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2026年5月5日 14:06

利重剛 13年ぶりとなる監督最新作「ラプソディ・ラプソディ」が公開中!「何度でも見たくなる映画が撮りたかった」

利重剛 13年ぶりとなる監督最新作「ラプソディ・ラプソディ」が公開中!「何度でも見たくなる映画が撮りたかった」
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1981年、映画「近頃なぜかチャールストン」(岡本喜八監督)で主演・共同脚本・助監督を務めて話題になり、俳優として多くの映画、ドラマに出演してきた利重剛さん。1989年に「ザジZAZIE」で劇場映画監督デビューを果たし、1995年、映画「BeRLiN」で日本映画監督協会新人賞を受賞。映画監督としても注目の存在に。現在、最新監督作「ラプソディ・ラプソディ」が公開中。(この記事は全3回の後編。前編と中編は記事下のリンクからご覧になれます)

■監督をやらないかと声をかけられて

2013年には、「クロエ」以来、約10年ぶりとなる監督作「さよならドビュッシー」が公開された。この作品は、祖父の家が火事になり、祖父と、仲よしだったいとこを失い、自らも全身に大やけどを負った女子高生・香月遥(橋本愛)が、祖父の遺産相続問題に巻き込まれ、何者かに命を狙われながらも、ピアノ教師・岬洋介(清塚信也)の指導のもと、コンクール入選を果たそうとする姿を描いたもの。

「あれは本当にありがたいことで、頼まれ仕事なんです。『監督をやってくれ』って言われたので嬉(うれ)しくて(笑)。それまでは『これを撮りたいんですけど』という形で、全然誘われることはなかったんです。

でも、あれは、クランクインしなきゃいけない時期が近づいてきているときに話をいただいたんです。それで、『もうあまり時間ないですね。じゃあ、脚本直していいですか?』って言って入りました」

――ご自身が企画を出してという形じゃなくて監督してみていかがでした?

「すごく楽しかったです。それもまた岡本(喜八)監督の話になるんですけど、監督に『利重くんね、君はオリジナルをいつも書いているけど、原作もので「こういうのはどうだ?撮らないか?」って言われるようなことがこれからあった時に、すぐ断らない方がいいよ』って言われていたんです。

『君はすぐ自分のタイプじゃないんでって言っちゃうかもしれないけど、原作を読んで、どこか1行でもここはいいなっていうところがあったら、そこから広げたりすればいいんだ。監督というのはずっと面白いことを考え続ける人間だと僕は思う』と。

『こうしたらどうでしょう?ああしたらどうでしょう?って言って、とにかくどんどん面白いことを考えて。それでプロデューサーにめんどくさがられて、もう降りてくださいって言われたら降りればいい。自分から降りるもんじゃない』って言われたので、なるほどなあと思って。

そのあと、『だから降りていいのは、モラル的に許せない時はもうやれないって言って降りればいいけど、そうじゃない時はめんどくさがられるまで面白いことをずっと。言い続けた方がいいよ』って言われて。

それで『さよならドビュッシー』の監督の話が来た時に、これは(岡本)監督のメッセージだなと思ったんです。音楽映画だし、監督は『血と砂』だったり、『ジャズ大名』とか、音楽映画をたくさん撮られた方なので。

フィルムのあの時代に、楽譜にコンテまで書いてあの『ジャズ大名』を監督が撮ったんだと。

今、デジタルの時代で俺が撮れないはずがない、だからやろうと思いました」

――岡本監督が今でも常に後ろにいらっしゃる感じですよね

「そう感じますよね。なので、『さよならドビュッシー』は本当に撮れて良かったです」

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■ドラマの父子役が話題になった高橋一生さんに主演オファー

(C)2026 利重剛
(C)2026 利重剛

「さよならドビュッシー」以来、13年ぶりとなる監督作「ラプソディ・ラプソディ」が現在公開中。この作品は、人付き合いを避けながら生きてきた男性が、いつの間にか知らない女性に籍を入れられていたことをきっかけに、人生が思わぬ方向へ動き出すさまを描いたもの。

