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2026年1月27日 13:56

名取裕子 松本清張原作ドラマで清純派のイメージから脱却!「清張先生はチャーミングで可愛いおじいちゃまという感じでした(笑)」

名取裕子 松本清張原作ドラマで清純派のイメージから脱却!「清張先生はチャーミングで可愛いおじいちゃまという感じでした(笑)」
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青山学院大学1年生の時に「カネボウ・サラダガールコンテスト」で約1万人の応募者の中から2位の準ミスに入賞して芸能界デビューした名取裕子さん。翌年には、オーディションでポーラテレビ小説「おゆき」(TBS系)のヒロインに抜擢され、清純派俳優として人気を集めるが、1982年、「けものみち」(NHK)で清純派のイメージを一新。映画「序の舞」(中島貞夫監督)、映画「吉原炎上」(五社英雄監督)、「法医学教室の事件ファイル」シリーズ(テレビ朝日系)、「クイズプレゼンバラエティー Qさま!!」(テレビ朝日系)などに出演。“2時間ドラマの女王”とも称され、“2時間サスペンスドラマ”の新たな可能性を映画館で届ける企画として制作された主演映画「テレビショッピングの女王 青池春香の事件チャンネル」(白川士監督)が2月6日(金)に公開される名取裕子さんにインタビュー。

■人数合わせのために参加したコンテストで準ミスに入賞

神奈川県横須賀市で生まれ育った名取さんは、2歳上の兄や友だちと一緒に虫や魚を捕って泥んこになって遊んでいるような子どもだったという。

1975年、青山学院大学国文科に進学。客室乗務員志望だったが、コピーライター志望に変更し広告研究会に入ることに。同年、カネボウ化粧品「サラダガール」コンテストに何人か集めて欲しいと言われ奔走するも人数が足りず、数合わせで自分も応募することになったという。

「私は全然その気がなかったんです。友だちに頼んで出てもらっていたんですよね。だけど人数が足りないから1年生なら出ようみたいな感じで出たら、たまたまそれが残っちゃって。

周りの人もびっくりしていた。やる気がなくて、一応数合わせで出たら残っちゃって。『予選受かっちゃったんですけど…』みたいな感じで(笑)。その時に、ちょうど千葉県の富浦海岸で海の家を運営していたんですよ。

それで、その何週目かにコンテストに行かなきゃいけなかったんだけど、最後まで残っちゃったものだから、みんなが寝ている夜11時に出てコンテストに出て、その次の日に海の家に行ってみんなで一緒に合宿して働いて…みたいなことをやっていましたね」

名取さんは、応募者1万人の中から2位の準ミスに入賞。入賞者は自動的に東宝と契約することになっていたため、1976年、コンテストの副賞として映画「星と嵐」(出目昌伸監督)で俳優デビューすることに。

同年、ポーラテレビ小説「おゆき」(TBS系)のオーディションに応募し、ヒロインに決定。このドラマは、四国から血の繋(つな)がらない兄と一緒に上京してきた娘が、親子ほど年の離れた紺屋の職人(田村高廣)と結婚するが、その後夫が死に、厳しいお姑さんにしごかれながら寄席の女将として成長していく様を描いたもの。

――当時は、NHKの連続テレビ小説とポーラテレビ小説は、新人を起用して育ててスターに…ということになっていて話題になりましたね

「あの当時はそうでしたね。あの頃は素人がそこからデビューする登竜門みたいなところでした」

――オーディションでヒロインに決まって

「あれは、のちに『金八先生』をお書きになる小山内美江子先生と『金八先生』を作っていくTBSの柳井満プロデューサーという、とても素晴らしい方たちが『おゆき』に出してくださって。それで本格デビューだったんです。小山内先生と柳井さんの作品にその後も出て、大学も卒業して…そんな感じでやっていましたね」

――「おゆき」は週5日放送で全130回でしたから、大学と両立するのは大変だったのでは?

「私と同じ厚木高校のクラスからだけでも8人青学に進学したので、いろいろ協力してくれました。ノートをとってくれたし、試験に出そうなところを教えてくれたりね。心強かったです。その時のみんながいなかったら、4年で卒業することはできなかったと思います。

TBSのスタジオが赤坂にあったから良かったんです。青山キャンパスから近かったから。横須賀の自宅から毎日通うのは大変だからということで、週に5日、TBSのほうで赤坂にホテルを取ってくれていたんですよね。試験の時は、その時間だけ撮影を空けてもらって試験を受けて、終わったらまたスタジオに戻って撮影ということもありました。でも、みんな応援してくれていました。友人には本当に恵まれましたね。単位の取得には苦労しましたけど」

――教職課程を取られていて、母校の厚木高校で教育実習もされたと聞きました

「教育実習もやりました。デビューした後でしたけど、特に騒がれることもなく、生徒のみんなも行儀がよく、楽しく過ごせました。いい経験でしたね」

1979年、大学を卒業。1981年には「CUTTY SARK(カティサーク)」のCMに出演。ポスターが次々とはぎとられたことも話題になった。

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■清純派から好きな男のためには何でもやる激しい女を演じることに

