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2025年7月18日 13:00

渡辺裕太 落語家としても活動!亡き父・渡辺徹さんが最後に見に来た高座は「すごく調子が良かったんです」

2025年7月18日 13:00

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2022年に61歳という若さで亡くなった俳優・渡辺徹さんと元大人気アイドルで俳優・タレントとして活躍している榊原郁恵さんを両親に持ち、タレント、リポーター、俳優、落語家など幅広いジャンルで活躍している渡辺裕太さん。野菜ソムリエの資格を持ち、YouTubeチャンネル「渡辺裕太の野菜ソムリエチャンネル」も配信。現在、映画「囁きの河」(大木一史監督)が公開中。(この記事は全3回の後編。前編と中編は記事下のリンクからご覧になれます)

■「父親に対して悔いはないです」

近年は落語にも挑戦し、「天狗連俳遊」という高座名で落語家としても活動。父・渡辺徹さんが最後に見に来たのも寄席だったという。

――裕太さんはご両親と一緒に舞台もやられていて郁恵さんが嬉しそうにお話されていましたね

「そうですね。僕の中では父と母との物語をやることができたので、そこで一つの章が終わったというか、区切られた感じはしましたね、父と母と一緒に舞台をやるというのは。

それまでは『一緒にやろう』と言われても僕はずっと突っぱねてきていたんですけど。ちょうど父の40周年だったのかな?そのタイミングだったので、一緒にやれて良かったです。

会場で父のミスするところも見られたし(笑)。

『やっぱりミスするんだ。緊張するんだ。セリフも噛んでいたし…』って(笑)。そういう姿が見られたのは、確かに一つの区切りでしたね。その1、2年後に他界していますので」

――お父さまが最後にご覧になったのが裕太さんの落語だったそうですね

「そうです。僕が父と最後に同じ空間にいたのが客席でした。それも母親と2人で見に来てくれて、そのとき僕がすごく調子が良かったんですよ。

いい話で楽しかったしウケていたし…。それを見て父親が『良かったな』みたいなことをボソッと言ってくれたということを母親から聞きました。

それが僕を父が見た最後だと思うので、そういう意味ではまだまだ全然だけど良かったかなって。僕のそういう姿を見て父親が逝ったので、最後は良かったかなと思いますね」

――お父さまも安心されたでしょうね

「そう思うしかないですよね。自分の中では、父親に対しては、もう悔いはないという感じです」

――親孝行ができて良かったですね

「今、久しぶりに思い出しましたけど、そう思ってもらえたらうれしいです」

――寄席に出るときはどんな感じなのですか

「落語を覚えるのが本当に難しくて大変です。自分で『やりたい』と言ってやっているのに、いつも『やばい!やばい!』って言いながらやっていますね(笑)」

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■船を漕ぐシーンに悪戦苦闘

(C)Misty Film

裕太さんが出演している映画「囁きの河」が今月11日(金)に公開され、「ミニシアターランキング」(11日〜13日)で5位にランクインした。

この作品は、2020年7月、熊本豪雨により球磨川が氾濫し、壊滅的な被害を受けた人吉球磨地域を舞台に、変わり果てた故郷に戻った一人の男が失われた過去と現実に向き合う姿を描いたもの。裕太さんは主人公の息子役。

熊本を襲った豪雨から半年後、母の訃報を受けた孝之(中原丈雄)は22年ぶりに帰郷するが、仮設住宅で暮らす息子の文則(渡辺裕太)は、かつて自分を捨てた父に心を開こうとしない。文則は球磨川下りの船頭を目指し修行に励んでいたが、水害後、球磨川下りの再開の目処がたたず…という展開。

――これまでの裕太さんのイメージとは全く違いますね

「ありがとうございます。どういうことでキャスティングされたのか僕はわからないんですけど、監督さんからオファーをいただきまして。息子の立場というのもあったと思いますので、少なからずそういう部分での印象を持ってくださったのかなとは思います」

――最初に台本を読んでどう思われました?

「撮影に入るまでに台本も結構変わったりもしたんですけど、最初はまずこの題材が実際にあった犠牲者が出ていることなので、そこに対して生半可な気持ちではできない。そういうことをしてはいけないなという思いはありました。

やっぱりこの川にまつわるいろんな人たちがいて、それは多分全部モデルさんがいたりするので、そこを大切にしないといけないと思いました。いろいろ変わったところもありますが、僕は今の形がすごく見やすくて好きです」

――最初に現地に行かれたときは、どんなふうに感じました?

