映画「ヒポクラテスたち」(大森一樹監督)で本格的に俳優デビューして46年、主演・助演に関わらず、ドラマに欠かせないベテラン人気俳優として知られ、「連ドラの鉄人」という異名を持つ内藤剛志さん。「科捜研の女」シリーズ(テレビ朝日系)、「警視庁強行犯係・樋口顕」シリーズ(テレビ東京系)、「警視庁・捜査一課長〜ヒラから成り上がった最強の刑事!〜」シリーズ(テレビ朝日系)などに出演。映画「千と千尋の神隠し」(宮崎駿監督)、映画「コクリコ坂から」(宮崎吾朗監督)などの声優としても知られている。朗読劇、ラジオパーソナリティにも挑戦。5月8日(金)に映画「幕末ヒポクラテスたち」(緒方明監督)の公開が控えている。(この記事は、全3回の中編。前編は記事下のリンクからご覧になれます)
■「科捜研の女」シリーズは、毎回科学の進歩がすごくて
沢口靖子さん主演で1999年に放送が始まった「科捜研の女」シリーズにプロファイラー・武藤要役で2シリーズとスペシャルドラマに出演。2004年から「新・科捜研の女」シリーズとなり、捜査一課の土門薫刑事としておなじみの存在に。沢口さん演じる主人公・榊マリコとの息の合ったやり取りも話題に。
――「科捜研の女」シリーズが始まった時は、プロファイラー役で、その後、土門刑事役に
「そうです。20年以上やっていますからね。やっている最中はあまり思ってなかったんです。とにかくあまりにも科学の進歩がすごいので毎回新鮮で。
やっちゃん(沢口靖子さん)とも言うんだけど、何か毎回新しいことになるから、あまりシリーズという感じがしないんですよね。捜査の仕方みたいなものがどんどん新しくなるんですよ。それで、そのことによっていろんなことが変わっていく。
例えば、指紋が重なっていてもわかるようになるとか。初めは指紋があるかないかぐらいしかわからなかったけど、だんだん後になると、触った順番がわかるようになって。そうすると、アリバイの作り方が変わっていく。
DNA鑑定にしても科学が進歩してその人が特定できるというようになっていって。そうなると、頭の中のセッティングが変わるわけですよ。
なので、長くやっているという感じはあまりなかったんです。また今年も新しい捜査方法だなという風に思いながらやっていた記憶があるので、気が付いたら20年以上経っていたという感じでしたね」
――今年1月に放送されたファイナルでマリコさんはアメリカへ、土門さんは警視庁に。もしかしたら二人が一緒になるのではないかと思っていた方も多かったみたいですね
「それは恋愛的なことですよね。それをやっちゃうと本当の最終回になるでしょう?だから、『もしかすると、まだこの先もあるのかな?』って期待はしていますけどね。別にやらない理由もないですしね。
僕が今ちょっと思っていることは、時間が経てば経ったで面白いような気がするんですよ。
同じような、土門とマリコではなくて、例えば何年か経ったら土門は退職しているし、マリコももう全然警察と関係ないアメリカにいるとかね。
そういう人たちがあえて呼ばれてくるようなストーリーがあっても面白いかなって。もう警察を辞めているのに捜査にまた協力するみたいな。そんなようなことになるといいなと思っているんですけど」
■ドキュメンタリー部分はフェイクで?
