2015年、映画「ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判」(成島出監督)で注目され、
2019年には「五億円のじんせい」(文晟豪監督)で映画初主演を果たした望月歩さん。
連続テレビ小説「虎に翼」(NHK)、「量産型リコ−プラモ女子の人生組み立て記−」(テレビ東京系)、「マイダイアリー」(テレビ朝日系)、「恋は闇」(日本テレビ系)など多くの作品で幅広い役柄にチャレンジ。5月15日(金)に主演映画「Erica-エリカ-」(宮岡太郎監督)の公開が控えている。(この記事は全3回の後編。前編と中編記事は記事下のリンクからご覧になれます)
■本物のアイドルの前で歌って踊るのは…
映画「ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判」の柏木卓也役で心に問題を抱えた少年の複雑に揺れる心情を繊細かつ大胆に体現し、難役が続いたが、コメディセンスを発揮する役柄も増え、2022年、「量産型リコ−プラモ女子の人生組み立て記−」(テレビ東京系)に出演。
このドラマは、量産型と揶揄(やゆ)されるイベント会社で働くOLが、たまたま町の模型店で量産型ザク(「ガンダムシリーズ」に登場する兵器)と出会ってプラモデルに魅了されたことをきっかけに成長していく姿を描いたもの。
望月さんは、イベント1部から主人公・小向璃子(リコ=与田祐希)がいるイベント3部に異動してきた後輩・高木真司役。マーケティング用語を多用し、一見スマートそうに見えるが、仕事ぶりには難ありの問題社員を演じた。
「やばい人でしたよね(笑)。今どきの若い子と言えばそうかもしれないですけど。どの登場人物にも嫌いになれない魅力があって、プラモデル作りを通していろいろなことを感じて、それぞれがちょっとずつ成長していく様が面白かったです」
2023年には続編となる「量産型リコ−もう1人のプラモ女子の人生組み立て記−」に出演。これは、もうひとつの小向璃子の成長する姿を描いたもの。望月さんは、リコの大学の同級生で、スタートアップ企業「ドリームクレイジー」共同創業者の高木真司役。
――前作ではちょっと問題ありの社員でしたが、この作品では、スタートアップ企業の共同創業者でエンジニアの高木真司役でしたね
「前作の時に『みんなでまた集まれたらいいね』って話していたので、嬉(うれ)しかった
ですね。与田(祐希)さんと(前田)旺志郎と3人ならではのアドリブの掛け合いも楽しかったです」
2024年には、第3弾「量産型リコ -最後のプラモ女子の人生組み立て記-」の第3話に出演。スーパーナカムラで実演販売をする地元スーパー密着型アイドルでリコのお母さんが押している高木真司役を演じた。
――歌って踊るアイドル役でしたね
「超恥ずかしかったです。あの当時、『乃木坂46』の本物のアイドルだった与田さんの前で歌も歌わなきゃいけなかったので、本当に恥ずかしくて。スターアイドルの前でご当地アイドルをやるっていうのはね(笑)。僕が歌っているところを与田さんがスマホで撮ったりしていたので、本当にやめて欲しかったです(笑)」
――アイドルを演じている姿をご覧になっていかがでした?
