町に思えるかもしれませんけど。

ただ、結構すごいシチュエーションで面白いですよね。そういうことを考えるのが面白いなと思いました。いろんな発想があるものだなと思って、やっていて楽しかったです」

2022年には、「おいハンサム!!」(東海テレビ・フジテレビ)に出演。この作品は、何かと融通がきかない父(吉田鋼太郎)と母(MEGUMI)、男を見る目がない三姉妹、長女・由香(木南晴夏)、次女・里香(佐久間由衣)、三女・美香(武田玲奈)の日々を描いたホームコメディ。2024年に続編と映画も作られた。山中さんは、美香が勤務する給食会社の社長・楠山役を演じた。

「続編と映画もできてうれしかったですね。僕は給食会社のロケがメインだったので、(吉田)鋼太郎さんとか、ほかの人たちには全く会う機会がなかったんです。だから、見るのがすごく新鮮でした。

何か一視聴者として見て、『あっ、そうだ。これに出ているんだ』みたいな感じで(笑)。山口雅俊監督は天才だと思います。本当に面白い人です」

――「おいハンサム!!」というのはすごいタイトルですね

「そうですよね。『おいハンサム!!』っていうから、ちょっとハンサムな役なんだろうなと思っていたら全然違うし(笑)。『これでいいんだ、僕』ってちょっと思いました」

――山中さんは、長髪でちょっとオタク系の雰囲気でしたね。娘たちが父親に「ハンサムな顔して」と言うのも面白いと思いました

「そうそう。山口さんは本当に面白い。僕は、山口さんと最初は2008年の『エジソンの母』(TBS系)というドラマでご一緒させてもらったんですけど、そのときも面白かった。

山口さんも『こういう風にやって』って演じてみてくれるんですけど、面白いんですよね。

『山口さんがやればいいのに』って思うくらい(笑)。津川(雅彦)さんはもちろんですけど、監督は皆さん演技が上手いんですよね。すごいなあって思います」

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■「ボーイズラブの作品がわりと多いんです」

2023年には、「全ラ飯」(関西テレビ)に出演。このドラマは、全裸で食事するという秘密の癖を持つ金融庁に勤めるエリートサラリーマン・颯太(近藤頌利)が、亡き祖母の若き友人・真尋(ゆうたろう)に祖母が遺したレシピで料理の手ほどきを受けるうちに、彼に今まで抱いたことのない感情が芽生えていく様を描いたもの。山中さんは、颯太の上司・勅使河原室長役を演じた。

「『全ラ飯』は3人の女性監督で回していたんです。最近は、女性の監督が結構多くなりましたけど、3人とも女性の監督というのは、このドラマが初めてだったので新鮮でした」

――毎回異国情緒あふれるお料理が登場して美味しそうでしたね

「そうなんです。『実際にこんな風にできるのかな?』と思いつつ、美味しそうだなって思って見ていました。フードコーディネーターの方たちがいて、一生懸命作っていました。今はいろんな現場にいらっしゃいますね、フードコーディネーターの方が」

2024年、「ハッピー・オブ・ジ・エンド」(フジテレビ系)に出演。このドラマは、社会の片隅で生きるミステリアスな美青年・ケイト/浩然<ハオレン>(沢村玲)と、ゲイであることを理由に家族に捨てられ、他人の家を転々としていたどん底男・千紘(別府由来)のラブストーリー。山中さんは、ケイトの友人で、かつて千紘を一時期養っていたマツキ役を演じた。

――山中さんは、何かとケイトを助けに現れる謎めいた人でしたね

「はい。千紘に浮気されまくって別れたのに、ここぞというときに助けに出てくる。あれは監督に『山中さんは、女優さんだと思っています』みたいなことを言われて(笑)。

監督が古厩(智之)さんと小村(孝裕)さんだったんですけど、小村さんは『ハッシュ!』のサード(助監督)で、それ以来でした。『ハッシュ!』もゲイの役で、オネエみたいな感じでやらせてもらったんですけど、マツキもそんな感じでやっていました。僕は、ボーイズラブの作品がわりと多いんですよね。自分ではあまり意識はしてないですけど」

――大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」の杉田玄白役も印象的でした。ツルツル頭がとても良く似合っていましたね

「ありがとうございます。あれは特殊メイクの江川(悦子)さんという、すごく有名な人がやってくれているんですけど、僕は江川さんと2回目で、最初の作品でも頭を坊主にするお坊さんの役をやったんです。今回と同じような感じでツルツル頭でした」

――撮影はいかがでした?

