俳優の綾野剛(43)が主演を務める映画「星と月は天の穴」(荒井晴彦監督)が12月19日に公開されることが5日、発表された。
共演は、女子大生・瀬川紀子役の咲耶、娼婦・千枝子役で荒井監督作品3作目の出演となる田中麗奈のほか、柄本佑、岬あかり、MINAMO、宮下順子ら。
原作は小説家・吉行淳之介さんの同名小説で、一組の男女の愛の形を冷徹に描き、人間存在の根本を追究した作品。芸術選奨文部大臣賞を受賞している。
監督・脚本は、日本映画界を代表する脚本家であり、近年は監督としても高い評価を得ている荒井晴彦氏が務める。荒井監督にとって、本作の映画化は長年の念願だった。
綾野が演じるのは、結婚に失敗し独身のまま40代を迎えた小説家・矢添克二。心の空白を埋めるように娼婦・千枝子(田中)と関係を持ちながら、誰にも知られたくない“秘密”に悩み、恋愛に臆病になっている。矢添は、自身が執筆する恋愛小説の主人公に自分を投影し、「精神的な愛の可能性」を探し続けていた。そんなある日、画廊で偶然出会った大学生・瀬川紀子(咲耶)の失態をきっかけに、奇妙な情事へと発展。日本の激動期を背景に、一人の男の私的な恋愛模様を描く。
綾野は「映画『花腐し』に続き、本作でも荒井監督の脚本を浴びることができ、主人公を通して言葉の美しさと滑稽(こっけい)さ、文学への造詣(ぞうけい)に触れられ、とてもまれなひとときでした」と振り返った。
さらに「とある小説を主人公が説明する場面では、噛めば噛むほど、呑めば呑むほど説明台詞を逸脱し、たばこを燻らせ酒を堪能するように台詞を生み吐き出し、生きた言葉へと昇華する。脚本に導かれたその過程は、役者人生において唯一無二の体験でした。今思い出しても武者震いします」と撮影の手応えを語った。