2015年、映画「ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判」(成島出監督)の柏木卓也役に抜擢され、心に問題を抱えた少年の複雑に揺れる心情を繊細かつ大胆に体現し、注目された望月歩さん。2016年には映画と舞台を同時期に公開&上演した「真田十勇士」(堤幸彦監督)で真田幸村の息子・大助役。2019年には「五億円のじんせい」(文晟豪監督)で映画初主演を果たした。5月15日(金)に主演映画「Erica-エリカ-」(宮岡太郎監督)の公開が控えている。(この記事は全3回の中編。前編記事は記事下のリンクからご覧になれます)
■初舞台で真田幸村の息子役に
2016年、映画「真田十勇士」(堤幸彦監督)が公開。この作品は、真田幸村は希代の名将ではなかったという設定で、その幸村を天下一の武将に仕立て上げることを決意した、真田十勇士の中心的存在である佐助の人生を描いたもの。
真田幸村(加藤雅也)を本物の天下一の武将に仕立て上げることを決意した佐助(中村勘九郎)は、霧隠才蔵(松坂桃李)ら9人の仲間を集めて「真田十勇士」を結成。豊臣家復権を狙う淀君(大竹しのぶ)に呼び寄せられ、徳川との戦いの最前線に立つことに…というストーリー展開。望月さんは、幸村の息子・大助役。父親とともに壮絶な最期を遂げることに。
2014年に堤幸彦監督と中村勘九郎さんがタッグを組んで大ヒットを記録した舞台を映画化したもの。映画公開と同時期に舞台も上演され、望月さんにとって初舞台となった。
「当時は、今ほど映画とかも知らなかったので、凄(すご)さを知らなくて。すごい先輩たちと一緒だったんですけど、仲良くしてくれるお兄ちゃんたちみたいな感覚しかなかったんです。だから、ある意味真田大助に近かったのかなって思います」
――映画撮影のあと、同じ役で初舞台でしたね
「はい。本当にわからないことしかなかったですね。映像だと、カメラがあるので、気持ちが動いていれば(映像的に)成立するという部分も多少はあると思うんですけど、舞台ではそれが(客席に)伝わらないといけなくて。
からだを動かすことは好きなんですけど、舞台で自分がアクションをするというのが、最初はあまりイメージできなくて、どうしたらいいんだろうと思いながらやっていました。
先輩方はものすごくうまいので、『すごいなあ。カッコいい』って思っていました。心が折れるわけじゃないけど、すごすぎて。でも、こうしたらこう見えるんだとか、いろいろ学ばせてもらって。どこでも学ぶことができるんだということを再認識した現場だった気がします」
――鎧(よろい)と兜(かぶと)を付けて戦うのは大変だったのでは?
「映画の時の鎧と兜は重かったんですけど、舞台の時は軽いものでした。あれも何か変な感じというか。軽いものを身につけているけど重さの感覚は持っていなきゃいけない。見ている人に重さを感じさせなきゃいけないので。
剣も舞台では竹光の軽いやつなので、普通に振るんじゃなくて、重さを感じさせるように振るとか…そういうことをずっと教えてもらっていました。本当に毎日何かを覚えて、こうしたらこうなるんだ、みたいな感じでした」
――終わった時の達成感は大きかったでしょうね
「はい。それはもう毎日感じていましたし、それこそ人前でお芝居をするという感覚が初めてだったから、その高揚感ももちろんあったし、『舞台って楽しい』って思う最初のきっかけでしたね」
――とてもいい舞台スタートでしたね。
「そうですね。『舞台は怖い』ってよく聞くじゃないですか。でも、堤さん(監督)の現場はそんなことはなかったので、楽しみながらやらせてもらっていたという感じでした。
『舞台でセリフが飛んじゃった』って聞いたことがあったので不安だったんですけど、周りがすごく気遣ってくれていたので、完全にセリフが飛んだことはなかったと思います」
――映画「真田十勇士」をご覧になった時はどう思いました?
