1994年に公開された映画「RAMPO」(黛りんたろう監督)のヒロインに抜擢され、第18回日本アカデミー賞新人俳優賞とエランドール賞新人賞を受賞した羽田美智子さん。映画「美味しんぼ」(森崎東監督)、「サラリーマン金太郎」(TBS系)、「警視庁捜査一課9係」&「特捜9」シリーズ(テレビ朝日系)などに出演。セレクトオンラインショップ「羽田甚商店」、著書「羽田さんに聞いてみた、小さな幸せの見つけ方」(宝島社)、YouTube「羽田美智子のChange of Life」など幅広い分野で活動。6月12日(金)に「劇場版 旅人検視官 道場修作」(兼崎涼介監督=崎はたつさき)が公開される羽田美智子さんにインタビュー。(この記事は全3回の前編)
■短大在籍中、芸能界デビュー!
茨城県で生まれ育った羽田さんは、高校卒業後、短大に進学するために上京したという。
「最初は中学の時にスカウトされたことがあったので、そういう世界があるんだということは漠然と意識していたんですけど、まさか自分がなれるわけがないと思って封じていたんです。
でも、いよいよ進路を決めなきゃいけない時に迷って。短大の時に友だちがすごく当たる占い師さんがいるというので、進路を相談しに行ったら、こういう世界が向いているって言われたんです。
それで、帰り道に『De☆View』(勁文社)という本を買って、自分で申し込んでオーディションを受けまくるという感じで。他の人はみんな就活されていたのに、私はある意味、この世界に就活していたみたいな感じです」
――その時はご両親にはお話されたのですか?
「最初は内緒にしていたんですけど、どこに就職するのかという話になった時に、実はこういう世界に行きたいって言ったら、何かそういうことを言い出しそうな気がしていたって言われて。
『自分の人生だから思うようにやって、ダメだったら帰ってくればいいのよ』って北関東の親は言うんです。四国とか九州の人たちは『成功するまで帰ってくるな』って言うんですって。でも、関東の親は近いから、『ダメだったら帰ってくればいい』と甘いことを言うの(笑)」
――お父さまは羽田さんが小学生の時に白いワンピースを着て走ってくる姿を見て女優さんになるんだろうなと思っていたとか
「そう言っていました。父は不思議なことを言う人だったんですよね。でも、最初はいろいろ落ちて、この世界は厳しいなあって思いました。
でも、オーディションでいいところまで行ったから、ちょっと使ってあげるよみたいなことも増えてきて。それで何とか歩んできたという感じです」
1994年、映画「RAMPO」のヒロインを務め、第18回日本アカデミー賞新人俳優賞、エランドール賞新人賞を受賞して話題に。
舞台は昭和初期の東京。探偵小説家の江戸川乱歩(竹中直人)は、ある事件で夫殺しの嫌疑をかけられている女性・静子(羽田)に興味を持つ。この事件が自分の書いた小説にそっくりだったのだ。乱歩は小説の中に自分の分身・明智小五郎(本木雅弘)を登場させて静子を助けようとする。
――映画のヒロインに抜擢されて連続ドラマにも出演という順風満帆なイメージがあります
「そういう風に見えるだろうなと思いますが、自分の中ではすごくつらかったなっていう思いがあって。20代の頃は本当にしんどいなと思っていました。
というのは、やっぱり実力がなさすぎて、自分自身に疲れていましたよね。何もできない自分に対して、『何でできないんだろう?』って思って。どうして要求されることができないのかなって。いつも『どうしよう?どうしよう?』って…ずっとそんな感じでした」
――優等生のイメージがありますが
「全然そうではなくて、よく怒られていました。寝坊しちゃって遅刻したこともあって口を聞いてもらえなかったりとか…いろいろありました。
でも、いろんな経験をして怒られたりしたから、もう怒られないように頑張ろうと思いましたし、やっぱり人生を教えてくれた世界ですよね。本当にどこに行っても自分次第というか、自分の力次第だなって。あと、思いっきりやらないと次はないぞというようなことも教えてくれました」
■一流とはこういうことだと肌で感じて
1996年、映画「美味しんぼ」(森崎東監督)にヒロイン役で出演。この作品は、至高VS究極のメニューを巡る美食家親子の料理対決を描いた大ヒット・コミックを映画化したもの。実際の親子である三國連太郎さんと佐藤浩市さんが主演をつとめたことも話題に。
