2007年、映画「クローズZERO」(三池崇史監督)のリンダマン役で注目された深水元基さん。映画「新宿スワン」シリーズ(園子温監督)、大河ドラマ「どうする家康」(NHK)、映画「静かなるドン」シリーズ、映画「帰ってきた あぶない刑事」(原廣利監督)、舞台「oasisオアシス」など多くの作品に出演。4月24日(金)に映画「月の犬」(横井健司監督)が公開される。(この記事は全3回の後編。前編と中編は記事下のリンクからご覧になれます)
■大河ドラマで2度同じ役を演じて
2023年、大河ドラマ「どうする家康」(NHK)に出演。大河ドラマ2回目の出演で初出演の「真田丸」と同じ福島正則役を演じた。
福島正則は、小姓時代に豊臣秀吉から才能を認められた猛将。まっすぐな性格で石田三成と対立を深めていく。秀吉の死後、徳川家康方につき、豊臣家分裂の引き金をひくことに。
「たまたま最初と同じ福島正則役だったんですけど、こういうことがあるんだなあってビックリしました(笑)。でも嬉(うれ)しかったです。
福島正則といえばみたいに思ってくれたというか。ある意味面白いと思って選んでくださったということですからね。人物像も『真田丸』の時にいろいろ調べていたので、勉強しなくても良かったですし。
でも、キャストが替わり、描く部分も目線も違うので、今度はどういう福島正則をやればいいのかということは考えました。大河ドラマで同じ役を2回というのは他の方もあるみたいですけど、3回やったら快挙だと言われたので、3回目もやれたらいいなって思っています」
2023年、映画「静かなるドン(前編&後編)」(山口健人監督)に出演。2024年には続編となる映画「静かなるドン2」(鳴瀬聖人監督)に出演。
この作品は、関東最大規模の暴力団「新鮮組」のひとり息子として生まれ育った近藤静也(伊藤健太郎)が、父親が殺されたことで昼は堅気としてデザイン会社で働き、夜は新鮮組総長という二つの顔を持つことになり奮闘する様を描いたもの。
深水さんは、新鮮組の若頭・鳴戸竜次役。ヤクザの世界のことは何もわからないまま総長になった静也を支える若頭を凛々しく体現。包容力があり頼りになる強い男ぶりが話題に。
――私はDVDで第8章まで拝見させていただきました
「令和版ということでああいうキャラクターになりました。撮影は前編後編の映画としてやっていたので、DVDは、それを編集して…という感じだと思います」
■柴田恭兵さん&舘ひろしさんとのアクションシーンは宝物
2024年、映画「帰ってきた あぶない刑事」(原廣利監督)に出演。刑事を定年退職し、ニュージーランドで探偵事務所を開業していたタカこと鷹山敏樹(舘ひろし)と、ユージこと大下勇次(柴田恭兵)が、8年ぶりに横浜に。昭和・平成・令和、三つの時代を超える最強バディが復活!
8年ぶりに横浜に戻ってきたタカとユージは、探偵事務所を立ち上げる。記念すべき依頼人第1号は、タカとユージのどちらかの娘かもしれない彩夏(土屋太鳳)という若い女性。母を探してほしいと依頼されるが、捜査を続ける中で、チャイニーズマフィア、謎の美女(吉瀬美智子)、陰謀を企てる元銀星会組長の息子・海堂巧(早乙女太一)など、さまざまな問題が…。
深水さんは、海堂に雇われ、カジノ誘致に関わる事件で殺人を請け負っている元中国海軍特殊部隊の傭兵・黄凱(ファン・カイ)役。
――顔の右側とからだに刺青が入っていて、見るからに怖そうな雰囲気でした
「あの役はそうですね。ほとんどしゃべらないのに存在感がある男というのは、リンダマンに通じるなと思いながらやっていました。アクションまでちゃんとガッツリあったので。
恭兵さんと舘さんを相手に2対1のアクションができるなんて、こんなに光栄なことはなかったですよね。僕は事前にアクションの練習をしていたんです。
おふたりは当日だったのですが、例えばアクションもおふたりはこだわりがあるので、稽古の時に何パターンも想定してやっていました。もしかしたらこうやりたいかもしれないというアクションパターンを想定していろいろ練習していましたね。
一応いろんなパターンのベースは作っておきながら、現場で臨機応変に対応できるようにと思って。現場でこうしたいと言われるかもしれないという手も組み込んでいきながら練習していました。『あぶ刑事』は、ずっとテレビで見ていたので本当にうれしかったです」
――お二人を相手にかなり激しいアクションシーンでしたが、撮影はスムーズにいきました?