「恥ずかしかったですけど、僕はこれに憧れていたんだって。アイドルになりたかったわけじゃないけど、小学生の時は『嵐』になりたいと思っていたので。でも、僕にはできないなって思いましたね(笑)。
レコーディングみたいのもあったんですよ。別の日にスタジオへ行ってマイクの前で歌うみたいな。撮影でも実際に歌っているんですけど、音源としても録りました。あのシーンを撮りながら、そもそもは『嵐』になりたかったんだよなって、ちょっとだけ考えました」
■理想的な男友だちから猟奇殺人犯へ
2024年、「マイダイアリー」(テレビ朝日系)に出演。このドラマは、社会人1年目の主人公・恩村優希(清原果耶)が、日々のささいな出来事をきっかけに大切な思い出を振り返る様を描いたもの。
望月さんは、優希の大学時代の仲間5人グループ(清原果耶・佐野勇斗・吉川愛・見上愛・望月歩)のひとりで生命保険会社の営業マン・和田虎之助役を演じた。卒業後も優希とつながりがある心優しい青年で「理想的な男友だち」と話題に。
――虎之助くんは本当にいい人でしたね。こういう男友だちがいたらと話題に
「そうですよね。僕も含めると5人の仲良しグループで、4人を繋げる役にならなきゃいけないなと思っていたんですけど、みんなが全然違うキャラクターだし、僕が想像していた役柄と違ったんですよね。
明るさというか、ハッピーな感じで準備していたんですけど、それだとダメだ、これだとみんなが繋(つな)がらない…って思って。すごく抑えて虎之助のキャラを作ったので、放送を見るまでどうなっているのか、怖いなって思っていました」
――みんなの潤滑油みたいなホッとする存在でした。でも、いい人すぎて就職の面接をすっぽかしてまで、知らない人の面倒を見てしまう
「仲間じゃなくて(バイト先の)店に来たことがあるお客さんですからね。『俺みたいな平凡な人間には、ケガしている人に絆創膏を貼ってあげるくらいのことしかできないんだよ』
って。
あのドラマの撮影の時は、すごくのんびりした雰囲気の現場で。僕は大学生活を送ったことはないんですけど、大学生活を送っているみたいな時間を過ごしていた気がします」
――すごくバランスのいいメンバーでしたね
「そうですね。近くにはいるけど、そんなにしゃべらなくても全然違和感がなかったです。多分みんな普段のキャラクターとは違うんですよ。そのギャップがすごく楽しくて(笑)。
でも、シーンによっては意外と本人に近い部分があったりもして…みたいな。本当に楽しかったです」
2025年、「恋は闇」(日本テレビ系)に出演。このドラマは、都内で発生した凄惨な連続殺人事件で出会い、惹(ひ)かれ合っていく2人のジャーナリスト(岸井ゆきの&志尊淳)が事件の真相に迫っていく様を描いたもの。
望月さんは、明るくて人なつっこく誰とでも仲良くなれるフードデリバリーの配達員だが、実は連続殺人犯だったという夏八木唯月(なつやぎ・いつき)役。誰が犯人なのか、いろいろな考察も話題になった。
「ああいう犯人はやってみたい役ではあったので、やらせてもらえてすごく楽しかったです。僕は、わりと早くから犯人だと知らされていたのですが、『周りには言わないで』って言われていたんです。
でも、みんなは知らないので、そういう話になるじゃないですか。白洲迅さんとトイレで一緒になった時に『犯人誰だと思う?』って聞かれたので、『誰ですかね?』みたいなことを言ってごまかしていたわけですよ。なので、僕が犯人だとわかった時に、『もうお前のことは信用しない』って言われちゃいました(笑)」
――犯人を演じるにあたってはどのように?
「監督にどれぐらい犯人という意識を持っていたり感じていればいいのかを聞いた時に、『人を殺したりする時も同じテンションのまま殺す方が怖いんじゃないか』という話になって。『明るくて可愛い子をそのままずっとやってほしい。何ならそのまま殺してほしい』って言われたので、そのままやって楽しいまま撮影が終わった感じでした。
でも、1個だけ難しかったのは、『血を見て喜ぶ』ということ。自分の中でいちばん実感がなくて、すごく難しかったです。僕は血が苦手なので、刺した時に顔に血が飛んで、それで興奮して…という感覚がわからないし、『気持ち悪い』って思いながらやっていました」
――最終回放送後、何か言われました?
