映画「RAMPO」(黛りんたろう監督)のヒロインに抜擢され、第18回日本アカデミー賞新人俳優賞とエランドール賞新人賞を受賞して注目された羽田美智子さん。俳優として第一線で活躍し続け、「警視庁捜査一課9係」&「特捜9」シリーズ(テレビ朝日系)、連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK)、昼帯ドラマ「花嫁のれん」シリーズ(東海テレビ)など多くの作品に出演。6月12日(金)に「劇場版 旅人検視官 道場修作」(兼崎涼介監督=崎はたつさき)の公開が控えている。(この記事は全3回の中編。前編は記事下のリンクからご覧になれます)
■朝ドラはガッツリ一緒で連帯感が…
2009年、連続テレビ小説「ウェルかめ」(NHK)に出演。この作品は、ウミガメが産卵にくる徳島の海辺で育った浜本波美(倉科カナ)が地元情報誌を発行する出版社に入社し、パワフルな編集長(室井滋)の教育を受け、雑誌作りのおもしろさに目覚めて成長していく様を描いたもの。
羽田さんは、主人公・浜本波美の母・浜本加代役。19歳のときに21歳のプロサーファーの哲也(石黒賢)と結婚。サーファーとして世界中を飛び回る哲也に代わって「はまもと荘」を切り盛りするおかみさんとして働いている。
「懐かしいですね。旅館の若女将で。石黒賢さんが演じた旦那さんが『花嫁のれん』の宗佑(津田寛治)みたいな感じで。私はなぜかいつもダメな旦那さんのいる奥さん役なんですね(笑)。『私もちゃんとした人と結婚させてください』って(笑)。
朝ドラもすごく楽しいです。毎朝同じ時間の15分間、『今日も1日頑張ろう』って思う時間帯の作品なので、やっぱり爽やかだし、見ている人が嫌な思いにならないように作られていて。すごくいい世界なので大好きです」
2017年、連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK)に出演。この作品は、奥茨城村の農家の長女・谷田部みね子(有村架純)が、父(沢村一樹)が東京へ出稼ぎに行ったまま姿を消してしまったことをきっかけに、集団就職で上京し、さまざまな人と出会い成長していく様を描いたもの。
羽田さんは、みね子の親友で俳優志望の時子(佐久間由衣)の母・君子役。みね子の母・美代子(木村佳乃)とは幼なじみで親友。若い頃は村一番の美人の座を二人で争っていたという設定。
「ドラマの舞台である茨城県は私の故郷なので、方言指導はいらないだろうと思っていたんですけど、(方言指導の)先生に『蓋を開けたら羽田さんが1番下手』って言われてしまって(笑)。
私はちゃんとやっているつもりだったのですが、『あんたの茨城弁はね、つくばよりこっちの言葉なの。北じゃないのよ』って言われて。なかなか違いがわからなくて、方言には結構苦労しました。濁音が難しくてね。もうちょっと濁るのよ』って言われてもわからなくて、本当に難しかったです」
――茨城県が舞台の『ひよっこ』に羽田さんが出演されて地元の皆さんは嬉(うれ)しかったでしょうね
「はい、とても喜んでくれたので良かったなって思いました」
――特に印象に残っているシーンは?
