2007年、映画「クローズZERO」(三池崇史監督)のリンダマン役で注目された深水元基さん。映画「新宿スワン」シリーズ(園子温監督)、大河ドラマ「真田丸」(NHK)、「スローな武士にしてくれ〜京都 撮影所ラプソディ〜」(NHK BSプレミアム)、「真犯人フラグ」(日本テレビ系)など話題作出演が続く。4月17日(金)〜19日(日)まで舞台「oasisオアシス」(東海市芸術劇場大ホール)に出演、4月24日(金)に映画「月の犬」(横井健司監督)の公開が控えている。(この記事は全3回の中編。前編は記事下のリンクからご覧になれます)
■結婚、そして2児の父に
2015年、映画「新宿スワン」に出演。この作品は、東京・歌舞伎町の裏社会を描いた和久井健さんの大人気コミック「新宿スワン」を実写映画化。アジア最大級の歓楽街「新宿歌舞伎町」を舞台に、女性たちに水商売の斡旋するスカウトマンたちの熾烈な抗争と、頂点へと成り上がろうとする熱き男たちを描いたもの。
金も仕事もなく歌舞伎町をさまよっていた白鳥龍彦(綾野剛)は、スカウト会社「バースト」幹部で一流スカウトマンの真虎(伊勢谷友介)に助けられ、スカウトマンとしての道を歩み始める。夜の女たちを幸せにすることを信条に生きていくことを誓うが、そこは危険な思惑が交錯する世界だった…という展開。
深水さんは、「バースト」の幹部であり、殺人以外は何でもやる“狂犬”関玄介役。190cmの長身に派手な衣装とアクセサリーを身に着け、眼光鋭く睨みをきかせ、暴れまわる姿は圧巻。
――迫力があってとても印象的でした
「そうですね。この頃から『もう後戻りできねえな。これ(俳優業)でやっていく』という感じになっていました」
2017年には続編となる映画「新宿スワンII」(園子温監督)に出演。龍彦の属するスカウト会社「新宿バースト」と、ヤクザや警察と裏で繋(つな)がる武闘派スカウト会社「横浜ウィザード」の熾烈な戦いが描かれた。この作品では、深水さん演じる関と浅野忠信さん演じる滝との過去の経緯、男の友情も印象的だった。
――2015年は、「新宿スワン」をはじめ、いろいろな作品もありましたが、ご結婚もされているのですね
「そうです。結構いろいろなことがあった年ですが、逆に言うと、長く付き合っていた彼女だったので、『新宿スワン』が決まって撮影が終わった時に、向こうの親を安心させられるものが1個できたと思って、それをきっかけに…というのもあります」
2017年に第1子となる長男、2020年に次男が誕生し、2児の父親に。
――ご結婚されてお子さんが誕生して変わったことはありますか?