2006年公開の映画「闇打つ心臓 Heart,beating in the dark」(長崎俊一監督)に主演。この作品は、1982年に発表された8mm映画「闇打つ心臓」を、長崎俊一監督が主演の内藤剛志さんと室井滋さんを再び起用して35mm作品として制作したもの。
かつて自分たちの幼い子どもを殺して逃げた過去を持つリンゴォ(内藤剛志)と伊奈子(室井滋)。それぞれ別の道を歩み、リンゴォは電気店を経営。妻とは別居しているが17才になる娘がいる。そこに、23年ぶりに伊奈子が訪ねてくる。同じ頃、自分の子ども・夏美を殺して逃げている透(本多章一)と有紀(江口のりこ)が…。
「あれは、最初25歳の時にやって、次は50歳の時やったんですけど、あれも話し合いはしたんです。長崎(監督)が『あれをやりたい』ってなって、台本があったんですよ。
それをやればいいという話だったんだけど、室井(滋)とプロデューサーの佐々木(史朗)さんと監督と、どういう風にやるか雑談していたんですよ。
昔の自分たちと今の自分たちというのではなくて、何かもう少し違うことがやりたいという思いがあって。『冗談でも本気でも、何かこれさ、メイキングかどうか、全部フェイクみたいにしたらどうだ?』みたいな話だったので、やっぱり反対が多かったわけですよ。
だけど、帰り道に長崎と室井が話していた時に『何かそういうのも面白いかもね』なんていう風にだんだんなっていったんですって。初めは、2人の25年後だったんです。そういう同じキャラクターが25年後にまた出会うって話。
でも、もう1個フレーム(ストーリー)を作っちゃおうという話になって。フェイクっていう風になって、それが成功したかどうかってことじゃなくて、あれはやっぱりやってみたかった。
長崎にもこれからまたちょっと話そうと思っていることは、あれからまた20何年経って、70代の俺と60代の室井が、今のリンゴォと伊奈子が生きていたとしたらどうだろうっていうストーリーはやってみたいですよね」
――「子どもを殺した」というのが中絶だと思っていたら、生まれて来た子どもを死なせてしまったということのようで驚いたのですが
「あれも本当かどうか、わからないですよね。演劇的なことで言うならば、そこは明らかにならなくてもいいのかなって思うんです。そう思い込んでいる2人なのかもしれないし、本当にそうだったのかもしれないし…。現在起きていることが何かということ。
一晩朝まで一緒に過ごすということが一つなので、その辺は演劇の面白みというか、どっちでもいいなと。そんなことは話さなかったけど、みんな多分共通的にそう思っていたような気がします。
あれはこうこうこうだって、長いセリフで過去を話すんだけど、『でも、本当か?』って思いながらやるのが面白かった。『そこまで?』とか思いながら。それはやっぱり残りましたね。
映画というか、映像の場合は、わりと具体的にリアルにやるけど、演劇だったらそんなの全然許されるじゃないですか。だって演劇『ゴドーを待ちながら』(不条理演劇の代表作。ゴドーという人物をひたすら待ち続ける二人の男の会話劇)なんてゴドーは来ないんですよ(笑)。
ゴドーを待つんだけど、待つ理由がわからないし、ゴドーも来ないでしょう(笑)?でも、それで演劇って成立するから、映像でもそれはあり得ると思っているんですね。ただ、もちろんリアルなものも演劇的には成立します。でも、そういう芝居もあるという意味で言うならば、あの映画はまさにそれでしょうね。
今いる2人でも、過去とか未来が実はよくわかっていないっていう、今は何を話すかが全てであるみたいな…何となくそんな風に思いました。僕の中ではですけど」
――冒頭で、俳優の内藤剛志さんと室井滋さんとして登場します。打ち合わせをしているところは、ドキュメンタリーのようで、実際こういう感じでやっていたなのかなって
「あれは全部作ったものでセリフです。あんな風に話さないって(笑)。みんな長崎がセリフとして書いて、それを覚えてやっていたんです。それをやっちゃうとまた違った映画になるじゃないですか。だからフェイクでやろうということで、全部セリフで言っているんです。
もちろん混ざるようなものもあっていいと思うんですけど、長崎は全部フェイクにしようぜと。だから、全部で一つの演劇という感じですね」
■「連ドラの鉄人」という異名を持ち6年9カ月連続でドラマ出演!