「はい。ただ、間違っても当たっちゃいけないので、めちゃくちゃ怖かったです(笑)。『当たってしまったらどうしよう?』という恐怖感はありました。
でも、おふたりともやっぱりすごいです。キレはすばらしいし、恭平さんはすごく足が上がるんですよ。『(僕の)顔の前くらいに蹴りを』って言われたら、(僕の)頭の上までドーンって足が上がって来たので、『すげえなあ』って(笑)。
おふたりとガッツリアクションシーンもできたのは宝物です。ずっと言い続けたい。自慢したいです(笑)」
■韓国映画「オアシス」を舞台で上演
深水さんは、東京、大阪、愛知で上演された舞台「oasisオアシス」の公演を終えたばかり。この舞台は、社会に馴染めないまま30歳を目前に出所してきたある青年と、脳性麻痺で体の不自由な女性との特異ながら純粋な恋愛を描いた韓国映画「オアシス」(イ・チャンドン監督)を舞台化したもの。
ひき逃げ事故を起こした兄(深水元基)の身代わりとなって服役した青年ジョンドゥ(丸山隆平)は、刑務所から出所後、事故の被害者家族のアパートを訪れ寂しげな部屋で一人取り残された脳性麻痺の女性コンジュ(菅原小春)と出会う。やがて二人は互いに心惹かれ合い、純粋な愛を育んでいくが、周囲の人間は誰一人として彼らを理解しようとせず…というストーリー。
――舞台になると聞いた時は驚きました
「本当にそうですね。どう描くのか、誰がやるのか、そこはすごく気になりました。台本はセリフとか場面転換も(映画に)忠実に描いているので、これを演劇でどう見せるのかは、稽古が始まってからわかってきたという感じでした。
どういう演出で場面転換して、どういう風に表現していくのか。主役のジョンドゥのキャラクターは丸山(隆平)さんがやるとどうなるのか…というのは、稽古が始まってからじゃないとわからなかったです」
――映画版はあまりに切なくて見終わった後、つらかったですが、舞台の方は救いがあると思いました
「そうですね。映画は公開当時僕も見ましたけど、ズシンときました。どう受け止めていいのかが、わからなかった。映画の公開当時は20代前半でしたしね。
みんなの思いとか作品の思いを感じながらお芝居をやるようになると、受け止め方はどんどん変わっていきました。やっぱり舞台の方が、ちょっとわかりやすく、ポップな感じに仕上がったんじゃないかなって思います」
――ジョンドゥは3回服役していますが、ひき逃げはお兄さんの身代わりで
「映画でもそうでしたけど、ひどいですよね。兄弟みんなポンコツですから(笑)。だからこそ、2人の世界の純粋さというのは伝わったのかなって思います。
それぞれが一方通行な思いがあるというのが、舞台だからわかりやすかった気がします。衣装もみんなグレーなんですけど、2人だけカラーで、そういうのも面白いなって思いました」
――皆さんそれぞれの役だけでなく、場面転換とかいろんなところに出てきますね
「そうなんです。僕も7役やっていましたからね。とにかくみんないろんなことをしなきゃいけないという感じでした。それがまた演劇っぽいなと思いながら、それもみんなで作っていくぞという感じで楽しかったです。自分たちで椅子を動かしたり、照明とか場面転換していくというのが」
――そうですね。確かに演劇っぽいと思いました。でも、切ないですね。純粋に愛し合っているのに、傍からは彼が襲っているようにしか見えず、逮捕されてしまう
「彼女も一生懸命説明しようとするんだけど、興奮すると余計何もしゃべれないから潔白を証明することができない。そのもどかしさ、切なさがやっぱりズシッと来ますよね」
――最後のジョンドゥが刑務所から出したお手紙が良かったです。出所したらまた二人は一緒になるんだろうなと思わせてくれて
「そうそう、あれが最高です。絶対出てきたらまた2人は一緒になれるなって。それで、その手紙を読んだ後、コンジュが部屋を掃除するんですよね。あれは『部屋を綺麗にして待っているよ』という意味でやっているんだろうなと思うと希望があって良かったなって思いました」
4月からTTFCオリジナルスピンオフ作品「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー ポーラー・ビギニング」(東映特撮ファンクラブ)が配信。深水さんは、スーパー戦隊シリーズに初参加。先代ゴジュウティラノ/黄虎直斗(キトラ・ナオト)を演じた。
「スーパー戦隊シリーズは初めてだったので、めちゃくちゃ嬉しかったです。変身は若い子で、僕は敵役だろうなって思っていたので、変身する方だと聞いて楽しくてしょうがなかったです。『変身できるんだ!』って(笑)。
スーツアクターさんがいる現場って初めてだったんですよ。変身したら同ポジでスーツアクターさんがいるというのがすごく楽しくて。スーツアクターの方と会ってお話もできたので、『戦隊ものをやっているんだ!』って実感できました」
――お子さんたちにはすぐに知らせたのですか?