「意識は変わったんですけど、やっていることは一緒ですね。仕事していかなきゃなって思って、これまで以上に頑張らなきゃいけないなとは思いました。でも、やっぱり子どもができて、そこからいろんな役をやってみたいと思い始めました」
――アウトローの強い男の人の役もやられていますが、だいぶ役柄の幅も広がりましたね
「結構オラオラ系の役が多いので、そう思っていただけるとうれしいです」
■ベテランのレジェンドたちとの撮影は…
2019年、「スローな武士にしてくれ〜京都 撮影所ラプソディ〜」(NHK BSプレミアム)に出演。このドラマは、NHKのハイテク機材に戸惑いながらも、京都の撮影所のベテランスタッフや俳優陣が撮影に挑む姿を描いたもの。
舞台は京都の撮影所。NHKからの依頼で最新技術を駆使した時代劇を撮影所で撮ることになるが、主役に抜擢されたのはしがない大部屋俳優(内野聖陽)。そして撮影するのは、ハイテクとは無縁の高齢スタッフたち。ハイテク機材に四苦八苦しながら撮影することに。
深水さんは、スタッフ会議などではおとなしい印象だが、現場に入るとガラリと人が変わって大声でバリバリと仕切り出すチーフ助監督の草加俊次役。
――撮影所の裏側がユニークに描かれていて面白かったです
「ありがとうございます。源(孝志)監督が京都を熟知している人なので、すごいなあって思いました」
――京都のベテランスタッフと俳優陣がハイテク機材に苦労しながら共に作品を作ることになるわけですが、裏方スタッフ役には、石橋蓮司さんや浜田晃さん、佐川満男さん、本田博太郎さんが出演されていました
「そうなんです。役者としてベテランのレジェンドたちが集まっていたので、それは面白かったですね。役者、監督、スタッフがそのまま投影されたような現場だったので、あそこにいられるというのは本当に嬉(うれ)しかったです」
――深水さんが演じた助監督は、打ち合わせなどでは比較的おとなしいのに撮影が始まると誰よりも大きな声で
「そうそう。あれは監督の演出もあって、『こういう助監督いるよね』というヒントをくださったので、ああいう風にしました。源監督の作品は、京都を舞台にしたものが多いんです。
今年1月から3rdシーズンがOAされていた『京都人の密かな愉しみ』(NHKBSプレミアム)もそうですけど、その前に『リキッド〜鬼の酒 奇跡の蔵〜』(NHKBSプレミアム)という作品にも出演させていただきました。いろいろなことを熟知してないと描けない作品というのは、見ている方も勉強になるし、本当にそうなんだろうなって。
ちゃんとリサーチして作っているので、見ていて面白いですね」
同年、「恋と就活のダンパ」(NHK BSプレミアム)に出演。「覇気が無い、スマホ依存、マニュアル主義」。さまざまな批判にさらされて追い詰められた大学生・菅(加藤諒)が、恋と就活の運命の全てを賭け、なぜかダンパ(ダンスパーティー)を開催することに…というストーリー。深水さんは、主人公・菅と同じ大学の8年生・戸越榮太郎役を演じた。
「榮太郎は8年も学生をしていて、就活なんてしたことのない男。長年学生をしているので、無精ひげもはやして貫禄があってサークルの“主(ぬし)”みたいな存在になっている。
人生を悟った感じもちょっとあって。映画『スター・ウォーズ』シリーズのヨーダみたいな男だなって思いながら演じていました(笑)」
■考察ドラマの真犯人にビックリ!
2021年、「真犯人フラグ」(日本テレビ系)に出演。この作品は、妻子が行方不明になった主人公が真犯人との疑惑を向けられながらも真実に向かっていく様を描いたもの。
ある日、運送業者「亀田運輸」に勤務する相良凌介(西島秀俊)の妻子(宮沢りえ、原菜乃華、小林優仁)が行方不明に。SNS上では凌介への同情など反響が多数見受けられたが、時が進むにつれて、「真犯人は凌介なのではないか」という疑惑(フラグ)が浮上する…。
深水さんは、凌介と妻・真帆の大学の後輩で相良家の新居を担当する営業マン・林洋一役。
――二人の後輩で新居担当営業マンというだけでなく、実は真帆の浮気相手で、凌介の部下・二宮瑞穂(芳根京子)のお姉さんを自死に追い込んだ悪い男でしたね。最初から聞いていたのですか?