「今思えば本当に恵まれた時代で、よく私のようなズブの素人を映画のヒロインで起用してもらえたなと思います。そうそうたる先輩たちに囲まれて、本当に一流とはこういう世界だということを肌で感じさせてくれた貴重な経験でした。
三國さんを最初に見た時、映画のワンシーンみたいで、全てにおいて画角を背負って生きてらっしゃるなと思って。銀幕を感じるんですよね。
『ちょっと失礼しますね』ってタバコに火をつけて『僕は、こういう話はちょっと難しいんだよね』というような仕草なども、まるで映画のワンシーンを見ているみたいだと思って。
それで、浩市さんが、『おやじはあんなことを言っているけど、内心はこうなんだよ』とか、色々教えてくれてね。お2人ともとても優しかったですね。
三國さんと浩市さんが1回ちょっと芝居の意見が分かれた時、私に、『でも僕はね、長年やってきた経験上そう思うんですって息子に伝えてくれな』とおっしゃったので浩市さんを見ると、『だからね、そういうところが僕は違うと思っているんだよ』って言って。
何かドラマのワンシーンみたいで、『私、この二人の仲介役?』みたいな(笑)。のちにそれが芝居に活きるんですけどね。
それもわざとやっているような感じもあって。でも、三國さんは、声の出し方とか、入ってきた瞬間のオーラが桁違いにすごくて、本当にすごい方だなって思いました。
『美味しんぼ』は、芦田伸介さんもすごかったですし、出ていらっしゃる俳優さん皆さんが映画俳優なんだというのを見せてもらった感じでした」
――羽田さんが入ることで中和される感じでとてもバランスがいいキャスティングだと思いました。ヒロイン役が続きましたね。それもシリーズになる作品が多くて
「そうですね。おかげさまで。20年とか、短くても4,5年続く作品が多かったですね」
1999年、大人気漫画をドラマ化した「サラリーマン金太郎」(TBS系)に出演。この作品は、元暴走族のヘッドの金太郎(高橋克典)が一流企業の「ヤマト建設」に就職し、“型破りサラリーマン”として大活躍する姿を描いたもの。羽田さんは、第2期で金太郎と結婚する中村真澄役。
「同世代の俳優さんがいっぱいいてとても楽しかったです。今でも会うと同窓生みたいな気分になって、かけがえのない存在です。みんな未来をまだ先に見据えた若者たちの群像劇だったので、学校みたいでした。
一緒にご飯を食べて、良いことも愚痴もいろんなことを本音で話せるというか。誰かが『こういうことがあって、すごく俺は嫌だった』とかいうと、『わかる!』って共感したり、励まし合ったり、『まだまだこれから頑張ろうね』みたいなことを誓い合っていましたね」
――皆さん第一線で活躍されていますね
「そう。何かすごいですよね、皆さん。鍛えられたんです。本当に。あの頃こてんぱんに言われて死にたくなるような思いもしましたから。楽屋で泣いて、トイレで泣いて…なんていうことがしょっちゅうありました」
2003年、土曜ワイド劇場「おかしな刑事」(テレビ朝日系)がスタート。この作品は、警視庁東王子署の鴨志田新一警部補(伊東四朗)と、別れた妻との間にできた娘で警察庁刑事局のエリート・岡崎真実(羽田美智子)警視が、父娘であることを隠して事件を解決していく様を描いたもの。人気シリーズとなり、2024年まで全27作放送された。
――27作というのはすごいですね。しょっちゅう再放送されています
「そうなんです。2時間ドラマを愛する人たちがいっぱいいらっしゃるから嬉(うれ)しいですね。『おかしな刑事』は21年間続いたんですけど、伊東四朗さんは本当に今では親子みたいで。
最終回の時に伊東さんが皆さんにノートを配られたんですけど、そこに『みっちゃんもメッセージ書いて』って言われて。私はこの現場で育ててもらったということを書いたんですけど、伊東さんは、『娘がいない私にとって、本当にみっちゃんは娘だった』って書いてくれて…。
今もこの話をすると泣けてきちゃうんです。本当に私は芸能界の父だと思っているので、いろいろメールでやりとりさせていただいています」
――お二人のステキな関係性が画面から伝わってきますよね