少し天然で絶対に怒らない男・夏野幹夫(高橋一生)は、パスポート更新のため住民票を取得するが、そこに全く身に覚えのない「続柄:妻」の文字を見て驚く。「繁子」(呉城久美)という女性が自分と勝手に籍を入れていたことを知った幹夫は、正体不明の彼女を探しはじめ、小さな花屋で繁子を発見する。

しかし、彼女は触れるものすべてを壊してしまう型破りな女性。そんな繁子に振り回されっぱなしの幹夫だったが、いつしかふたりの人生に思いがけない変化が…という展開。利重さんは監督だけでなく、幹夫の叔父さん(母親の弟)役で出演もしている。

――主演の高橋一生さんとは、2019年に「凪のお暇」(TBS系)で父子役を演じて「よく似ている」と話題になりましたね

「そうですね。『親子役に違和感がない』って言っていただきました。役はどうしようもないお父さんだったんですけどね(笑)。一生くんのことは、俳優としても前から好きだったので共演は嬉しかったです。確かにみんなが言うように、何となく親戚感があるというか。何か共通するものがあるなというのは思っていました」

――一生さん主演で映画を撮ってみたいという思いは?

「その時もチラッとはよぎりました。やっぱりいい俳優なので、こういう人と仕事をしたら楽しいだろうなというのは。でも、すぐにこういう風に…という具体的なことはまだなかったですけど」

――「ラプソディ・ラプソディ」のキャスティングは、最初にヒロインを決めてからと考えていらしたそうですね

「そうです。とにかく先に繁子を決めてからと思っていたんですけど、うまくはまらないというか、決まらなくて。それで、逆の発想で、『じゃあどこから考えていこうか?』ってなって。

脚本はもう10何年前にできていたんですけど、その時は30代の設定だったんです。でも、今は30代で結婚していない人というのは普通じゃないですか。

30代だと成立しないから40代で考えないとダメなんじゃないかなんて話していたら、ふっと一生くんが思いついちゃって。頭の中で思いついちゃったら、ダメ元で声をかけてみようかなみたいな(笑)」

(C)2026 利重剛
(C)2026 利重剛

――オファーした時はどうだったのですか

「最初は『僕じゃないんじゃないですか?』とは言われましたね。『それこそ30代の後半だったりしたら良かったのかもしれないけど、ちょっと自分だと年齢が行き過ぎているんじゃないですかね』って言われて。

『でもね、今や40代にならないと、何で結婚しないんですか?なんて言われない時代になっちゃったから、逆に俺はピッタリだと思うんだけどな』って言ったら、『そうかな?』みたいな感じになって来て。

いろいろ話しているうちに『わかりました。やります』って言ってくださったので。だから、やっぱりタイミングですよね。10年前だったら一生くんじゃなかったと思うし、全部のタイミングがうまく合ったんだなって思います」

――あの役は高橋一生さん以外考えられないという感じですよね。「ふにゃふにゃ笑う」という表現などすごいなと思いました

「そうですね。柔らかい笑い方とか、本当に絶妙だと思って。ナチュラルな芝居、上手な芝居をする人って若い子にすごく多いけど、彼はメリハリの芝居もできるし、ナチュラルにもできるから、こんなに緩く見せて、でもちゃんと目立つ芝居してくれるんですよね。

本当にお芝居が独特で唯一無二ですよね。ちょっとハネる芝居もいっぱい入るのかなと思ったらそうじゃなく、あの感じでずっと幹夫くんを作ってくれたので見事だなと思いました」

――ほかの方のキャスティングも絶妙ですね。幹夫くんのことが好きな同僚役の池脇千鶴さんが幹夫くんの結婚を明かされた時の表情もすごいなあって思いました

「そうですよね。池脇さんの泣き笑い魅力的ですよね」

――皆さん適材適所という感じで絶妙でした。利重さんの叔父さん役も軽妙かつ思いやり深くて。一生さんとのやりとりもとても良かったです

「ありがとうございます。あの叔父さん役は、最初は自分でやるつもりはなかったんです。

それで何人かの方に声をかけてみたんですけど、スケジュールが合わなかったりとかして途中で考えを変えたんです。

いろいろ考えているうちに、他の人がやるよりは俺がやった方が面白いかなとか、スケジュールで苦労するのなら、自分は監督をやるんだから毎日現場にいるのでスケジュールは大丈夫だよなとか思いまして。