「その辺は最初から8割ぐらいまではわかっていました。ただ、他の人たちに言ってはいけないと言われていましたし、真犯人が誰なのかは知らされてなかったんです。
だからビックリしました。『この人かー』って(笑)。その方も言えないですし、みんな自分の役の秘密について言えないままやっていましたね。でも、何となく『ちょっと怪しいんじゃない?』っていうのは薄々感じながら、本当に最終回を楽しみにしていたという感じでした(笑)」
――本当に驚きの展開でした
「そうですよね。『プロデューサーに直接聞いてもいいですよ』って言われていたので、聞いた人も中にはいるみたいです。教えてくれたみたいで。僕は『(放送を)楽しみにしておきます』って言って聞かなかったですけど」
――SNSでいろいろな考察が出ていましたね
「チーム独特のやり方だと思うんですけどね。スタッフは、『あなたの番です』とか『恋の闇』など日テレの考察ドラマのチームだったんです」
――深水さん演じる林洋一は怒涛(どとう)の展開でしたね
「そうでした。殺されましたからね。こんな殺され方しちゃうんだって(笑)。社長令嬢と結婚する直前だったのに…って。結構ハードでしたけど、やっていて楽しかったです。考察しながら演じるというのが面白かった。
自分はある程度展開がわかっているけど、それを匂わせるような芝居はしたくないので、最後まで言わないで、どっちでもいいように見えるようにして。
『全く犯人っぽい芝居をしないでくれ』と言われていたので、それはそれで思い切ってやろうって。やっぱり役者は欲が出ちゃうと、ちょっと匂わせちゃう芝居をしてしまいそうになるので、それは気をつけるようにしていました」
■監督に「アウトローよりこういう役をやってほしい」と言われて
2022年、映画「大事なことほど小声でささやく」(横尾初喜監督)に出演。この作品は、スナックを営むマッチョなゴンママが、人知れず不安を抱え眠れない日々を送りながらも
店にやってくる客たちを癒す日々を描いたもの。
ゴンママこと権田鉄雄(後藤剛範)は、昼はジムでからだを鍛え筋肉ムキムキ、夜はジム仲間が通う「スナックひばり」を営むマッチョで陽気なママ。ある夜、ジム仲間の歯科医・四海良一(深水元基)が一人でスナックにやってくる。普段は明るい良一だったが、悲しい過去を抱え、妻の由佳(遠藤久美子)との関係も冷え切っていて…。
深水さんが演じたのは、幼いひとり娘を病気で亡くし、深い悲しみを抱えている歯科医・四海良一。ゴンママとはジム仲間で店の常連客のひとり。みんなからは「先生」と呼ばれている。
「監督も僕に子どもがいることを知っていて、『深水さんにアウトローより、こういう役をやってほしい』って言われて。僕のこの感じとか、プライベートを知ってくださった上で役をくださったんです。
それまで自分自身とリンクする役というのは、ほとんどなかったというか。
オラオラしていたりとかするのは、ある意味そこはファンタジーなので、想像でやっているわけじゃないですか。
それがこの作品は、あまりにも近すぎるので、撮影しながらも、初めてちょっとつらいなという思いがありました」
――実際に小さいお子さんがいらっしゃるので子どもを亡くした父親役というのは精神的にきつかったでしょうね
「そう。だから自然と涙も出てくるものなんだなって。自分と重ねてやるという方が多い中、僕にはそういう役が来てなかったので。この役は重ね具合がちょっと多すぎるというか、そういうアプローチだったのかなって思います」
――ハードな役柄のイメージがあったので繊細な心情表現が新鮮でした。悲しみに押しつぶされそうになっていて前に進めない。亡くなった娘が残した痕跡を探し続けて
「会話もかみ合わない。別に奥さんは娘のことを忘れろと言っているわけじゃないんだけど。そういうことに気づかない男なんですよね」
――完成した作品をご覧になっていかがでした?
「登場人物それぞれの話があるんですけど、僕たち夫婦の話がフィーチャーされていて。もうダメだと思っていた二人が何とか一緒に前に進むことになる。娘を亡くしてから冷え切っていた二人がようやくという感じですよね。
もちろん自分の芝居は気になっちゃいますけど、実際にそういう経験をされた方を傷つけてしまったり、『あんなもんじゃねえよ』って言われないかとか…そういういろんな思いがありました」
演じる役柄の幅も広がりさまざまなチャレンジを続ける深水さんは、大河ドラマ「どうする家康」(NHK)、映画「静かなるドン」シリーズ、映画「帰ってきた あぶない刑事」(原廣利監督)などに出演。次回は撮影エピソード、4月24日(金)に公開される映画「月の犬」も紹介。(津島令子)




