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2025年12月5日 14:00

平田満 40代になった時、ひとりでやってみようとフリーに!妻・井上加奈子さんと企画プロデュース共同体を立ち上げる

平田満 40代になった時、ひとりでやってみようとフリーに!妻・井上加奈子さんと企画プロデュース共同体を立ち上げる
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つかこうへいさん原作の映画「蒲田行進曲」(深作欣二監督)のヤス役でブレイクし、一躍その名を知られることになった平田満さん。日本アカデミー賞最優秀主演男優賞をはじめ、多くの賞を受賞。舞台でもヤス役を演じて話題に。映画「男はつらいよ 寅次郎恋愛塾」(山田洋次監督)、鶴田浩二さん主演ドラマ「シャツの店」(NHK)、大河ドラマ「独眼竜政宗」(NHK)、映画「浅田家!」(中野量太監督)などに出演。舞台でも読売演劇大賞最優秀男優賞、紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。2026年1月23日(金)に映画「安楽死特区」(高橋伴明監督)、1月20日(火)には舞台「ピグマリオン-PYGMALION-」(東京建物ブリリアホール・東京都)の公演が始まる。(この記事は全3回の中編。前編は記事下のリンクからご覧になれます)

■つかこうへいさん以外の舞台に初めて行った時は…

早稲田大学在学中に劇作家・つかこうへいさんと出会ったことで俳優の道に進んだ平田さん。「蒲田行進曲」でブレイク後、映画「男はつらいよ 寅次郎恋愛塾」、映画「まあだだよ」(黒澤明監督)など多くの映像作品に出演することに。

「嬉しかったですね。黒澤明監督や山田洋次監督、ほかにも自分が見ていいなと思っていた監督と一緒に仕事ができたというのは、本当に幸せだなって思います」

1992年から土曜ワイド劇場「タクシードライバーの推理日誌」(テレビ朝日系)に出演。この作品は、元警視庁の敏腕刑事という経歴を持つタクシードライバー・夜明日出夫(渡瀬恒彦)が乗車させた客が関わった事件を解決する様を描いたもの。平田さんは、夜明の同期で元部下だった神谷雅昭警部役。夜明とは意見が食い違ってケンカになることも多いが、最大の理解者でもある。

――神谷警部も印象的な役でしたね

「神谷はどんどんコメディ的になっていきましたね。真面目にやっていると、それがそれでまた面白くなるというか。シリーズが続いて2016年までありましたけど、ありがたいことです」

――映像作品と並行して舞台もずっとやってらして、2001年には読売演劇大賞最優秀男優賞を受賞されました

「はい。『ART』と『こんにちは、母さん』でいただきました。あの賞も周りの方々のおかげです」

――平田さんご自身としては、舞台の方がしっくりくるという感じですか

「しっくりくると言うほど詳しいことは言えないんですけど、舞台育ちというか、最初が舞台ですから、やれているうちは舞台ができたらいいなというのはありますね。舞台は公演が終わったら終わりなんですけど、ある意味、どんな役でも稽古から千秋楽まではみんな一緒にいるじゃないですか。それがいいなって思うんですよね。

映像だと、入って1日だけの仕事もあるじゃないですか。それでももちろんやりがいのある仕事ですけど、結局監督とかスタッフは最初の準備、クランクインからクランクアップまでずっとやっていて、そこまでやる俳優さんもいらっしゃるけど、ほとんどの俳優は全部に出ているわけではないでしょう。この場面でという感じで。

もちろん全力でやるんですけど、舞台の良さは稽古からずっと行っているので、結束力も強くなりますよね。チームワークとかが、その中でもっと良くなったりするということもある。そういう過程も見られるのは舞台の良さかなと思いますね」

――舞台は稽古からの積み重ねがありますものね

「そう。映像は、撮影現場に行って、その場でそのシーンの段取りをして、全てを出せと言われて出さなきゃいけないというプレッシャーもありますし、逆の意味で言えば、最初から最後までずっと責任を持たなくていいというのもあるし…両方の良さはあると思いますよね」

――つかさんの舞台は、「口立て」(台本がなく、その場でセリフを与えていく)という独特の手法で知られていますが、よその舞台に出演される時に戸惑いはなかったですか?