周りの人にも随分言われたんですよね。『叔父さん役は利重さんでいいじゃないですか』って。それで、『そうか、じゃあもうやるか』って(笑)。でも、実際にやってみると予想以上に大変でした(笑)」

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■生活圏である横浜が舞台で

(C)2026 利重剛
(C)2026 利重剛

生まれ育ったのが横浜で、2002年から再び横浜で居住することにした利重さんにとって生活圏の場所での撮影となり、エキストラをはじめ全面的に協力してくれたという。

「母の体調もあって横浜に居住を移したので、撮影場所は日頃からなじみの場所でしたし、横浜の皆さんが快く協力してくださって、ありがたかったです。横浜に住んでいて横浜の映画なんですというと、それだけで話を聞いてくださるんです。

区役所をそのまま貸していただき区長まで出てくださって。横浜のいろんなところが映っていて、ある意味みんなに横浜を知っていただくという意味でも、横浜で撮影できて本当に良かったですし、皆さんには感謝しかないです」

――撮影で特に印象に残っていることは?

「6月に撮影したんですが、とにかく暑かったことですね。本当に暑くなる夏の前に撮っちゃおうねって言っていたのに、もう初日から暑くて…この印象が強かったです」

――撮影期間はどのぐらいでした?

「3週間だったので、ちょっときつかったですね。でも、また岡本監督の話に戻っちゃうんですけど、『近頃なぜかチャールストン』は、確か実質19日間で撮っているんですよ。

だから、俺も3週間あれば撮れる。ましてやフィルムの時代じゃなくてデジタルなんだから撮れないはずはないんだって。あの時岡本監督は50代後半で、俺は60歳を過ぎたけれども撮れるんだと思って頑張って撮ったんですけど、ちょっときつかったです。

でも、徹夜することもなく毎日帰れましたし、スタッフもちゃんと睡眠を取れるようにして撮影することができたので、それは良かったかなと思います。

ただ、昔は色々トラブルがあっても自分でどんどんアイデアが出せる自信があったんですけど、今回は真っ白になることが何回かありましたね。

でも、その分みんなに助けてもらって、いいメンバーが集まってくれたなと思いました。自分の好きなスタッフ一人一人に声をかけて集まってもらったんですけど、とにかくみんな本当に優秀で、それこそ頭が真っ白になったり、自分が倒れちゃってもきっと代わりにやってくれてこの映画は完成するんだろうなって思うくらい信頼できるメンバーでした」

――婚姻届が印鑑証明も印鑑も何も必要なく、あんなに簡単に受理されるということに驚きました

「結婚する手続きのハードルが高いよりは、簡単な方がいいんですけどね。でも、こういうことが実際に起こり得るというのは、ある意味怖いですよね」

――なぜ幹夫が怒らないのか、繁子はなぜ周囲の人たちを振り回すのか、伏線がすべて回収されていて本当に面白い作品でした

「ありがとうございます。自分の中でもう1本やるべきじゃないかなと思ったし、プロデューサーの中村さんが、『今の利重さんの映画を見たいし、やりませんか?僕がプロデュースするから』と言ってくれたことと、あと、母を見送ることもできましたから。

短編はそれまでも撮れていたんですけど、長編となると、やっぱり母のことで何かあったら…というのもありましたからね。

この映画好きなんだよな、ついつい何回も見ちゃうんだよなみたいな作品が作れたらいいなと思って。それをちょっと置き土産みたいなことにしたいなって。

俺は映画ってこういうものだと思うし、それを置いていくからねって。それに反応してくださったのか、『こういう映画が見たかった』と言ってくれた人が多かったので、映画を作ってすごく良かったなと思っています」

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■高校時代に知り合った監督作に出演

(C)「おばあちゃんの秘密」製作委員会2026
(C)「おばあちゃんの秘密」製作委員会2026

6月20日(土)に公開される映画「おばあちゃんの秘密」(今関あきよし監督)に出演。この作品は、密かな思いを抱えた祖母とその孫娘が織りなす時間を越えた交流を描いたもの。