「やっぱり日本のキング・オブ・ドラマですから緊張しますよね。僕は、(横浜)流星くんとは2回目で、前に飯塚健監督の『放課後グルーヴ』(TBS系)というドラマでご一緒させてもらったんです。それ以来になるんですけど、流星くんは大河の主役ですからすごいですよね。みんな本当に立派になっちゃうんです」

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■高橋伴明監督は熱い人「本当にうれしかった」

        (C)北の丸プロダクション

山中さんが出演している映画「『桐島です』」が現在公開中。この作品は、1970年代に起こった連続企業爆破事件で指名手配犯中の「東アジア反日武装戦線」のメンバーで、約半世紀におよぶ逃亡生活の末に病死した桐島聡容疑者の人生を高橋伴明監督が映画化したもの。

山中さんは、桐島が身元を偽り、長年働いていた工場(会社)の社長・小林役を演じた。

高度成長の裏で社会不安が渦巻く日本。大学生の桐島聡(毎熊克哉)は反日武装戦線の活動に共鳴し、組織と行動を共にする。しかし、一連の連続企業爆破事件で犠牲者を出したことで、深い葛藤に苛まれる。組織は警察当局によって壊滅状態に。指名手配された桐島は偽名を使い逃亡することに…。

――お話が来たときはどう思われました?

「お話をいただいたときは、うれしかったです。伴明さんは、僕の仲人さんなんですよ。伴明さんと(高橋)惠子さんは。

だから呼んでいただいてうれしいなって思いましたけど、(同じく出演した高橋伴明監督の連合赤軍事件がテーマの)『光の雨』の時代の話なので、亡くなっている方もいるじゃないですか。ちゃんとやらなきゃいけないなって思いました。タイトルになっている桐島さん自身が去年亡くなっていますからね。でも、やっぱり伴明さんに呼んでもらうのはすごくうれしいですね。

僕は、今回、桐島だと知らずに雇って、彼が死ぬまでというか、倒れるまでずっと働いていた会社の社長役だったんですけど、何十年か経って老けるところまでやっているわけじゃないですか。だからその年月の経過はどういう風に表現しようかといろいろ考えました。

『光の雨』のときもそうだったんですけど、監督は『そうじゃない』とか、『こうしてほしい』というようなことは一切言わないんです。

『もうホン(脚本)をお前に渡したから、お前が正解を知っている』という感じだろうと僕は思うんですよね。そういう風に『お前に任せた』と言われているような気がするんです。

だから、いろいろ自分の中で考えていましたね。現場に行く前にいろんなことを考えたりとか、現場のセットを見て考えたりとか…。

僕は、30代から70代まで演じるということもわかっているじゃないですか。だから、事務所がプレハブみたいな2階にあって階段を上がって行くんですけど、『30代のときには、トントントントンって一段ずつ飛ばして行ったほうがいいかな』とか。

それで、『70代になったときには、ちょっとしんどそうにゆっくり上がろうかな』とか。実際にそうやるんですけど、それって何ていうのかな?やっぱり計算して作っていることなんですよね。自分が役者として計算してやっていることじゃないですか。だから、『それはどうなのかな?』って、ちょっとそれも思うんですよね」

――監督はそういうことに関しても全く何もおっしゃらなかったのですか

「言わないんですよ。それで、僕は髪も白くしているじゃないですか。(現在76歳の)伴明さんと同じぐらいの年も演じたんですけど、伴明さんの髪は黒いんです。そこまで白くないんですよね。

もちろん70代で白髪の人もいますけど、『白くしている人に見えないかな?』って思ったりとか、『階段を上がれなくなっている人を演じている人に見えないかな?』とか思っちゃうんですよね。何かいつも以上にいろいろ考えた作品でした。

――伴明さんはどんな感じですか?

「伴明さんの世代の方はみなさんものすごく熱いです。今も飲んでいたりして意見が出たりすると『異議なし!』ってやっていますからね。みなさんすごいです」

――今後はどのように?

「役者としてはもちろんですけど、時間があるときに、絵を描いたり、作品を作ったりしているので、いつか個展みたいなことができたらいいなと思っています」。

山中さんの奥さまは、イラストレーターで絵本作家のやまなかももこさん。仲の良いとてもステキなご夫婦。お二人での個展というのも見てみたい。8月には、コントと音楽 vol.06「最低二万回の嘘」(COTTON CLUB)も控え、多忙な日々が続く。(津島令子)

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