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2025年8月5日 13:25

木之元亮 「太陽にほえろ!」卒業後、ドラマの劇中でヒゲ剃り「タオルを外したら美しい顔が…(笑)」

2025年8月5日 13:25

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1977年、伝説のテレビドラマ「太陽にほえろ!」(日本テレビ系)の5代目新人刑事・ロッキー刑事として人気を博した木之元亮さん。新人刑事役としては最長の5年2カ月間出演し、卒業後は映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)、「真田太平記」(NHK)などに出演。リポーターとしても活動し、釣り、グルメ、旅番組など幅広いジャンルの番組で活躍。「ウルトラマンダイナ」(TBS系)のヒビキ隊長役としてもおなじみ。8月8日(金)に映画「ハオト」(丈監督)の公開が控えている。(この記事は全3回の中編。前編は記事下のリンクからご覧になれます)

■相米慎二監督に「お前、俳優の顔してねえぞ」と言われ…

ロッキー刑事として広く知られるようになった木之元さんは、デビュー翌年に結婚。長男と次男も誕生し、2児の父となっていた。

「この世界で一生飯を食っていけるという保証は何もないわけじゃないですか。もちろん、『太陽にほえろ!』を卒業した直後はいろいろオファーもあるでしょうけど、それが長く続くかどうかというのはわからないわけで。

そういう意味では、『太陽にほえろ!』が終わって、そこで改めてデビューするような、これからだなという気持ちはありました。甘い気持ちじゃなくて。

でも、ロッキーのトレードマークのヒゲもまだあったので、どこでヒゲを剃るかというのもありました。いろんな意味での新たなスタートという感じでしたね」

1983年、映画「ションベン・ライダー」に出演。この作品は、目の前で誘拐された中学生のガキ大将を追う3人の少年少女(河合美智子・永瀬正敏・坂上忍)と中年ヤクザ・厳兵(藤竜也)の姿を描いたもの。木之元さんは、厳兵の舎弟だが、彼の命を狙うようになる政(まさ)役を演じた。

「『太陽にほえろ!』を卒業して最初の作品だったんですけど、すごく新鮮でした。最後は藤竜也さんに撃たれて死ぬんですけど長回しでね。相米さんは『俺はカット割りできないんだよ』って言っていましたよ(笑)。

相米さんの現場には結構行っているんですよ。1シーンでも行きましたからね。相米さんの最後の映画『風花』にも行きました。北海道に呼ばれて行って、キョンキョン(小泉今日子)と浅野(忠信)くんの2人に絡む“居酒屋の客A”という役。台本では居酒屋だったのが焼肉屋になっていましたけど。

台本ではセリフもない役だったんですけど、相米さんだからということで行ったんですよ。そうしたら、終わって帰ってきてしばらくしたら、『浅野君を捕まえてぶん殴って…というシーンでお前が言ったアドリブ、全部録ってあるから、ちゃんと使うからな』ってセリフにしてくれたんです。それが最後だったような気がしますね。

相米さんは、僕の地元の釧路で高校時代を過ごしているということもあって、結構声をかけてくれて。グルメ番組とか旅番組のリポーターをやり始めたときもちょっと会う機会があったんですけど、『お前、俳優の顔してねえぞ』って言われて…その一言でガクッと来てね。

そのとき体重が100キロ近くあったんですよ。食べる番組をいろいろやっていたらどんどん体重が増えちゃって。でも、相米さんに俳優の顔をしてないって言われて反省して、俳優の仕事があるなしに関わらず、きちんとダイエットするようになりました。いつでも現場に行けるように原点に帰って…と思って減量することに」

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■イワシ、カツオ、イカ…立て続けに漁のリポートをすることに

リポーター業を始めたきっかけは、漁師の経験があったからだという。

「最初に来た仕事がフジテレビの『今夜は好奇心!』。船に乗ってイワシ漁を取材したいって。『木之元さんは元漁師だって聞いたので、ぜひお願いしたい』ってプロデューサーに言われたんですよ。

それがちょうどおやじが死んだ後だったので、これは漁師だったおやじの供養だと思ってやったわけですよ。そうしたらそれが放送される前にそのプロデュ―サーから会いたいって電話があって『実は、次の話がありましてね』って言われて。また船に乗るんです(笑)。

今度はカツオ。カツオの巻き網船に乗る。これはすごく遠いところに行くので、十何時間走るんですよ。船に乗ってリポートをできる人がいない、と。

『木之元さん、イワシ漁のリポート、良かったです。今度はカツオでまたお願いします』って言われてリポートをやったんですよ。そうしたらまた事務所に話があった。次はイカだって(笑)。本当の話ですからね。

今度は長期です。九州、山陰、能登半島、北海道、4カ所でロケ。1回東京に帰って来て、その都度行くんです。本当の漁師みたいな感じ。もともと僕は10代のときに短い期間でしたけど漁師をやっていましたからね、本業で。

それで、情報番組とかリポーター業がどんどん広がっていってね。『今夜は好奇心!』をやっているうちに『ごちそうさま』(日本テレビ系)が決まって。リポーターの仕事が、グルメ番組とか温泉、情報番組…同時にどんどん広がっていきました。