「みんなカッコいいなって思いました。自分が出ていないシーン、知らないシーンもたくさんあったので、こういう風になっていたんだって思うところはたくさんあったし、こんなに大きい作品に携わっているんだって改めて思いました。
舞台も頑張らなきゃいけないなって思いながら、プレッシャーと自信と…いろんな思いでぐちゃぐちゃになっていた記憶があります」
■新幹線でオーディションへ
2019年、「五億円のじんせい」(文晟豪監督)で映画初主演を果たす。善意の募金によって命を救われた17歳の少年が、SNSで差出人不明のメッセージを受け取ったことを機に、五億円を稼いでから死のうと奔走する姿を描いたもの。
高月望来(みらい=望月歩)は幼少期に難病を患っていたが、5億円もの善意の募金により手術は成功。17歳の高校生になった望来を待っていたのは、「5億円にふさわしい人間」という周囲からの期待や、マスコミの好奇の目。自分に5億円の価値があるとは思えずにいる望来は、SNSで自死をほのめかすも「死ぬなら5億円返してから死ね」というメッセージが。望来は一人で旅に出て、アルバイトで日当を稼ぎ始めるが…。
「主役をやってみたいと思って頑張っていたので本当に嬉(うれ)しかったです。この映画もオーディションで、地方で撮影している時に新幹線でオーディションに行ったんです。
それで、終わってホテルに着いたぐらいで、マネジャーさんから決まったという電話がかかってきて。オーディションを受けてからほんの数時間後だったので、すぐには実感できなかったですね。
『ソロモン(の偽証)は、1年近くかけてオーディションをやってようやく決まったのに、さっき芝居したやつがもう主演に決まったの?』みたいな感じで」
――小さい頃から注目されて周囲からの期待や好奇の目に耐えかねてSNSで自死をほのめかしたところバッシングされて
「(望来は)5億円稼いでから死ぬことにするんですけど、それが闇バイトとか、添い寝カフェとかさまざまで。いろいろ経験することになって」
――工事現場でのセメント運びは本当に大変そうでしたね
「あれは本当に大変でした(笑)。三輪にセメント袋ひとつだけでも重たいのに三つなんて全然動かないんですよ。ただでさえバランスが取りにくいのに、マジで横倒しになっちゃって(笑)。筋肉がないので、本当にフラフラになりながらやっていた記憶があります」
――善意で命を救われた望来くんが、今度は悪意にさらされることに。親切にしてくれたホームレスのおじさん(平田満)をホームレス仲間の悪意によって(自分の)貯金を盗んだ犯人だと思わされ距離を置いているうちに、おじさんが殺されてしまう。
「ホームレス仲間がついた嘘を信じてしまって誤解が解けた時にはおじさんは亡くなっていて…。結構、善意仕立てで描かれている作品だからこそ、そういうちょっとピリっとするスパイスみたいな要素も書かれているのはすごいなって思いました。
それと、やっぱり平田満さんはすごいなあって。セットの中で平田さんと一緒に話をしていた時に、平田さんの人柄の温かさを感じました。平田さんと一緒のシーンは大好きなシーンのひとつです」
――役名の望来は、望月さんの名前から作られたそうですね
「はい。僕が少しでも気持ちが入りやすいようにと、監督と脚本の蛭田さんが僕の名前から一字入れてくれました」
――愛がある現場で良かったですね
「本当にありがたかったです。初めての主役だったし、(僕が)入りやすいようにものすごく考えてくださって。大事にしていただいたなって思います。今でも文さん(監督)と会って、たまにご飯に行ったり、飲みに行ったりしています」
――主演ということのプレッシャーはありましたか?