「そう。伝わるんですよ。もちろん皆さんプロだからお芝居しているんですけど、多分この人たちは仲が良いとか、あまり仲良くないだろうとか、そういうのをお客さんは読み取ってくれますよね」
■渡瀬恒彦さんの訃報を聞いて…
2006年、「警視庁捜査一課9係」(テレビ朝日系)の放送がスタート。このドラマは、警視庁が多発する凶悪犯罪を解決するために新設した「第9係」の係長・加納倫太郎(渡瀬恒彦)を筆頭に、浅輪直樹(井ノ原快彦)、小宮山志保(羽田美智子)、村瀬健吾(津田寛治)、青柳靖(吹越満)、矢沢英明(田口浩正)の6人の刑事たちが、難事件を解決していく姿を描いたもの。
羽田さんは、9係の紅一点にしてムードメーカーでもある小宮山志保巡査部長役で、season8から警部補になり主任を務めることに。
「最初はみんな1年で終わると思ってやっていたんですけど、気がつけば20年。『0歳の子が20歳になっているよ。どんな繋(つな)がりよ?これ』って。もう今は親戚みたいな人たちです(笑)。
最初の年は撮影が終わった時に『お疲れさまでした。またどこかで』という感じだったんですけど、すぐに『シリーズ2作目お願いします』となって。『シリーズにするの?』みたいな感じで、3作目ぐらいは『またシリーズにするの?』って言っていたんです。
でも、4年目ぐらいからは、ちょっと事務所側も考慮して、『また来るかもしれないから一応(スケジュールを)空けておくか、どうしようか?』みたいな話をされていたのを覚えています」
2017年3月14日、渡瀬恒彦さんが逝去。Season12は第1話の冒頭に過去の渡瀬さんの映像を使用する形でスタート。係長は、内閣テロ対策室改造準備委員会のアドバイザーを兼務するために不在という設定に。
「衝撃的でしたよね。現場に行こうとした朝、連絡があってボスが亡くなったって聞いて。スタッフもキャストもみんな足取りも重いし、気持ちも沈んで…。
監督が『今日は撮影中止だ。主役がこの世からいなくなったんだから、やれるわけねえだろう』って言って。みんなで小さなお店に集まって、ずっと渡瀬さんを弔っていました。
夜中まで思い出話をして、みんなで泣いて泣いて泣いて…。『これからどうする?』って。
でも、続けようってテレ朝さんは言ってくれているし、渡瀬さんの遺志を継いで今シリーズはやろうということでやって。
もうその年で終わりだと思っていたんですけど、最後の時に、伊東(四朗)さんがご挨拶なさって。『ちょっと待って、渡瀬さん。あなたと育てた子どもたちがみんな立派にやっているよ。だから、今年で終わりにするなんて言わないで続けたい。自分もバックアップするから』って。
『そんな偉そうなことではないけどできることは自分も力になるから、渡瀬さんの遺志を継いだこの子たちに、来年、続編もやらせてあげたいんだけど、どうだろうか?』ってご挨拶をされたんです。
その一言があって新しく『特捜9』という形になったので、いろんな思いが交錯する作品で、振り返ればそういう人たちに出会えて、そして成長させてもらえたなって思います。
いい役者人生だったなって。まだ終わったわけじゃないですけど、振り返るとそういう時代、そういう時間が過ごせた自分がいるんだなっていうのをすごく感じています」
毎年約3カ月間、「警視庁捜査一課9係」&「特捜9」シリーズの撮影を続けながら、連続テレビ小説「ウェルかめ」(NHK)、主演昼帯ドラマ「花嫁のれん」シリーズ(東海テレビ)
など多くの作品に出演。次回は撮影エピソードなども紹介。(津島令子)
※羽田美智子(はだ・みちこ)プロフィル
1968年9月24日生まれ。茨城県出身。1988年、デビュー。映画「RAMPO」、連続テレビ小説「ウェルかめ」、連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK)、「花嫁のれん」シリーズ、映画「ジェネラル・ルージュの凱旋」(中村義洋監督)、などに出演。2019年、自身が「本当にイイ!」と思ったものだけを紹介・販売するセレクトオンラインショップ「羽田甚商店」をオープン。毎週水曜日、YouTube「羽田美智子のChange of Life」を公開。6月12日(金)に「劇場版 旅人検視官 道場修作」の公開が控えている。
ヘアメイク:木下 優
スタイリスト:坂本 久仁子