「まずは大きな被害があったとは思えないような、穏やかな場所だなって思いました。すごく心地のいい場所だなあって。滞在する中で(東京と)何回か行ったり来たりしたんですけど、やっぱりホッとするんですよね。『帰って来た』という感じがするようになって。だんだん知り合いの店も増えてきたりして、そこがホッとする場所で。

人吉というところは、景色も山々に囲まれた盆地で、山のトンネルを越えた瞬間にパッと開けて見えるんですけど、そこだけ異世界のような感じなんです。そこに独特の文化がありそうな、そんな雰囲気を感じさせるステキな町なんですよね」

――冒頭のシーンからして別世界のように神秘的で美しいですね

「本当に別世界ですよね。大きな被害があったとは思えないくらい美しいんです」

――裕太さんは、仮設住宅で暮らしながら球磨川くだりの再開を信じて船頭を志しているという設定ですが、船を漕ぐシーンは大変だったでしょうね

「はい。撮影に入る前に数週間、(現地に)船を漕ぐ練習をしに行かせていただきました。その時間は、実際にそこで生活されている方たちと同じリズムで時間を過ごせたので、どういう感覚で、どういう景色を見て、どういう時間を過ごして生きている人なのか…というのを体験することができました。

それがそのまま芝居にも繋がったかなって思います。でも、簡単そうに見えるんですけど、船を漕ぐのは本当に難しいんですよ。小さなくぼみにオールを乗せているだけなので、あれがもう本当に大変で。

でも、ちょっとずつ上手くなっていく感じがあって。そういうのは大人になってからはなかなかないというか。一つのことをずっとやって…というのは。それこそ正直、それまで僕はいろんな仕事の合間を縫ってお芝居の仕事をやるという感じだったので。

ちょうど10年続いた『news every.』のレギュラー中継が終わるタイミングだったんですよ。そういうときにこの船を漕ぐ稽古が入ったので没頭することができました。

正直、それまで不安だったんですよ、芸能界は常に何かやってないといけないって。だけど、他があまりなくてこの稽古だけに当てる2週間があったというのが、それも僕の中ではタイミング的に良かったですね。

いろんなことをやりながら…というのではなくて、没頭できる時間だったので、この船の稽古に集中できましたし、演じた文則のように、ここで僕は新しい道を生きていくという感じがしました。ちょうど僕のあの時期ともリンクしていたというのがありましたね」

――中原さんが船を漕ぐのは修行中の文則役の裕太さんの方がうまくなっちゃったとお話されていました

「そうです。僕の方が完全に上達が早かったんですよ。でも、オールが重いし大変で。中原さんは苦戦しながら全然できてないんですけど、前を見据えて険しい顔をしている姿が師匠の顔をしているので、その時点でもう絵になるんですよ。カッコいいんです。だから『中原さん、もういいんじゃないですか。カッコいいし、雰囲気出ていますよ』って(笑)」

――裕太さんは船から落ちるシーンもありました

「はい。あれを撮ったのは、5月か6月くらいだったかな?めっちゃ寒いというわけじゃなかったので助かりました。ただ、一発勝負で。結構スケジュールも押している中で、1回落ちて髪を乾かしてメイクを直して、新しい服で…とかやったら時間がないから一発でいきたいというのもあって緊張しました。

しかも川に落ちるというのが珍しいから、地元の人たちが見に来るんですよ。岸壁というのかな?結構な数のギャラリーがいたので、それも緊張しましたね。

無事に終わったときは『すごいなあ。映画ってこういうことなんだ』って思いました。

生放送とは違うなあって」

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■父・渡辺徹さんに抱く思いとリンクする部分も

          (C)Misty Film

実生活では仲良し家族として知られているが、劇中演じた文則は真逆で22年前に父親が家族を捨てて家を出て以来会っておらず、家族を捨てた父親に複雑な思いを抱えているという設定。

「何か実物の父親との関係で持ってこられる要素があるかなと思ったんですけど、全然違うなって思って。参考にしたり、引っ張って来られるものはなかったですね。だから、実際にその場所で生活して、そこでどういう思いで生活していたのか…ということにフォーカスしていきました。

ただ、父親を求めていたりとか、父親の温かさ、背中の大きさを感じる中原さんに対して抱く感情というのは、どこか僕が父親に思っていたものとリンクした部分がありました。

後半になるとどんどん関係性が近くなっていって、やっぱり頼りたいし、憧れもあるし…。僕の場合は、確執はなかったですけど、文則がだんだん思いを寄せていくときにちょっと心が温かくなるようなところというのは、僕が父に対して思っていたものとリンクする部分もあると思いますね」