亡くなった祖母・時子(竹下景子)の遺言で、遺品整理のために東京から新潟県胎内市にやって来た莉莉(島田愛梨珠)は、夫を亡くした後ずっとひとり暮らしだった時子の家の中で、莉莉は祖母が夫以外の男性と交わした131通の手紙を発見する。

両親の不仲で傷ついていた莉莉は、大好きだった祖母の秘密に戸惑いながらも、その足跡と思い出をたどりはじめる…というストーリー。利重さんは若い女性と浮気をして母親と離婚した(莉莉の)父親役。

「撮影が『ラプソディ・ラプソディ』の準備中だったので、やれるかどうかわからないという話をしたんですけど、『大丈夫、大丈夫。もしやれなかったら誰か他の人に頼むからさ』ってギリギリまで待ってくれるということで、融通を利かせてくれて実質2日間で撮ってくれたんです。東京で1日と新潟で1日」

――台本を読んだ時にはどう思われました?

「ちょっとダメお父さんだなって(笑)。でも、この作品は、今関さんかなり気合いが入っているなあって思いました。

今関組は連続してずっと呼んでもらっているので、どんな役でもやるし、今関組には全部参加するみたいな気持ちでいるので、自分の役に関してもあまり難しく考えていないところはありますね。僕としては、役がどうというよりは、今関組の一員という感覚です。

今関さんと知り合ったのは高校の時なんですよ。一緒に上映会をやったりとかして、ずっと知り合いで友だちではあったんですけど、『恋恋豆花』(2020年)の時に会いたいと言われて会ったら『今回出てほしいんだよ』ということで、そこからずっと。

今関さんの作品に参加できるのは幸せですよね。やっぱり昔の自主映画をやっていた時の仲間だって思うんですよね。この年になると映画を撮らなくなっている人も多いけど、今関さんは相変わらず精力的に撮っていて。

今関さんは、もちろん作品によると思いますが、2週間とかそんな感じでものすごいスピードで撮るんですよ。『おばあちゃんの秘密』の前の『しまねこ』もそうですからね。あれをやられたら、僕が3週間で短いって言っちゃいけないみたいな(笑)。

予算がなかろうが時間がなかろうが、撮りきるみたいな、あのぐらいのパワーでやっているのを見るのは気持ちが救われるというか、元気になるんですよね。だから、この人とはずっとやりたいなと思っていて。それで、完成作品を見たら見事で、短期間で撮っているのにすごい方だなと改めて思いました」

――俳優さんのオファーが来た時の判断基準は?

「基本断らないですね。自分に興味を持ってくれていることに、逆に興味があるというか。『何で僕に興味をもってくれているんだろう?』って、行ってみたくなるんですよね」

――今後はどのように?

「さすがにもう潰しがきかないので、俳優をやりながらそれで生計を立てられれば1番いいなと思っています。ただ、今でもどんな仕事でも食べていければいいかなと思います。職業に貴賤なしと思っていますから。

役者で呼ばれれば行くし、誰も呼んでくれなくなったら、求人広告で何か探すのもありだし。ありがたいなと思っているのは、結構どんな仕事でも楽しいんですね。僕は何でも面白がるので。この仕事をやっていて良かったなと思うのは、結局どんなことをやっても面白いなって思えるんですよね。

母の介護をやっていた時も、お風呂に入れたり、いろいろやっていて親だと思うとカチンとくる時もあるんですけど、そんな時は優として介護士モードに入ると全然嫌じゃなくなるんですよ、不思議なことに。

これをあと半年やったら介護士の役ができるなと思ったりとか、面白いことがあると、『これ使えるな』ってメモ書きしちゃったりとか。本当に何をやっていてもちょっと面白いところがあるんですよねとか、客観視できるというか。

岡本監督にも『監督というのはずっと面白いことを考え続ける人間だと僕は思う』と言われていましたし、これからもいろいろなことを面白がってやっていこうと思っています」

独特の柔らかい雰囲気が心地いい。5月1日(金)に監督最新作「ラプソディ・ラプソディ」が公開されたばかり。8日(金)には映画「未来」(瀬々敬久監督)、6月12日(金)に映画「祝山」(武田真悟監督)、6月20日(土)に映画「おばあちゃんの秘密」など出演作品も控え多忙な日々が続く。(津島令子)

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