映画「あしたのジョー」(曽利文彦監督)のマンモス西役で注目され、映画「テルマエ・ロマエ」(武内英樹監督)、映画「ゴールデンカムイ」(久保茂昭監督)、「95」(テレビ東京系)など多くの作品に出演している勝矢さん。コワモテの役からコメディセンスを発揮したコミカルな役まで幅広く演じ分け、私生活では2025年に第一子が誕生し、パパとしても奮闘中。6月26日(金)に映画「罪の棘」(植田尚監督)の公開が控えている。(この記事は全3回の中編。前編と中編は記事下のリンクからご覧になれます)
■念願の役のオファーが「何でもいいからそれだけは決めてくれって…」
2023年、映画「BAD CITY」(園村健介監督)に出演。この作品は、小沢仁志さんの還暦記念映画で、架空の犯罪都市・開港市を舞台に、検事長が秘密裏に結成した特捜班が、巨大財閥と癒着して悪の限りを尽くす韓国マフィアに立ち向かう様を描いたもの。
開港市に縄張りを持つ桜田組組長(桑田昭彦)が韓国マフィア・金数義(山口祥行)によって殺された。金数義とひそかにつながっていたのが、開港市を影で操る巨大財閥・五条財閥会長・五条亘(リリー・フランキー)だった。
検察庁検事長の平山健司(加藤雅也)は五条亘を告発するために、公安0課の小泉香(壇蜜)を使い、熊本(勝矢)、西崎(三元雅芸)、野原(坂ノ上茜)をメンバーに特捜班を結成し、また、特捜班のメンバーとして、刑務所に服役中の元・強行犯警部の虎田誠(小沢仁志)を期限付きで復活させることに…。
――勝矢さんが演じた熊本刑事の壮絶な最期が印象的でした
「昔、(小沢さんの)弟さんのカズ(小沢和義)さんと話していた時に『俺が倒れて死ぬ時に「何だよ、お前、顔から落ちれねえのか」って、兄貴はそんなことを言ってくるんだよ。下はコンクリートだよ』って言ってたんです。
顔から落ちたらすりむくだけじゃなく、骨折したりして大変なことになるじゃないですか。でも、そういう話を聞いていたから、俺があそこで死ぬシーンを撮った時、普通だったら手をついてバーンと壁に当たると思うんですけど、そのまま顔から壁にバーンと当たっていきました。それぐらいしないとと思ったので(笑)」
――それをご覧になった小沢さんは何かおっしゃっていました?
「いや、何にも言わなかったです。でも、あれは何かいい感じで死ねたなと思いました。
あのシーンを撮った時、部下役の俳優のお父さんが亡くなったばかりで、俺が死ぬところでボロボロ涙が出てきちゃって、『何かオヤジが死んだ時と同じ顔をしています』って言われて。ちゃんと死んでいるように見えるなら良かったって思いました」
2024年、映画「ゴールデンカムイ」(久保茂昭監督)に出演。この作品は、明治末期の北海道を舞台にアイヌ埋蔵金争奪戦の行方を描いた大ヒット漫画を実写映画化したもの。
ある目的のために大金を手に入れるべく北海道で砂金採りに明け暮れていた杉元佐一(山崎賢人=崎は立に可)は、アイヌ民族から強奪された莫大な金塊の存在を知る。金塊を奪った男は、捕まる直前に金塊を隠し、その在処を示す刺青を24人の囚人の身体に彫り脱獄させていた。
そんな時、野生のヒグマの襲撃を受けた杉元をアイヌの少女アシリパ(リは小文字=山田杏奈)が救う。金塊を奪った男に父親を殺されていたアシリパも仇を討ちたいと杉元と共に金塊を追う。勝矢さんは、網走監獄に収監されていた刺青の囚人のひとり・牛山辰馬(うしやま たつうま)役。
――特殊メイクもあって大変そうですね。
「大変です。時間がかかりますからね。でも、あれは原作が好きで、すごくやりたかった役なので。北海道で、『日本統一』を撮っている時に、『「ゴールデンカムイ」をやる情報が入って来て。『「ゴールデンカムイ」をやるんだ。俺に牛山をやらせろ』ってみんなに冗談で言っていたら、『勝矢さん合いますよね』なんて言ってくれていたんですよ(笑)。
そうしたら本当にマネジャーから電話がかかってきて、『牛山という役なんですけど』って言うんですよ。それを聞いて、『それだけは決めてくれ』って思いました」
――勝矢さんが演じた牛山は、原作から抜け出て来たようだと絶賛されましたね
「本当ですか。ありがたいです。やっぱり原作ものだとファンの方たちがイメージを膨らまして見ているから怖いですよね。相当原作に添って作っているので、原作ファンをガッカリさせたくないじゃないですか。