当時はそういう時代だったんですよね。最初は、女優さんとか俳優さんって、あまりリポーターの仕事をやりたがらなかったみたいなんです。今はみんなやっていますけどね。

特に船に乗って漁のリポートというのは難しいんです。ディレクターさんとか、カメラマンさんもいるじゃないですか。船に乗ったときは漁師さんの邪魔になっちゃいけないし、危険ですからね。

僕がいると、『カメラはここにあると安全だよ』ということがわかる。ディレクターはわからないじゃないですか。船の上の仕事の具合というのがわからない。

僕だとある程度わかるし、船頭さんと話して邪魔にならない場所を確認しているので、いいときは船頭さんも呼んでくれるんですよね。だから、スタッフも安心だったんだと思います」

ロッキー刑事のトレードマークだったヒゲを剃ったのは、1984年。火曜サスペンス劇場「扉の影に誰かいる」(日本テレビ系)の劇中だったという。

「村川透監督が、『ロッキーさ、もうお前ボチボチヒゲはいいんじゃないの?』って言ったから『僕も考えてはいるんだけど、誰も剃れって言ってくれないんですよ。事務所も』って言ったんですよ。

そうしたら、『お前にその気があるんだったら、俺がヒゲを剃るシーン作っちゃうよ』って言ってくれたので、『お願いします』ってなって。台本になかったんですが、そういうシーンを作ってもらっています。これには僕も驚きました」

――撮影は一発勝負ですよね?

「そうです。一発勝負。最初は顔を見せないで鏡に向かってヒゲを剃って、タオルをスーッと外すと美しい顔が出るんですよ(笑)。出会ったときからヒゲがありましたから、うちの女房もヒゲがない顔は知らない。僕の素顔を知らないで結婚したんです。

だからヒゲを剃って帰ったら悲鳴があがったんです(笑)。うちの女房、ひどいでしょ?本当の話なんですよ。うちの女房も子どももびっくりしちゃって。ヒゲのない素顔の僕があまりにも綺麗で(笑)。

顔の半分がヒゲでしたからね。女房はいまだに言いますよ。ヒゲがない僕を見て、本当に緊張したって(笑)。それからですね。何かもう逃げようがないなと思って。自分の素顔を出して、どう仕事をしていけるか、これからが勝負だと思って新たな気持ちになりました」

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■大河ドラマで草刈正雄さんと31年ぶりに再共演

1985年、「真田太平記」(NHK)に出演。主な舞台は安土桃山時代後期。真田昌幸(丹波哲郎)・信之(渡瀬恒彦)・幸村(草刈正雄)の生涯と一族の興亡、それを取り巻く人々の生きざまを描いたもの。木之元さんは、幸村の死まで従者として生涯を過ごす向井佐平次役を演じた。

「向井佐平次役で1年間。あれは大きかったですね。難しい役でした。池波正太郎さんがシナリオハンティングで長野県の上田に行ったときに、構想をいろいろ練っていたらしいんですね。

そのときにフッと、『あれっ?ちょっと待てよ。架空の男を作っちゃうか。それで、その男を真田の中に入れちゃって、その男の目線で物語を進行させる』って思いついた。それが左平次だったんです。だからすごく大事な役で。

高遠城落城の際、重傷を負うんですけど、女忍者のお江に助けられる。そのお江が真田の忍者だったので真田幸村に仕えることになるんですけど。僕は池波さんとNHKでお会いしていると思うんですよね。

プロデューサーと最初に会ったときに、いいことを言ってくれたんです。『すごく難しい役だけど、純粋な君の目がいいんだ』って。うれしかったですね。

それで1年間。いい役でしたよね。最後に幸村と一緒に死ぬんですから。最初に幸村に言われているんですよね。『何かお前とは一緒に死ぬような気がする』って。そういうセリフもあるんです。で、その通りに一緒に死ぬんですよね」

――真田幸村を演じた草刈正雄さんとは、2016年の大河ドラマ「真田丸」で再共演されました

「そうです。草刈さんとは31年ぶりでした。読み合わせのときにプロデューサーが僕を紹介してくれないから、主演の堺(雅人)さんが皆さんに紹介してくれたんですよ(笑)。

『真田太平記』では草刈さんは真田幸村役だったけど『真田丸』では幸村のお父さんの真田昌幸役。それを脚本の三谷幸喜さんも知っていて、プロデューサーも知っていて、これはちょうどいい縁だからというので、僕を幸村たちが配流された九度山村の村長・長兵衛役でと。

だから幸村としか絡んでないんですけど、知っている人は知っている…という感じで。そういう繋がりで『真田丸』にも呼んでいただけてありがたかったですね。本当にうれしかったです」

1996年には「ウルトラマンダイナ」にヒビキ隊長役でレギュラー出演。その後のウルトラシリーズにも度々出演している。2020年には映画「三大怪獣グルメ」(河崎実監督)に出演。次回は撮影エピソード、2022年に発症した前立腺がん、8月8日(金)に公開される映画「ハオト」も紹介。(津島令子)

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