――二人で船を漕いでいるシーンがとても良い感じですね

「あの辺のところから変わっていく感じで。少しずつほぐれてだんだん雪解けしていく。

もともとはやっぱり大好きなお父さんで、求めていて…それだけにいろんな思いがあったんだろうなって思いますよね。

あと中原さんがロケ地の人吉出身なので、人吉巡りを一緒にさせてもらったり、毎晩のように一緒にお酒を飲ませてもらったりとか。すごく優しいし、カッコいいし、キリッとして威厳もあるし、中原さんに対して本当に温かい気持ちが僕は芽生えていたので、そういう思いがうまく表現できていたらいいなと思っています」

――特に印象に残っているシーンは?

「クランクアップのシーンですね。霧がかかっている中、2人だけで船を漕いでいくところを本当に最後の最後に撮ったんですけど、中原さんが失敗を重ねるわけですよ。なかなかうまくいかない。

オールを落としてもう1回やり直して、また落としてやり直して…。見えないところに船頭さんが隠れていて、またスタート地点まで船を持って行くんですけど、それが大変なんですよね。

それで、何回も何回もテイクを重ねて、中原さんが決めて、僕も決めた。『はい、OK』ってなって『お疲れ様でした』って(中原さんと)抱き合ったときは本当にうれしかったです。大変でしたけど、みんなで作り上げたシーンという意味ではとてもよく覚えています」

――完成した作品をご覧になっていかがでした?

「まずは人吉とか球磨川のありのままの魅力をしっかり出せているんじゃないかなと思いました。人間模様もそれぞれありますけど、監督が『余計なことはしなくていい。お芝居をしようと思わなくていい』って言ってくださったので、『何かをやろうとしなくていい、その場でしっかりと生きることだ』と思ってやっていたのがそのまま出ていたというか。人吉・球磨川の純度が高いままお届けできているんじゃないかなと思います」

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■母・榊原郁恵さんが「うちの裕太どう?」

10年間務めた中継リポーターを卒業した「news every.」(日本テレビ系)では、現在特集コーナーを担当。「所さんの目がテン!」(日本テレビ系)、「やさいの時間」(NHK)、「5きげんテレビ」(テレビ岩手)、「えどみせ」(J:COM)などレギュラー番組も多い。

「『えどみせ』も大好きな番組です。ケーブルテレビなんですけど、僕を一番はじめに使ってくださった局で、今でも月に2回、レギュラーで番組をやらせてもらっています。

『news every.』 もそうですけど、そこからすべて始まっているので、そこで今もやらせていただいているというのはありがたいですね」

――取材でいろいろなところに行かれているので、デートのお店にも困らないでしょうね

「はい。恋人ができたら連れて行きたいお店をいっぱいチェックしています。番組で行ったところも隠すつもりはないですし、行きたいなって思うところもいろいろあります。美しい場所も知っているし、レパートリーがいっぱいありますよ」

――結婚願望はあるのですか?

「はい。結婚願望はありますよ、もちろん。でも、それはお相手次第なところもあるので、別に今すぐしたいわけでもないです。でも、今年でもいいし、来年でもいいし、5年後でもいいし…という感じですかね。そこは自分一人で決められることではないので」

――お料理やお掃除など家事も大抵のことはできちゃいますよね

「食べることが好きだからお料理、綺麗好きだから掃除も結構やっているという感じです。でも、結婚ということになると、やっぱり相性ですよね」

――郁恵さんがバラエティー番組などでよく冗談のように『うちの裕太にいい人がいましたら是非!』と言っていますね

「そうなんですよ。あれは、いつも申し訳ないと思っています。母が暴走しちゃって、よくロケとかで共演している女性タレントさんに『うちの裕太どう?』って言っちゃって、言われた女性タレントさんがみんな苦笑いするんですよね。それが気まずいんですよ、僕は。本当に申し訳なくて。

次にその人と共演ってなったときに、ちょっと気まずいじゃないですか(笑)。『母がお世話になりました。いろいろすみません』みたいな話はよくするんですけどね。しばらくはこのままじゃないかな。まだまだいろいろやりたいこともあるので」

二世ということに甘んじることなく、さまざまなジャンルにチャレンジを続ける渡辺裕太さん。YouTubeチャンネルもユニーク。今後の活躍も楽しみ。(津島令子)

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