「じゃない方芸人」の代表とも言えるお笑いコンビ「マテンロウ」の大トニー(35)。売れっ子の相方・アントニーに借金しつつ週5バイトで生活をつなぐ大トニーの“もがき”に密着した。
マテンロウは、大トニーが学生時代の友人だったアントニーを誘い2007年に結成した。大トニーが作るコンビのネタのウリはアントニーの強烈なキャラクターだ。
そんなアントニーの人気は急上昇。ドラマ『地面師たち』への出演など、ピンで仕事をするとコンビでの営業がなくなり、大トニーの収入は激減。
大トニー「俺、今年の3月か4月の芸人の給料が初めて0円でした。7、8年くらい前は営業とか『水曜日のダウンタウン』とかも呼んでもらって、劇場もあったので平均で月に30〜40万円くらい、多い時は70〜80万円とかもらっていましたが今は見る影もないですね」
当時は稼いだ収入も趣味のギャンブルに使い込み、挙句の果てには…
大トニー「めっちゃ金借りてます。アントニーから30〜40万円くらい借りて、鬼越トマホークの金ちゃんにも30万円くらい借りて。ニューヨークの嶋佐からは合計で150万円くらい。ほんと嶋佐にはもう何も言えないですね」
「本当はダメなんですけど1人の日に絶対テキーラ1杯飲むんです」

そんな大トニーのバイト先は趣味を活かしたダーツバー。時給は1300円だ。
大トニー「本当はダメなんですけど1人の日に絶対テキーラ1杯飲むんですよ。テンション上がんないんで。今日も1日頑張ります」
業務内容はドリンクやフードの提供や、ダーツの指導だ。そして、大トニーはお客さんに対して特別対応も…
「乾杯」
飲みっぷりのいい芸人ということでお客さんが次々と大トニーにお酒を頼む。だが、いわゆるドリンクバックはなく、いくら飲んでも、大トニーにお金は入らない。それでも、サワー3杯とテキーラ13杯を飲んだ。
客「もっとデブだと思ってた」
雑ないじりにも笑顔で応じる。
大トニー「自分がつまんない人間だと思ってないんで僕は。『つまんねぇな』って言われた時だけ歯向かう。それを受け入れたら終わっちゃうだろうなって。僕は自分が優秀だと思っていた。売れるためにコロチキの西野みたいな動きをしたかった。西野は優秀だけど僕は優秀じゃないから西野みたいな動きをしようとしていたのが間違っていた。アントニーは優秀なのでマジで悔しいです。もっと売れたいですよね。『金稼ぎたいんだったらうち来いよ』って言ってくれる店長とかがいるから僕は頑張れる。調子が悪い時に『大丈夫か?』って言ってくれる人たちを大切にしたい。本当にうれしいですよ。『大トニー、大トニー』ってずっと言ってくれるので」
「『今と変わんねぇんだからもっと働けよ』って言ってくれて」

2020年に一般女性と結婚した大トニー。今の働き方について妻と1度だけ話したことがあるという。
大トニー「1回だけ『(芸人)やめよっか』って聞いたことがあるんですが『それは違うじゃん』って言ってくれた。『芸人しているあなたが好き』じゃなくて『今と変わんねぇんだからもっと働けよ』って言ってくれて…ありがたいですよね。それがすごく良かった。子どもは(金銭的に)つくれなかったです。嫁のためにも金稼いで仕事辞めさせてあげたいです。(嫁は)朝から働いているので情けないですよね。俺は離れたくない。大好きだし、甘えて泣いている俺を見たらむかつくと思う。『じゃあもっと頑張れよ』だと思う。ありがたいですよね。すごいだめだ泣いちゃう」
「怖いっす自分の人生が。生きていてマジですみません」

この日、働いている2つの店で飲んだテキーラは26杯。これにはお酒が強い大トニーも…店の床に突っ伏すほど泥酔した。
大トニー「超売れたいよ。超売れたくて。マジでバイトする芸人は売れたくてやってるんだよ」
店を出ると…今度は道路で眠っていた。このままにはできないと番組スタッフが家までタクシーで送ることに。その車中で大トニーから思いもよらない言葉が飛び出した。
大トニー「使えないこと言っていいですか?死んだほうが楽ですよ本当に。申し訳ないし。本当は…こんな人生。人に迷惑かけているだけの人生。怖いっす自分の人生が。生きていてマジですみません」
「こういうピーターパン症候群の男がなにか奇跡を起こすかもしれない」

大トニーが抱える思いを知ってほしくてアントニーにタクシーでの映像を見てもらった。
アントニー「酒飲んで死にたいっていうやつ一番ダサいじゃないですか。俺は甘やかさないですよ。こんなこと言うやつを。難しいですけど、この現状を乗り越えなきゃ男じゃない。あいつも含めて、僕ももっと頑張るしかないですね。売れている人はみんな頑張っているんで全芸人が『この先売れるかな』とか不安を抱えている。大トニーは『自分だけこんな人生』みたいな悲劇のヒロインモードに入っている。みんな辛いんで、それをまだ分かってない。でもこういうピーターパン症候群の男がなにか奇跡を起こすかもしれないと僕は思っています」
そして、相方であり友でもある大トニーのもとに…
アントニー「簡単に死にたいとか言うなよ。お前本当に」
大トニー「すみませんでした」
M-1の出場権がなくなった芸歴16年目のコンビ。これから先は…
アントニー「いま一度頑張らなきゃいけない気になりました。あの映像を見て」
大トニー「じゃあ『THE SECOND』出る?」
アントニー「『じゃあ』とかじゃなくてどうせ出るだろ。やることないんだから」
大トニー「へへへ」
(『ABEMA NEWS』より)