1982年、松本清張シリーズ「けものみち」(NHK)に出演。名取さんが演じたヒロイン・成沢民子は、半身不随の夫(石橋蓮司)を抱えた33歳の美貌の人妻。ホテルの支配人・小滝(山崎努※崎=タツサキ)といい仲になり夫を焼殺するが、野心家の小滝は民子を政界のドン・鬼頭(西村晃)の愛人にして情報を得ようとする。小滝のことを待ちきれなくなった民子はドンの殺害を企てるが…という展開。

名取さんの代表作の一つとして知られるこの作品は、和田勉さんが名取さんの自宅に直接電話をかけて出演を依頼したという。

「その時は事務所を辞めた後で、まだ次の事務所が決まってなかったのでフリーだったんですよね。マネジャーもいなかったので、直々にお電話をいただいて『やります。やらせてください』って自分で言いました。

和田さんは、夏目雅子さんの『ザ・商社』(NHK)の後で、いろんな番組に出てらしたから、こういう人か…と思って。23,4歳ぐらいの時だったので、右も左もわからないような状態でやっていました。和田さんは、ヒロインに愛情を注ぎ込んで情熱を持ってドラマ作りをされていましたね。今ではああいう情熱を持ったドラマ作りの現場はなくなってしまった気がします。

ホテルの支配人で後に美術商になる小滝役が山崎努さん、政界のドン・鬼頭役が西村晃さん、民子が夫を殺したことに気づいて執拗(しつよう)に付け回す刑事役に伊東四朗さんですからね。魅力的な素晴らしい方たちとご一緒させていただけるなんて幸せだなあって思いました。

伊東四朗さんはあの時初めてドラマに出られたんです。『てんぷくトリオ』のメンバーでお笑いだったんだけど、あの刑事役は生活と野心とが絡まって執念の人ですごかったですよね。でも、結局政界のドンの権力には叶わなくて殺されてしまう」

――劇中の鬼頭の豪邸は松本清張さんのご自宅だったそうですね

「そうです。家の中のシーンはセットですけど、お庭とか外回りはそうです。清張先生のご自宅でした。撮影で伺わせていただくと、清張先生が2階から『来た!来たー』って大声でおっしゃって。髪の毛は寝癖をつけたままのボサボサで着物の前をはだけた状態でドタドタ下りてらっしゃるんですよ。チャーミングで可愛いおじいちゃまという感じでした(笑)。

よくお食事にも連れて行っていただきましたね。『まだまだ書きたいものがいっぱいあるんだ』っておっしゃっていました。ご飯を食べに行くと、『〇〇さんはどんな人?どんな感じ?』とか、結構女優さんや芸能界の話を聞くのが好きだったみたいで。『ミーハーじゃん』って(笑)。

とてもお美しい奥さまがいらして、いつも清張先生に寄り添ってらして。先生はご家族をとても大事にしてらっしゃいましたね。

あの頃の先生はバイタリティーがすごかった。先生は苦労して40代から小説を書き始めてらっしゃる方で、取材力もすごくあっていろんな謎に迫るような作品を書かれていていましたね。

もちろん幅広く調べるスタッフの方もいたみたいですけど、ヘアメイクさんのことから日本の歴史の犯罪まで幅広いジャンルの作品がありますよね。「けものみち」でも政界のフィクサーのいろんな裏の動きとか、GHQまで全部出てくるような社会派のものを突き詰めて書くという本当に素晴らしい方です」

――「けものみち」で名取さんのイメージも大きく変わりましたね

「そうですね。それまでは、いわゆる清純派でお嬢さまみたいな役がほとんどでしたけど、『けものみち』に出演して、初めて“女”の役を演じさせてもらって。『好きな人のために何でもしてしまう』なんで、自分の中にまったくない要素がある役だったので、『役を演じるということが演技なんだ』と気づくことができました。

“女優のスイッチ”が入るきっかけになった作品です。それから悪女の役もオファーが来るようになったので、年代の変わり目としてはありがたかったですね」

「けものみち」は高評価を得て、テレビドラマの松本清張ブームを巻き起こす火付け役となり、名取さんは数多くの清張作品に主演。“清張女優”と称された。1984年には、映画「序の舞」(中島貞夫監督)に主演。映画「夢千代日記」(浦山桐郎監督)、映画「吉原炎上」(五社英雄監督)など大作出演が続く。次回は撮影エピソードなども紹介。(津島令子)

※名取裕子プロフィル

1957年8月18日生まれ。神奈川県出身。1977年、「おゆき」のヒロイン役で本格デビュー。以降、ドラマ「3年B組金八先生」シリーズ(TBS系)、ドラマ「チーム・バチスタ」シリーズ(フジテレビ系)、映画「吉原炎上」、連続テレビ小説「あぐり」(NHK)、大河ドラマ「利家とまつ」(NHK)、「最強のふたり〜京都府警特別捜査班〜」(テレビ朝日系)など多数出演。「第12回日本アカデミー賞」で優秀助演女優賞受賞。「第19回日本アカデミー賞」で優秀助演女優賞受賞。近年は「クイズプレゼンバラエティー Qさま!!」、「くりぃむクイズ ミラクル9」(テレビ朝日系)などで“インテリ俳優”と話題に。2月6日(金)に主演映画「テレビショッピングの女王 青池春香の事件チャンネル」の公開が控えている。

ヘアメイク:鈴木將夫(MARVEE)

スタイリスト:深尾きよ美

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