「仮面ライダーキバ」(テレビ朝日系)と「仮面ライダービルド」(テレビ朝日系)、平成仮面ライダー2作品にメインキャラとしてレギュラー出演して人気を集めた武田航平さん。連続テレビ小説「ウェルかめ」(NHK)、映画「ROOKIES-卒業−」(平川雄一朗監督)、大河ドラマ「軍師官兵衛」(NHK)、「沈黙の艦隊Season1東京湾大海戦」(Amazon Prime Video)など話題作に出演。三浦貴大さんとW主演を務めた映画「やがて海になる」(沖正人監督)が公開中。(この記事は全3回の中編。前編は記事下のリンクからご覧になれます)
■仮面ライダーの撮影はウィッグで
2009年、映画「ROOKIES-卒業−」に出演。この作品は、3年生に進級した問題児だらけのニコガク野球部の面々が、熱血教師・川藤(佐藤隆太)と共に最後の夏の甲子園を目指す様を描いたもの。武田さんは、予選大会決勝で対戦する笹崎高校のエースピッチャー・川上貞治役を演じた。
「『ROOKIES』(TBS系)は、たまたま知り合いの俳優さんが出ていて、ちょうど『仮面ライダーキバ』が終わる頃だったので、映画から登場する役で出たいと思いました。でも、仮面ライダーと両方はできないからということで断念しかけたんですけど、どうしても出たいと思って。
小さい頃から野球をやっていたんですけど、15歳でこの仕事を始めた時にやめて高校野球をやっていなかったので、やり残したことがあると思っていたからやりたいと言って。『じゃあ丸刈りにできる?』と聞かれたので『できます!』って言ったら『左で投げられる?』って聞かれたんですよ。
僕は右利きなので左では投げられなかったんですけど、『投げられます!』と言って川上役をいただきました。それも自分のお世話になった方々にオーディションがあると聞いて受けさせていただいたんです。だから全部自分で行動して…という感じですね、若い時は」
――ライバル校のエースピッチャー役で左投げ…というのは大変だったのでは?
「そうですね。結構大変でした。原作でも『プロも注目の150キロ投げるピッチャー』という、すごく大切な役だったので、その役をやるにあたって、やっぱり高校野球やプロを志している方々、野球をやっている方々が見た時に嘘がないようにしたいと思って。
仮面ライダーをやりながらだったのですが、いくら深夜になっても毎日必ず20km走って、全部左手で生活するようにしてピッチャーのトレーニングをやっていました。
それは僕がすばらしいとかじゃなくて、やっぱり見ていただく方々に嘘はない、本当にこいつは高校野球をやっているんだっていう風に見ていただけるように、そういう生活を送っていたのですが、今思えば結構しんどかったなって思います」
――仮面ライダーの撮影が終わる前に丸刈りに?
「そうです。だから丸刈りにした後、仮面ライダーはウィッグにしていたんですよね。毎日仮面ライダーの撮影が終わってからか、朝早くのどっちかに20km走るということを決めてしまったので、やめられないんですよ、性格上」
――その役に対する真摯な姿勢が今に繋(つな)がっているのでしょうね
「ただ、俳優さんにはいろんな方々がいらっしゃって、それこそ僕は、わかりやすく言うと大手事務所のようなところにいた経験はないのですが、そういう人たちはやっぱり輝いている部分があったりとか、何かしらの才能がある。
そういう人たちの中で自分はどうやったら肩を並べてお仕事をさせていただけるんだろうと考えた時に、思いつくことは全部やらなきゃいけないんじゃないかなって思ったので、必死になってやっていましたよね、その当時は」
■初めての大河ドラマの緊張をほぐしてくれたのは…
2011年、「ここが噂のエル・パラシオ」(テレビ東京系)で地上波ドラマ初主演を果たす。
武田さん演じる主人公は交通事故で記憶喪失になり、大岡忠輔という仮名を付けられて女子プロレス団体「エル・パラシオ」の雑用係兼レフェリーとして5人の女性レスラーとの共同生活を送ることに…という展開。
――後半でいきなり急展開。吉田羊さん演じるお姉さんが「エル・パラシオ」の代表(佐藤江梨子)とかつてある出来事があって…驚きでした。
「そうですよね。今思えばなかなかハードな展開でした(笑)」
2014年には、大河ドラマ「軍師官兵衛」に出演。戦国時代末期、戦国乱世を終わらせるために突如現れた稀代の天才軍師の鮮烈な生涯を描いたもの。武田さんは宇喜多秀家役を演じた。
「主演の岡田准一さんをはじめ、本当にすごい方たちばかりで緊張しました。初めて大河ドラマに出演できるということで嬉しい反面、緊張するなっていう風にはずっと思っていて。
僕が演じた宇喜多秀家というのはお坊ちゃん武将なんですよね。それをやる時に『どうやってやればいいんだろう?』って思いながら緊張してやっていたのですが、竹中(直人)さんが、『本番用意!』の時にふざけたりしていて(笑)。
僕の緊張をほぐそうとしてくれているのかなと思っていたら、岡田さんやみんなが『いや、いつもあんな感じだから全然気にしない方がいいよ』って(笑)。でも、おかげでちょっと緊張がほぐれましたね。竹中さんのそういう自由だけど作品に対する独特な臨み方というのは、すごく僕の中では救いになりました」
■俳優をやめようと思っていた時に「仮面ライダービルド」のオファーが…
2018年、「仮面ライダービルド」に猿渡一海(仮面ライダーグリス)役で出演。仮面ライダー2作品にメインキャラでレギュラー出演するというのは初めてのこと。