からだづくりにも励んで135kgあった体重を20kg減量して115kgにしましたし、特殊メイクには毎回1,2時間かかっていました。でも、やりたかった役なので撮影現場は楽しくてしょうがないです(笑)」
2024年、「95(キュウゴー)」(テレビ東京系)に出演。この作品は、1995年3月20日、地下鉄サリン事件をきっかけに「生きる」ことと向き合い、がむしゃらに生き抜いた高校生たちを描いたもの。
2024年、カラオケ会社に勤める広重秋久(安田顕)は、「音楽産業の30年」の取材を受けることに。聞き手の音楽ライター・新村萌香(桜井ユキ)は、まだ高校2年生だった頃の秋久(高橋海人=高ははしごだか)が読者モデルとして写ったファッション雑誌を差し出す。
そこから彼の記憶は、カリスマ的な魅力を放つ同じ高校の翔(中川大志)、レオ(犬飼貴丈)、ドヨン(関口メンディー)、マルコ(細田佳央太)と過ごした1995年3月20日、地下鉄サリン事件が起きた日に舞い戻っていく…という展開。
勝矢さんは、秋久たちのグループと敵対する武闘派暴走族のリーダーで、桁違いにケンカが強い大黒役を演じた。
「このドラマの城定秀夫監督とは、『静かなるドン 新章』で昔ご一緒しているんですよ。それで久々に城定さんと会って、テレビドラマで暴走族だと言われたから、『暴走族って、俺もう50歳前ですよ』って言ったら、『じゃあ、暴走族に飼われている、ただ暴力が強いだけの人みたいな。何か薬で頭がおかしくなっちゃっているけど、こいつだけ置いとけばなんとかなるって感じにしましょうよ』みたいなことを城定さんと話して。
初めは暴走族の伝説的なリーダーみたいな感じだったんですけど、総長って言われているだけで無茶苦茶なヤツということに話が落ち着いて。そうじゃないと、あの年で暴走族をやっているってこと自体がおかしいじゃないですか。そんな感じで好きにやらせてもらって楽しかったです」
――迫力があるので怖かったです
「そうですよね。暴れ回っていましたから(笑)」
■最新出演作で葛藤を抱えた刑事役に
6月26日(金)に公開される映画「罪の棘」に出演。この作品は、仮釈放中の女、25年前に実刑判決を受けた男、25年前に父を亡くした刑事、3人の運命が複雑に絡み合っていく様を描いたもの。
親の愛を知らずに育ち、悪い男に騙(だま)されて薬物事件で実刑判決を受けて仮釈放中の絵李香(雅び=びは王に比)は、他者との関係を築くことができず、依存と孤独を繰り返してきた過去を抱えている。
そんな絵李香の保護司となったのは、25年前に強盗事件で実刑判決を受けた過去を持つ岩永(脇知弘)。2人は次第に信頼関係を築いていくが、強殺事件が発生。25年前の事件で父を失った刑事・藤堂(勝矢)は、岩永が事件に関与していると疑い執拗(しつよう)に追い始める…という展開。
勝矢さんは強盗事件で服役した岩永が、今回の強殺事件の犯人だと疑い追い詰めていく藤堂刑事役を演じている。
「何年か前から、(監督の)植田(尚)さんと脚本の村川(康敏)さんと話していて。村川さんは、僕が上京して最初に赤坂のラーメン屋で芝居の稽古をやっていた時に会っていた人で、その時に植田さんにも会って一緒に自主映画を作ったんです。もう30年以上前ですよ。
それで、5年くらい前に、みんなでまたやれたら面白いよねって話になって。村川さんは脚本家、植田さんは監督、僕は俳優として何とかやってきているし…やりましょうということに」
――勝矢さんは、自分の父親を殺した犯人だと睨んでいる岩永とまた事件絡みで関わることになります
「そうですね。それも父親との関係がうまくいってなくて、それを修復する前に死なれちゃっているわけで。そこの親子間を自分の中で掘り下げると、やっぱりお父さんが大好きなんですよ。
大好きだからこそ、こだわっていて、大好きだからおやじの気持ちが外に向いていることが自分に向いてないみたいな判断になってしまう。そのわだかまりみたいな思いが残っていて、それをうまく描いている。
でも、そこにばかりこだわっている人物として見えるのは嫌なので、日常がちゃんと送られている人間として見せたいというのは植田さんにも話して。やっぱりみんな日常の中に抱えているものがあるじゃないですか」