1995年1月から2001年9月にかけて27クール(6年9カ月)連続でドラマに出演するという日本新記録を持ち、「連ドラの鉄人」という異名を持つ内藤さん。主演シリーズも多く、ドラマに欠かせない俳優として40年以上活躍を続けている。
――デビューされてからずっと台本を抱えているという状態が続いているのでしょうね
「そうですね。何かしら撮影していますね。長期で休みということはなかったです」
――27クール(6年9カ月)連続でドラマ出演という日本新記録も持ってらして
「確かにそれはそうなんですけど、連続で出たから偉いわけじゃないですしね。新記録だと言われるようになったのでやめたんです。だって、そんなつもりじゃなかったですから」
――でも、やろうと思ってできることじゃないですしね
「そうですね。それはそうなんですよ。呼んでいただいたからですけど、僕の仕事の理由というのは、興味がある人とやりたいってことと、あるいは一緒にやろうと言ってもらえたから、つまり人間関係なんですよ。
俳優は受けるのが仕事ですから。やっていたら、あの当時、常盤貴子さんが10何クール連続出演されていて、あと何クールで常盤さんを抜くとか、そんなことを雑誌か何かに書かれるようになって。
20クール超えて『新記録です』とか言われるようになったので、うちの(事務所の)社長と『これ何か違わない?』ってなって。どこかで理由を作ってやめようって決めたんです。
ちょうど『Laundry ランドリー』という窪塚洋介くんが主演で森淳一監督の映画の撮影があって。無理をすればテレビもやれたんだけど、『すみません、映画なんで』って、1回(連続ドラマの出演を)切ったんです。
俳優は別に数じゃない。本当にそうじゃなく、何クールか連続で出ている『内藤がいる』みたいなことを書いてあって、そうじゃないんだって。それを言うんだったら、長く出た人で言うならば、例えばだけど、『太陽にほえろ!』(日本テレビ系)なんて10年以上やっていたんですよ。クールで言ったら、すごいことになるでしょう?
だから、そんなことが俎上に上がること自体おかしいと僕は思います。なので、(連続出演は)ちょっとやめようと思った記憶があります。そこばかり言われるようになったので」
■渡瀬恒彦さんからのアドバイスで…
「警視庁・捜査一課長〜ヒラから成り上がった最強の刑事!〜」シリーズ(テレビ朝日系)、「警視庁強行犯係 樋口顕」シリーズ(テレビ東京系)など主演ドラマシリーズも多数。
――2時間ドラマから連続ドラマになってシリーズ化された作品も多いですね
「ありがたいですね。ずいぶん前になるんですけど、俳優としての悩みを抱えていた時に大先輩である渡瀬恒彦さんの主演ドラマ『十津川警部』シリーズに犯人役で出たことがあって、その時に(渡瀬さんに)相談しました。
その当時、僕は主役もいくつかやらせていただくようになっていたんですけど、なかなか続かなくて、すぐ終わってしまっていたので、『どうしたらいいんですか?』って聞いたことがあるんです。
そうしたら、渡瀬さんが『台本を読む時に自分のところから読んでない?周りの出ていただける俳優の人が、「(自分の)いいシーンがある」とか、「いいセリフがある」と感じているかを見ているか?』と聞かれてハッとなったんです。
僕は、主役をやるということは、自分が頑張らなきゃいけないと思って自分中心に考えていたけど、『スタッフを含めた全員がやりがいを持って撮影に臨んでいるか。それは必ず映像に出るから、いい現場を作るのは主役の大切な務めだ』と言われて意識が変わって、渡瀬さんに言われたことを守っていたら、それ以降、そうなりました。
渡瀬さんにそういうコツを教えていただいたことを『徹子の部屋』(テレビ朝日系)でお話して、そのことを渡瀬さんに報告したら、『そんなこと俺、言ったっけ?』というおしゃれな回答が返ってきました(笑)」
内藤さんは、2017年から2時間ドラマ・十津川警部シリーズを引き継ぎ、8作品に主演。「警視庁強行犯係 樋口顕」シリーズ、「警視庁・捜査一課長〜ヒラから成り上がった最強の刑事!〜」シリーズ、「令和サスペンス劇場・旅人検視官 道場修作」シリーズ(BS日テレ)、「ホテルマン 東堂克生の事件ファイル」シリーズ(BSーTBS)など主演ドラマが続く。次回は撮影エピソード、5月8日(金)に公開される映画「幕末ヒポクラテスたち」も紹介。(津島令子)
ヘアメイク:長縄希穂〔MARVEE〕