「情報解禁になってすぐ話しました。びっくりしていましたね。5歳と8歳なので、どこまで理解しているのかわかりませんけど、すごく喜んでいました」
■萩原聖人さんとのタイマンシーンの撮影でヘロヘロに
4月24日(金)から映画「月の犬」がシネマート新宿ほか全国で順次公開される。この作品は、生きることに絶望した大人たちを描く“ジャパニーズ・ノワール”。
最愛の伴侶を病でなくした東島(萩原聖人)は、生きる気力を失い、極道の世界から離れ、知らない街に流れ着く。何気なく入ったバーで多額の請求をされても何も言わずに金を支払う東島に興味を持った沙織(黒谷友香)は、東島に仕事を任せるようになる。
一方、組織の一員である南(深水元基)は、繰り返される日常が耐えられずにいた。東島について沙織から報告を受けた南は、東島に一人の少年・将吾(渋谷そらじ)の面倒を任せる。黙々と仕事をこなしてきた東島だが、将吾の秘密を知ったことをきっかけに、指示に背くことに…。
――人生に絶望しているような暗い目が印象的でした
「南も人生を諦めたような男ですからね。最初に台本を読ませていただいた時、アウトローの作品なのに、ずっと淡々と…という感じで、大きな出来事があるわけじゃない。こういうアウトロー作品って、実はやったことがないなあって。
無口だけどいろんな思いを秘めている心情を表現するというのは、やってみたかった役ではあったので嬉しかったですね。
だから台本を読んで監督と話して、セリフがなくても説明してくれるようなカメラワークだったり、カットだったので、これはもう監督に託せばこの世界観に入っていけるんだなって安心して演じました」
――これまで萩原聖人さんと共演されたことは?
「何回かありました。前回は3、4年前にドラマのレギュラーで一緒にやらせていただいたので、ガッツリやらせてもらうのは2回目です。ただ、今回は敵役というか、萩原さん演じる主人公の相手役なのでめちゃくちゃ嬉しかったです。光栄でした。
その前にやらせていただいた時に、『本当に尊敬できるステキな役者さんだな』と思っていたので、その方の相手役でアクションまで一緒の立ち位置でガッツリやらせてもらえたのが本当に嬉しかったです」
――人生に絶望している男2人が出会ってしまう
「そう。黒谷さん演じる沙織が『二人は同じ匂いする』と言いますけど、本当に何もなくなった人たちってそうなんだと思います。
東島の場合は奥さんが亡くなって本当に明らかに何もなくなっちゃったんですけど、南の場合は、自分がそう感じているというだけで、捉え方なんですよね。『この先に何があるんだ?』って。そんな南が、本当に何もなくなった東島を見た時に何か先が見えるのかもしれないと、逆にそれで希望を持ったのかなって」
――萩原さんとのアクションシーンもすごかったですね
「あそこは2日間かけて撮ったんですけど、タイマンですし、激しかったですね。お互い信頼し合って距離感を持って、コミュニケーションを取りながら2日間。本当にふたりともヘロヘロになってやっていました。
でも、基本順撮りで最後にラストのアクションシーンを撮ったので、ふたりがぶつかる意味とかは、自分たちの中でわかっていて。何でここで立ち上がるのかとか、何で相手に傷を縛れと言って布を渡しているのかとか。そういう行動を取る意味がわからない部分はなかったんですね」
――完成した作品をご覧になっていかがでした?
「これは絶対映画館で見てほしい作品だと思いました。『何かしながらじゃ、見れねえぞ』っていう映画なので。時間の流れ方は本当に映画ならではのものだったので、自分はこういうのがやりたかったんだって思いました。
お客さんに託すって監督がおっしゃっていたのは本当にその通りで、どう思うかはお客さん次第だなって。その時のお客さんの体調だったり、置かれている状況や気持ちで受け止め方も変わる映画だと思う。
これを見てげんなりするのか、力になれるかは人それぞれだと思うんですけど、僕はワクワクしたんですよね」
――アクションシーンのほかに撮影で印象に残っていることは?
「東島と話しているところですね。南としてはワクワクして話しているし。どんどん東島を巻き込もうとしているシーンでもあるので印象に残っています。出会ってしまったからこそたどり着くその先を劇場で見届けていただけたらうれしいです」
――今後はどのように?
「本当にひとつひとつ大事にしてやっていくだけです。いろんな役に挑戦していきたいですね」
笑顔がとてもチャーミング。SNSでは良きパパぶりがうかがえる動画も配信。凄(すご)みのあるコワモテの役もカッコいいが、マイホームパパ役も見たくなる。(津島令子)





