女優の若村麻由美(58)が13日、インスタグラムを更新。8日に亡くなった俳優の仲代達矢さんを追悼した。若村は、仲代さん主宰の俳優育成塾「無名塾」出身。以下、全文。
「恩師に捧ぐ
仲代達矢さんと奥様の宮崎恭子(やすこ)さんに初めてお目にかかったのは、無名塾入塾試験の面接でした。
18歳になったばかりの私は、仲代さんの、すべてを見抜くような鋭い眼光に緊張し、『真っ赤な顔して…。』とおっしゃった低音の第一声に、全身が震え上がりました。
当時、仲代さんは黒澤明監督の『乱』の撮影の真っ最中だったそうです。
その隣には、私の人生を変えた舞台『ハロルドとモード』のモードおばあちゃんを演じられた宮崎さんが、ドギマギする私を面白そうに眺めながら、向日葵のような笑顔で光を放っておられました。
あのご夫妻の光景は、今も目に焼きついています。
ご縁あって無名塾に入れていただき、【演劇】というものづくりの面白さを、日々体感しました。
お二人は夫婦として同志として、生きるすべてを演劇に捧げ、時間と情熱を注いで若者を育ててくださいました。
私にとっては【演劇の父と母】…もう雲の上で再会されているでしょうか。感謝の思いでいっぱいです。
今年、能登半島地震復興のための能登演劇堂ロングラン公演『肝っ玉おっ母と子供たち』の仲代さんは、膨大なせりふと歌と軽やかなステップをこなし、強い母性と生命力あふれるおっ母を演じきり、圧巻の千穐楽でした。奇跡の御歳92歳に、ただただ感涙…。
その後、『観(み)に来てくれてありがとう。また一緒にやりましょう!』とお電話をいただき、『はい、ぜひお願いいたします』と未来に向けたお話をしたのが、仲代さんとの最期になりました。
以前、仲代さんが私の出演番組にサプライズメッセージを送ってくださったことがあります。
『役者は生涯修行です。柩(ひつぎ)のふたが閉まるまで、その精進を続けてもらいたいと思います』と。ご自身の覚悟を伝授してくださったのだと感じ、身の引き締まる思いがいたしました。
その言葉通り役者として生涯現役を貫かれた仲代さんに、心からの感謝と『ブラボー!』の大喝采を贈り続けます。カーテンコールは夢の中で…。
宮崎さんは、無名塾で後進を育てたことについて書き遺されています。
『若者の中でもう一度生まれ変わる、ささやかな転生の術かもしれない』と…。
不肖の弟子ではありますが、自分の中に刻まれた演劇DNAを信じて、目前に控えた舞台『飛び立つ前に』のマドレーヌ役に全身全霊をかけ、慎んでお二人に捧げます」
※写真は資料」