「撮影に入る前はプレッシャーもありましたけど、すごく準備もしましたし、撮影に入ったらそういう気持ちもとれて楽しくなりました。僕次第でどうにでもなると言われたので、だからこそ頑張ろうと思って一生懸命やっていました」
■同世代の俳優たちが揃っていたが…
2019年、「3年A組−今から皆さんは、人質ですー」(日本テレビ系)に出演。このドラマは、卒業10日前に生徒たちを監禁した高校教師の謎の行動を描いたもの。
卒業10日前、教師・柊(菅田将暉)が29人の生徒たちに「今から皆さんは、人質です」と告げ、「教師と生徒」の関係は「犯人と人質」に。柊の最後の授業は、数カ月前に自ら命を落としたひとりの生徒の死の真相についてだった…。
望月さんは、陸上部のスプリンターで、スポーツ推薦で大学に進学が決まっている瀬尾雄大役。スポーツ推薦を取り消されたくないがために教室を脱出しようとするが、柊が一人で罪をかぶろうとしている姿やクラスメートたちの説得により残ることを決める。
――生徒たちそれぞれの事情も明らかになっていきますが、命をかけて先生が教えようとした意義は大きいですよね
「はい。生徒たちの心に刺さったと思います。毎日毎日同じ場所で同じようなシーンをずっと撮っていたので、ずっとこもっていたような記憶があります。本当に閉じ込められているわけじゃないんですけど、ある意味、追体験しているみたいな感じでした。
でも、その頃の僕はオープンな人間じゃなかったので、仲がいい友だちが新しくできたというようなことは特になくて、もともと『ソロモン(の偽証)』で共演していた人たちとしゃべるぐらいだったんです。だからもったいない現場だったなって思います。
心を開いて打ち解けようと思えば同世代の子もいっぱいいたのに、僕は隅っこでずっと本を読んでいるという感じだったので。同世代同士ってどっちも遠慮している部分もあって。声をかけていいのか、声をかけられるのが嫌なのかな…っていう、探り合いみたいなところもありましたね。
でも、このドラマで声をかけていただくことが、ものすごく増えました。菅田将暉さんの現場での姿を見て、いつか先生役をやってみたいと思うようになりました」
2020年、連続テレビ小説「エール」(NHK)に出演。このドラマは、作曲家・古関裕而氏をモデルに、音楽で人々を励まし、心を照らした夫婦の波乱万丈の人生を描いたもの。
明治末期、福島に生まれた古山裕一(窪田正孝)は、独学で作曲の才能を開花させる。青年になり、音楽に導かれるように関内音(二階堂ふみ)と結婚。不遇の時代を乗り越えヒット曲を生み出していく…。
望月さんは、主人公・裕一が働く「川俣銀行」の若手行員・松坂寛太役。銀行メンバーの中では最年少。
「連続テレビ小説に出演することは夢だったので、本当に幸せでした。僕が出演していた川俣銀行篇は『コメディパート』とも呼ばれていて、本当に楽しい現場でした」
――「3年A組〜」で共演されていた堀田真由さん、堀内敬子さん、相島一之さん、松尾諭さんも出演されていましたね
「はい。心強かったです。大きな作品ですし、人生が変わるとか言われるじゃないですか。緊張感がすごく強かったんですけど、それぞれの部署、演出部、カメラ、照明部、全員がいいものを作っているという、矜持(きょうじ)を持っている感じがすごくしていて。
皆さん本当にプロの集団という感じだったので、僕も役者として、プロとしてやらなきゃって身が引き締まる思いでした。みんな仲がいいんだけど、身内ノリとかじゃなくて、プロとして真摯に和気あいあいと撮っているという感じだったから、すごく楽しい現場でした。
窪田さんも二階堂さんもそこにいるだけでキャスト、スタッフみんなが付いていきたくなるという感じで。『主役を務める役者というのはこういう方たちなんだ』って改めて思いました」
2024年には連続テレビ小説「虎に翼」にも出演。「量産型リコ−プラモ女子の人生組み立て記−」(テレビ東京系)、「マイダイアリー」(テレビ朝日系)、「恋は闇」(日本テレビ系)など多くの作品で幅広い役柄にチャレンジ。次回は撮影エピソード、5月15日(金)に公開される主演映画「Erica-エリカ-」も紹介。(津島令子)
ヘアメイク:光岡真理奈
スタイリスト:日夏(YKP)
衣装協力:MACKINTOSH/Traditional Weatherwear
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