音楽バンド「ずっと真夜中でいいのに。」が9月2日に大阪・関西万博会場内のアリーナで自主制作の無料ライブを開催。観客1万人以上を巻き込んだ“壮大な実験”にABEMAエンタメが密着。ボーカル「ACAね」の思いに迫った。
2018年に作詞・作曲を手掛けるACAねによって活動を開始したずっと真夜中でいいのに。ボーカルACAねの素顔など、その多くが謎に包まれた存在だが、エモーショナルなライブの魅力で幅広い世代から支持を得ている。
「お互いに没入する時が一番上がります」

9月2日、ライブ会場に到着したACAねに声をかけると「(昨日は)寝れました。いつもは夜眠れないけど、きょうは眠れて幸先がいいです。すごく楽しみだし、絶対にいい日になると思う」と答えてくれた。
気温35度、猛暑の中で行われたリハーサルは2時間にも及んだ。
ACAね「ステージから見るこの会場だったり、空間。天気の変わり方、景色もすごく楽しみだし、ライブの時間は本当に没頭できる。(観客と)お互いに没入する時が一番上がります」
今回のライブはファンクラブ会員だけでなく、万博を見に来た人も参加できる間口が広いものとなっている。ずっと真夜中でいいのに。は2024年から万博をテーマにした全国ツアーを行い、ホール・アリーナ合わせて動員数は20万人を記録しているが、今回のライブはその集大成だ。
数千万円をかけた“実験”

ライブ前、ACAねはぽつりぽつりと心境を語った。
ACAね「一人カラオケが好きで、何時間でもいられます。“こそ練”でカラオケを利用していて、そこでこそこそライブの練習をしたりしています。毎回(カラオケの)履歴を見ちゃいます。長年歌い続けているのは中森明菜さん。『スローモーション』です」
ACAね「(万博側にアーティストから直接)場所を貸してほしいとお願いした方はいないって聞いて。すごい愚かですよね。すごくワクワクしているんですけど」
自主制作で赤字が確実な中で行うライブは、現代社会に対する疑問を払拭するための“実験”でもあった。
ACAね「非効率に何か疑問を持ったり抗ったりする思いが、誰かの背中に触れられるのか、エネルギーになるのかという実験」
ACAね「『孤独の肯定』をテーマにしていて…孤独は孤立していたり、悲しいものではなくて。最近は『堂々たる孤独をこれからも大切にしよう』と思います」
孤独は悪ではないことの証明…ACAねは1970年の大阪万博のシンボル、太陽の塔をデザインした岡本太郎の言葉から、この仮説のインスピレーションを受けていた。
ACAね「大阪万博が1970年にあったことを知って。当時は宇宙開発、進歩への希望に満ち溢れていた時代だったと調べてわかった。岡本太郎さんからは、作り物もそうですけど、言葉にもすごく刺激を受けていて。『孤独は絶対に社会的である』と。孤独は孤立していたり、悲しいものではなくて、社会と繋がっているからこそ、向き合っているからこそ、他者とぶつかったりするけど、それは自然なことで、孤独を肯定する考えや哲学を持たれていて。その本を読んだ時に勝手ながら考えがすごく近いって嬉しくなって」
「むしろかっこいい“堂々たる孤独”」

「孤独とは何か」を問い続けた経験から、同じような境遇の人々に「孤独は悪でないこと」を伝えたい…そんな思いで挑んだライブがいよいよ開演した。
ライブ終盤のMCパート。ACAねは観客に思いを伝える。
ACAね「ナレーションをしてくださった石坂浩二さんに、1970年と今、何が違うのかお聞きしたんです。石坂さんは『当時は世の中が楽観的で宇宙開発や進歩にすごく満ち溢れていて、争いもなくなるんじゃないかとさえ思っていた。今は複雑で地道だ。でも、どんな時代でも人間の本質とか考えはあまり変わっていないとも感じる』とおっしゃっていました。私もそうなんじゃないかと思っていたので、すごく嬉しかったです」「孤独は社会と繋がっているからこそ、向き合っているからこそ他者とぶつかったり、うまく言葉で伝えられなかったりもする。でもそれは自然なことで、孤立してるのではなく、寂しいものでもなく、むしろかっこいい“堂々たる孤独”です。それを大切にしたいです」
さらにACAねはこうも語りかけた。
ACAね「私は大きな事務所とかに所属しているわけでもないし、スポンサーもありません。大赤字ですが、今日ここで今ライブができていて、大変大変喜びに堪えません」
観客は「孤独は悪ではない」という考えをどう受け取ったのか。
観客A「ちゃんと追い風になりました。頑張れます。日々を強く生きます」
観客B「『無理に前を向かなくてもいいんだよ』とか、孤独に対してACAねさんの思うところを、歌詞とMCを通して伝えてくださるので、私にとってはすごく、どんな時も心の支えで…」
観客C「孤独と戦ってきたというか、ACAねさんが紡ぐ言葉1つ1つがいままでのACAねさんのつらい気持ちだったりとか、ファンと共有して寄り添ってくれる存在」
ライブを終えたACAねに観客のレスポンスから、何を感じ取ったのかを聞いた。
ACAね「本当にみんなの声がものすごくて、未来の誰かの背中に触れられたかもしれないと感じました。そう信じたいなと思いました。諦めない、疑問を持って挑戦するということは、きっと時代が変わっても向き合ってる人たちはいるって感じました。自主制作でスポンサーもなしだったけど、本当にやれてよかったです。ありがとうございました」 (『ABEMA NEWS』より)