映像ジャーナリストの伊藤詩織氏が監督を務める初長編映画「Black Box Diaries」の日本公開版が、12 月12 日に公開されることが6日、発表された。
今作は、伊藤氏が自身の体験を元に、社会の沈黙や偏見、そして自身に圧し掛かってきた圧力と向き合い続けた姿を、本人の視点から描いたドキュメンタリー映画。
製作には「新聞記者」(2019年)や「月」(23年)など社会派作品で知られる映画会社スターサンズが参加した。世界各国の映画祭や賞レースで高い評価を獲得、第97 回アカデミー賞では、日本人監督初の長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた。
今作の内容について発表リリースでは、次のように説明されている。
「2015 年4 月3 日、ジャーナリストをめざす伊藤詩織25 歳は、ある日突然、思いもよらない被害を受ける。それは、【同意のない性被害】だった。伊藤は実名を公表し、この事件と立ち向かうことを決意し、そこから伊藤の世界は一変する。性暴力の被害を受けた一人の女性が、自身に起きた事実を記録しながら、社会の壁を少しずつ打ち壊す。声を上げ続ける痛みを通じて、この理不尽な世界と、そこで見せる希望の光を、圧倒的なリアルな映像で描き出しました。世界が見つめ、社会の心を揺さぶった、ひとりの女性の“沈黙”と戦う旅が、今幕を開けます」
伊藤氏は「本作は、私が被害直後から日本で直面した現実を追い、記録した作品です。逮捕は直前で止められ、証拠や証言は黒塗りでした。それでも集めた真実の“かけら”をつないだのが本作です。どうか私の名をいったん忘れ、身近な人の出来事として見てください。もし同じことがあなたや大切な人に起きたなら、何を信じ、どう動くのか。見終えたあとに交わされる小さな一言が、沈黙をほどき、次の誰かを守り、社会を少しずつ動かす力になると信じています」とコメントした。
この作品をめぐっては、伊藤氏の代理人を務めていた弁護士らが、許諾のない映像や音声が使われていて、人権上問題があるなどと指摘していた。今年2月に、外国特派員協会で開かれた会見では、元代理人弁護士らは、「海外での上映や配給のプロセスにも問題がある。ルールやモラルに反しているのなら改めることが責任を取るということだ」「日本での上映を止めたいと思っているわけではない。法的、倫理的な問題がある映画が上映されること自体が問題だ」などと訴えていた。
発表リリースによると日本公開版では当事者からの指摘を受けたところなど「一部表現を修正し配慮をした」としている。