「友だちには『やっぱりお前か。そうだろうと思ったよ』みたいなことを言われることが多かったです。エゴサした時、『犯人役をやってくれて良かった』と言ってくださる方がいて嬉しいなって思いました。こういう役をやってほしいと言われることが結構あったので、やれて嬉しかったです」
■もともと怖いのは苦手だった
5月15日(金)に公開される映画「Erica-エリカ-」に主演。全国最大の学生映画の祭典となる東京学生映画祭で審査員特別賞を受賞した自主映画「連鎖」を原案に宮岡太郎監督が劇場公開長編映画としてセルフリメイクした戦慄のサイコホラー。
全てを捧げようと誓った最愛の人が、想像を絶する困難に直面していたとしても、果たしてその人を愛し続け、護り抜くことができるのか…。
彼女いない歴23年。スーパーでアルバイトをしながら、どこか満たされない日々を送る飯笹辰樹(望月歩)は、カフェで働く美しい女性・溝川エリカ(林芽亜里)と出会い、足しげく通ううちに「自分が彼女を守りたい」と強く願うようになる。やがて恋人となり、同棲(どうせい)生活を始めるが、不可解な出来事が次々に…という展開。
「主役をやらせてもらえるということはすごく嬉しかったんですけど、宮岡さんがすごい昔に撮ったものをセルフリメイク…ということで思い入れが強いはずじゃないですか。だから、その作品の真ん中に立てることの幸せとプレッシャーをすごく感じながらやっていました」
――主人公・辰樹くんについてどのように思いました?
「アホアホだけど、可愛い子なんだなって(笑)。それこそエリカに対しても絶対に違和感があるわけだけど、それでも彼女のことを信じる。最初に人を好きになった時って、周りが見えなくなるという感覚はすごくわかる気がします。僕もそうだったと思うし、周りの友だちもみんなそうだったような記憶があるので」
――カフェに入ってエリカを見た瞬間恋をしてしまいます
「一目惚(ぼ)れですよね。彼女ができたこともなくて、あまりパッとせず、就職試験にも落ちて…という感じで、言い方が悪いですけど、“若者らしいいいこと”をひとつも経験してこなかった人が、ああいう風なシチュエーションでステキな女性と出くわしたらこうなるんだろうなって。
あそこだけで6カットぐらい撮っているんですよ。宮岡さんのこだわりが詰まっていたんだと思います。彼女のことが気になって家の外に車を停めて…なんて、一歩間違えたらストーカーですけどね。最初は『きもいな』って思いながら台本を読んでいましたけど、猛進しちゃう気持ちはわかる気がしました」
――エキセントリックで激しくブチギレる姿を見ても受け入れるというのはすごいですね
「そうですよね。可愛いから許せるとかなのかなって思っていましたけど、僕は多分無理ですね(笑)」
――撮影はいかがでした?
「エリカ役の林(芽亜里)さんも妹役の葉月(くれあ)さんも役として接してくれていて、葉月さんは本当に妹みたいな感じでした。林さんは、出会う前のシーンは距離を感じていたけど、付き合うシーンになってからは、すごい喋りかけてくれて、いい距離感で撮影ができました。緊張している感じは全くなく、みんな楽しんで撮影していました」
――苦労したシーンは?
「僕はもともと怖いのが苦手なんですよ。だから2階のシーンの飾りつけも、目に入ってくるものの情報が多すぎて怖かったですね。スタッフさんはいるんですけど、後ろから撮っているから、僕が最初に(部屋に)入っていかなきゃいけなかったので、マジで怖くて大変でした(笑)」
――完成した作品を初めてご覧になった時って、ご自身ではどうでした。
「ホラーなんですけど、変な店長がいたりとか、ところどころにちょっとおもしろいクスクスっていうシーンもあって、その温度感がすごくいいあんばいでジェットコースターに乗っているみたいな感覚だなって思いました」
――今後はどのように?
「今、舞台をやらせてもらっていて、今回で3回目なんですけど、すごく楽しいので、年に1回とか2年に1回とかやれたらいいなと思っています。そして今回、『Erica-エリカ-』の真ん中でやらせてもらえたことがやっぱりすごく楽しかったので、また(主役を)やらせてもらえるのであればやらせていただきたいなと思っています」
中学生の時に俳優として生きていくことを決意して以降、一度も辞めたいと思ったことはないという。チャレンジ精神も旺盛。デビューして12年、演じる役柄の幅も広がり、今後も楽しみだ。(津島令子)
ヘアメイク:光岡真理奈
スタイリスト:日夏(YKP)
衣装協力:MACKINTOSH/Traditional Weatherwear
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