「ありました。つかさんとの稽古だと、台本がないからセリフを覚えて行くとか、役作りを勝手にやっていくわけにはいかない。どんどん変わっていく。下手に役作りなんてやっていくと怒られますからね(笑)。毎日少しずつ同じことをやっていくので、自然にセリフも入る。そういうやり方でずっとやってきたので、初めてつかさん以外の芝居に行った時は戸惑いました。つかさんのやり方とは全然違いましたからね」

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■40代で「このままでいいのかな?」とフリーに

平田さんは、つかこうへいさんとの最初の舞台「郵便屋さんちょっと」で井上加奈子さんと出会い、27歳で結婚。3児の父となる。舞台、映画、ドラマなど多忙な日々の中、40代に差し掛かった時、事務所を離れてフリーに。2006年、奥さまで俳優の井上加奈子さんと企画プロデュース共同体「アル☆カンパニー」を立ち上げ、2024年に「パタカラぷろじぇくと」を展開。最少の人数で、自分たちがやりたい演劇を目指しているという。

――舞台に関してはご自身でも企画されて、奥さまの井上加奈子さんとご一緒にやられたりしていますが、映像に関しては仕事を選ぶ判断基準は何かありますか

「いえいえ選ぶなんて、そんなことを言ったら二度と仕事が来なくなっちゃいますよ(笑)。選ぶほどいっぺんに…ということはないし、ましてや事務所の方がいらっしゃるので、『これは無理です』という事実上無理なことはちゃんと整理してくださいますからね。大体は文句を言わずに何でもやらせていただきますけど、40代のある期間、フリーでやっている時があって。

ありがたいことに仕事をオファーしてくださる方もいて感謝していたのですが、自分のやりたいことは本当にこれなのかなって思ってしまって。やっぱりどうしても『蒲田行進曲』のヤスのイメージが強いみたいで。そういう役のオファーが多くなっていたんですよね。ヤスとは違う芝居をしなきゃいけないという思いもありました。このままじゃ役者としてダメなんじゃないかという思いもあったので、一度ひとりになってやってみようと思って事務所を離れました」

――フリーになってみていかがでした?

「その時に仕事をくださるととても嬉しくて一生懸命やらせていただいていたんですけど、たまたまスケジュールが重なってしまったことがあって。そういう時の対処の仕方がわからなかったんですよね。

両方にご迷惑をかけてしまうと思って困っていたら、たまたま両方の作品の助監督同士が知り合いだったということがわかって、二人で話してくださいって。ひどいですよね。そんな責任逃れってないでしょう(笑)?たまたま師弟関係みたいに仲のいい助監督同士だったので、うまくやってくれましたけど、そうじゃなかったら大変なことになっていましたよね」

――フリーだとギャラの交渉もご自分で?

「そうです。これもね、やっぱりよくあるのは、もう撮影が終わる寸前に『じゃあ、ちょっと』ってなるんですけどね。映画は最初から『ギャラはこれ位ですけど大丈夫ですか?』って聞いてくれるから、『もちろん大丈夫です』という感じで。その方がいいですよね。『俺はこれでしかやらない』というようなことはないですから。

ギャラの交渉時はお互いが遠慮しちゃってね(笑)。金額をちゃんと言った方がいいので言ったことがありますよ。『他では1本このくらいなんですけど』って言ったら『いや、うちはこれしか出せません』と言われたので『じゃあ、それでいいです』って。

でも、その方が気持ち良くないですか?何か変な駆け引きをするよりは。フリーの状態は6、7年だったかな?ご縁があって現在の事務所(アルファエージェンシー)に入ったら、ギャラ交渉やスケジュール調整とかも全部やってくれるようになったから助かっています」