「これもご縁で。僕はちょうどその頃、本当に限界を感じていて、もう俳優をやめようと思っていたんです。芸能界というものにもう耐えられなかったんですよ。
これは今だから喋れますけど、やっぱり自分が信じたものとか、こうでありたい自分じゃなくなっていってしまうというか…。信じていた人に嘘をつかれたりして人を信じることが難しくなってしまっていって…いろいろなことがあって精神的にもきつい状態がずっと続いていたので、もう俳優をやめてもいいかなと思っていたんです。
でも、その時にお声をかけてくださったのが『仮面ライダーキバ』でご一緒した大森(敬仁)さんというプロデュ―サーで。『実はこういう話があるんだけど、もう1回やってもらいたいです』って個人的に連絡が来たんですね。
それでお会いしたら、『仮面ライダーの経験もあるし、今回はとにかく犬飼貴丈くんと赤楚衛二くん、その2人を引っ張って担いであげる先輩の役だから。脚本を読んだ時に、これは武田航平にアテ書きしたように思えたから渡したい』と言ってくださったんです。
それで、人生の勝負だと思って2回目の仮面ライダーに挑戦することになったのですが、悩みましたよ、本当に。2回する人なんかいないですし、プライドが邪魔しましたしね。
やっぱりみんな売れていくじゃないですか、仮面ライダーをやると。その中でもう1回やるなんてどう思われるんだろうとか、ちっちゃいことを考えて苦しみましたけど、そんなことを考えているのはダサいなと思って。
自分がもう本当にやめようと思っていたんだったら、思いっきり人生かけてやってみようと思ってチャレンジしたんですけど、それが良かったみたいで。楽しかったですし、若い2人を支えていくんだったら、自分が目立とうとなんかしなくていい。
とにかく与えていただいた役目、その作品での役割とか、俳優としての役割というのを果たそうという風にやっていたら喜びみたいなものがそこにあったんですよね。
ヒーローものというと、いわゆるイケメン俳優がやるとか、そういう風に思う人もいたり、『特撮でしょう?』って言う人もいますけど、この仮面ライダーというコンテンツは世界に誇れる日本のものですし、それをやらせていただいているんだという実感もものすごく強くなっていきました。
作品のために生きるとか、その役の中で生きるということ、後輩にとっての先輩と言ったら何ですけど、若い2人を引っ張っていきたいとか、支えたい、そうやっていくんだという自分の役目が見つかったんですよね。
そこに喜びがあったので、やって良かったなって思いますし、自分自身、一生懸命やっていたら、そのためだけにやっていたんですけど、すごくいい役割を最後まで与えてくださったので、大森さんを含め、スタッフさんには本当に感謝しています。
『クローズZERO』とかをやっている中で、先輩たちの子分みたいと言ったら何ですけど、先輩たちについていかなきゃいけないのかなと思っていたんです。でも、決して先輩たちはそうしていたわけじゃなくて。
ビルドで自分が支えなきゃいけないという年上の立場になった時に、作品に責任を持つ役割を担(にな)ったことで、山田(孝之)さんとか小栗(旬)さんなど先輩方が作品をよくするんだと思ってやっていたことがよくわかりました。
そういうところの経験が活きているし、そういうところを大森プロデューサーは見ていてくださったのかなって思うと、必然だったのかなという風に思いますね。そこから現在に繋がっているので」
同年、三浦涼介さんとW主演をつとめた映画「星くず兄弟の新たな伝説」(手塚眞監督)が公開。かつて「スターダスト・ブラザーズ」として一斉を風靡したカンとシンゴ。東京の下町にあるバーのオヤジとなったシンゴは「地球がダメなら月でもう一度スターに!」との思いで、売れっ子DJとして活躍するカンを誘って月へと旅立つ…という驚きの展開。
「あれはオーディションだったんです。ビルドの前だったので、もうどうすればいいかわからないという時でした。だから本当にビルドに救われたという感じです」
翌年には、映画「GOZEN-純恋の剣-」(石田秀範監督)で「仮面ライダービルド」の犬飼貴丈さんと再共演を果たす。この作品は、様々なバックボーンを持つ8人の男たちが命を懸けて臨む「御前試合」を軸にそれぞれの人間模様を描く時代劇。武田さんは、犬飼さん演じる主人公・青山凛ノ介の“恋仇”となる剣士・寺脇甚八郎役を演じた。
「あの映画は、仮面ライダーをやっていた人たちが京都で時代劇を…というコンセプトで。
僕自身もそういうライダーとは違うような役割で、犬飼くんともすごくいい関係なのでやらせていただきました。カツラをかぶって着物を着て…というのは日本人しかできないので、素敵(すてき)なことだなって思いました」
――犬飼さんの恋仇で結構ひどい男でしたね
「そうでした。犬飼くん演じる主人公の恋仇で。犬飼くんが愛する女性の苦しむ姿が見たいなんて、すごいことを言っていましたよね。ひどい男でした(笑)。でも、犬飼くんと一緒に殺陣(たて)の練習をしたりして楽しかったですよ」
「仮面ライダービルド」に出演したことがきっかけで俳優として生きていく決意を改めてしたという武田さん。BLドラマに初挑戦した「オールドファッションカップケーキ」(フジテレビ系)、カッコ良さを封印して父親役に挑んだ映画「この小さな手」(中田博之監督)など新たな役どころを演じた主演作も続く。10月24日(金)に三浦貴大さんとW主演を務めた映画「やがて海になる」が公開されたばかり。次回はその撮影エピソード&裏話なども紹介。(津島令子)。
ヘアメイク:KEN
スタイリスト:岩田友裕