――お父さんが一生懸命救おうとしていた岩永に対する激しい嫉妬の感情も
「そうですね。でも、岩永1人じゃないと思うんですよね。岩永の他にもおやじが救おうとしていた人は絶対いっぱいいて、その中の一人で、その場にいた岩永がおやじを殺してしまったんじゃないかと思っている」
――お父さんは息子に対する思いを抱えながら、だから非行少年たちを助けていたのだろうなということがわかりますね
「そう、その都度その都度、いろんな人がいて、いろんな問題が起こって、あっちにこっちに走り回っていたんでしょうね。本作ではお母さんが出て来ないので、離婚しているんだろうなと勝手に想像していますけど。でも、子どもの頃に感じたおやじの優しさの記憶は残っているから悔しいんでしょうね。
なぜ、おやじを殺すようなヤツをおやじは救おうとしていたのか。それを紐解くために自分も刑事になったのかなとか。『おやじはそれで何かいいことあったのかよ』というセリフがありますからね」
――切ないですよね
「あれも村川さんと相談して、こうやって言いたいんだって話して。いろいろな人を救おうとしていたおやじは死んじゃって、岩永は強盗事件で刑務所に入ることになって、それで俺もわだかまりを持って何十年も過ごして…。あんたはそれで幸せだったのかって。
そのシーンの撮影の時に、自分のお袋が亡くなった時のことも思い出したんですよね。ずっと子育てに追われて、僕が30歳の時に死んじゃったんです。子育てが全部終わって、第2の人生みたいなこともないまま亡くなっちゃったから、そんなので楽しかったのかなって。
この『罪の棘』の藤堂のおやじもそうだったのかなとか、そういう台本の相談ができたのは良かったです」
――完成した作品をご覧になっていかがでした?
「とても良かったです。本当に思っていた通り、日常の中にある暗い闇の部分を紐解いていくみたいな感じで。
植田さんが見事に、日常の中でみんな前を向いて行こうとしてるけど、後ろから声をかける人がいたり、横からチャチャを入れる人がいたり、前を見ているけど前が見えなかったりする人がいたり…という世界観がちゃんと日常の中に描かれていてすごく良かったなって思いました」
■新米パパとして子育てに奮闘中!
2024年、元宝塚歌劇団宙組トップスターで俳優の真風涼帆(まかぜ・すずほ)さんと結婚。2025年に第一子が誕生し、現在子育てに奮闘中。
――昨年、赤ちゃんも誕生して
「そうですね。今は可愛くてしょうがない。家にいる時はメロメロですよ。
――勝矢さんは子育ても積極的にされているようですね
「いろいろ調べていただいてありがとうございます。全部二人で話し合いながらやっています。子どものことも全部話していこうって。ひとりだけが考えて、ひとりでいっぱいいっぱいになってもいけないので。初めてなので、わからないことばかりですけど、悩んだり迷ったりしながら、その都度2人でしっかり話し合ってやっています」
――今後はどのように?
「いろいろやっていきたいです。主役もやりたいですけど、作るという作業もやろうかなみたいな。自分で劇団みたいなのもやっていたので、そういうこともできたらいいなって。
子どもができたばかりなので、70歳までは現役でバリバリやらなきゃいけないという使命感に燃えています。結婚する前は、何となくのほほんと生きていたから、もうちょっとしっかり未来を見据えてやっていこうと思って。本当にいい加減だったんですよ(笑)。
20歳までサッカーでプロを目指してとか言っていますけど、高校の時からプロにという意識を持ってやっていたわけでもなく、何となくサッカーで飯が食えたらいいなみたいな感じで。
サッカーを辞めた後、俳優をやりたいわけでもなく、映画だって高校の授業で見たのが初めてで、舞台なんかもちろん見たこともないし。そこから始めて、ただの負けず嫌いなだけでやってきたんですけど、若いうちにもっと気づきゃ良かったみたいなことがいっぱいあります。でも、過去には戻れないので、ひとつひとつ頑張ってやっていこうと思っています」
「気は優しくて力持ち」という言葉がピッタリの勝矢さん。奥さまとお子さんのことを話す時は一際優しい表情になる。いいパパぶりが目に浮かぶ。「罪の棘」の公開も控え、公私ともに充実の日々が続く。(津島令子)