2006年「白夜行」(TBS系)に出演。このドラマは、父を殺した少年と、母を手にかけた少女の14年に渡る愛の軌跡を描いたもの。

1991年、建設中のビル内で質屋の主人・桐原洋介(平田満)が殺された。洋介の妻・弥生子(麻生祐未)は店員の松浦(渡部篤郎)と愛人関係にあり、疑わしいが不確かながらアリバイが。刑事の笹垣(武田鉄矢)は、洋介の11歳になる息子・亮司(泉澤祐希)に奇異な印象を受ける。それから間もなく、洋介に売春していたという噂がある西本文代(河合美智子)がガス漏れ事故で死亡。ひとり残された娘の雪穂(福田麻由子)は裕福な親戚に引き取られることに…。

「ロリコンの質屋で小学生の息子の同級生に手を出すという、とんでもない男でしたね。ロリコンというだけじゃないな。あれはかなりひどい男でした。

でも、そういう人がいないわけじゃないのがこの世界ですから。多分、今だったらちょっと放送内容的に適切じゃないって言われそうですよね。

ただ、『白夜行』がどうのこうのじゃなくて、実際の社会であることは、やって良い悪いだけじゃなくて、それをないものとしてはいけないだろうっていう思いはありますよね、実際人間がやっていることだったら。

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■いろんなコスプレに挑戦!「とても楽しい撮影でした(笑)」

2020年、映画「浅田家!」に出演。この作品は、「家族でやってみたいこと」をテーマに、様々なシチュエーションでコスプレして撮影するユニークな家族写真で話題を集めた

写真家・浅田政志さんの実話をもとに描いたもの。

浅田家の次男・政志(二宮和也)は、父(平田満)の影響で幼い頃から写真に興味を持ち、写真専門学校に進学することに。卒業制作の被写体に家族を選び、浅田家の思い出のシーンを再現した写真で学校長賞を受賞。やがて様々なシチュエーションを設定しては家族でコスプレして撮影した写真で個展を開催。写真集も出版して権威ある賞も受賞する。プロの写真家となった政志は、家族写真の撮影で全国を回るようになる。2011年、東日本大震災が発生し、かつて撮影した家族のことが心配になった政志は被災地に向かうが…。

――「浅田家!」のお父さん、とても良かったです。好きでした

「ありがとうございます。脚本からほのぼのとした何かが伝わってくる感じを受けました。中野監督の作品の肌合いも好きだったので、是非やりたいと思いました。凄いエネルギーと時間をかけていて、とても楽しい現場でした」

――劇中では消防士、レーサーなどさまざまなコスプレも披露されています。特に消防士のコスプレが良く似合っていましたね

「あれは、みんなで消防車に乗ったんですよ。すごかったです。なかなか消防車に乗ることなんてできないですからね。いろんなコスプレがあって、撮影は本当に楽しかったです。

『浅田家!』をフランスで見た日本人の方が、『向こうですごいドカンドカンウケていて嬉しかった』っておっしゃっていました。フランスですごくウケたらしいんですよ、あの作品が。

日本で起きた東日本大震災のことなどもきちんと入れていて、すごくいい作品だと思いました」

「浅田家!」は、第36回ワルシャワ国際映画祭(国際コンペティション部門)と、第25回釜山国際映画祭(オープンシネマ部門)にも出品。ワルシャワ国際映画祭国際コンペティション部門で最優秀アジア映画賞を受賞した。

2024年には連続テレビ小説「虎に翼」(NHK)に最高裁判所長官・星朋彦役で出演。かつて出版した著書の改訂版の完成した序文を読み上げるシーンが話題に。次回は、映画「アンダーニンジャ」(福田雄一監督)、映画「ショウタイムセブン」(渡辺一貴監督)などの撮影エピソードや2026年1月23日(金)に公開される映画「安楽死特区」も紹介。(津島令子)

ヘアメイク:板谷博美

スタイリスト:カワサキ タカフミ

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