「私のスタジオ初日の撮影は、娘・時子(佐久間由衣)を東京へと送り出すシーンで、母として娘の大きな夢を応援したい気持ちと、18年手塩にかけた娘がいなくなるさみしさとがないまぜになって…というシーンだったんです。
私としてはかなり真剣に演じたつもりだったんですけど、コミカルなBGMがついていて。災難が続いた谷田部家の美代子を支えるしっかり者の親友役だと思っていたんですけど、だいぶイメージが違っていました(笑)」
――朝ドラは認知度が違いますね
「そうですね。そこに出たら一人前という感じですよね」
――あの時のひよっこちゃんたちも皆さん大人になって
「すごく頼もしい気持ちになるのと同時に、時間の流れの早さを感じます。今年は私の甥(おい)っ子姪(めい)っ子たちが結婚するんですけど、この前まで赤ちゃんだと思っていたのに奥さんを連れて来たり、旦那さんを連れて来て、『夫が』と言っているのを見ると、本当に月日の流れを感じます。
『ひよっこ』の家族ラインが今もあって、しょっちゅう『お父ちゃん、お母ちゃん』って連絡を取り合っています。やっぱり朝ドラって結構がっつり一緒にいるので、連帯感があるんですよね。だから、撮影が終わっても連絡を取り合ったり、食事会をしたりしています」
■「芸能界の母」野際陽子さんと壮絶な嫁姑バトルを演じて
2010年、「花嫁のれん」(東海テレビ)に野際陽子さんとW主演。2015年の第4シリーズまで放送された。この作品は、石川県金沢市の老舗旅館を舞台に、元キャリアウーマンの嫁と伝統文化を重んじる姑の壮絶な嫁姑バトルを描いたもの。
大手旅行代理店に勤務していた奈緒子(羽田美智子)の夫・宗佑(津田寛治)が多額の借金を残して失踪してしまう。さらに会社が倒産し失業した奈緒子は、宗佑の実家で、創業100年を誇る金沢の老舗旅館「かぐらや」で仲居として働いて再起を図ろうとする。
しかし、ここの女将で、姑である志乃(野際陽子)は「花嫁のれんをくぐらずに結婚をした女性は嫁と認めない」と強固な姿勢でバトルを繰り広げることに…。
――昼帯ドラマは、撮影スケジュールが過酷なことで知られていましたね
「そうですね。当時はまだ27時終了で午前7時入り、8時開始で29時終了というようなこともありましたからね。
野際さんとW主演でしたけど、野際さんはその時もう70代だったので、そんなに無理して働かせるわけにいかないから、野際さんに少しでも楽にしてもらいたい分、私が頑張らなきゃいけないってちょっと背負っていましたね」
――羽田さんはほとんど出ずっぱりでしたものね
「本当にあの時の自分はよくやっていたなあって思います。自分で言うのも何ですけど、プライベートのプの字もなかったです。とにかくセリフを覚えたらやって…の連続で。毎日睡眠時間は2、3時間でしたね」
――第1シリーズは42話、第2シリーズ43話、第3シリーズ60話、第4シリーズ60話と回数が多かったので大変だったでしょうね
「はい。1週間のうち2日間お休みなんですけど、そこでセリフを入れなきゃいけなくて。1日リハーサルがあって、4日で撮影なんですけど、お休みの2日間で覚えるセリフの量が2時間ドラマの台本1冊分の量なんです。私がほとんどしゃべっているんですね。7割くらいは。よく4年もやったなあって思います」
――「花嫁のれん」も津田寛治さんが夫役でしたね
「私からお誘いしたんです。『誰かいないかな』って言われたので、『津田さんとすごく息がピッタリだから、津田さんどうかな?』という話になって。
津田さんに聞いたら、『昼ドラにもう1回チャレンジしたいという思いがあったから絶対やりたいです』って言ってくれたんですよ。それで津田さんが宗佑役をやってくれることになって良かったです」
――「警視庁捜査一課9係」&「特捜9」シリーズの村瀬さんとは正反対のかるーい感じで新鮮でした
「あっちは生真面目でものすごくしっかりしているのに、借金を作って逃げちゃいますからね(笑)。でも憎めないキャラを上手にやってくれて。津田さんとは、ほかの作品でも夫婦役を演じていますし、本当に優しい人なので一緒にいると癒されます。
それで、なぜか監督も照明さんも、メイクさんも特捜9と同じメンバーだったんです。だからもうこっちもあっちも一緒で楽しかったですね」
――野際陽子さんが凜とした美しさ、風格が際立っていましたね
「本当にそう思います。私は芸能界の父が伊東四朗さんで母が野際陽子さんだと思っているんですけど、野際さんのような女優さんはもう本当にいらっしゃらないなと思います。私は『野際さんみたいになりたい』って言っていましたけど、なれないです」
――大人気で第4シリーズまで放送されました
「私たちは1回だけだと思ってやっていたんですけど、人気が出てシリーズになることになって。撮影スケジュールがハードなのでみんなで作戦会議ですよね。
役者がみんな仲が良くて、山本圭さんのお家によく集まって食事して、『お話が来ていますよね、どうします?』みたいな感じで。『体力的にどうですか?先輩たち』って聞いて。いろんなことを言って発散しながらやっていましたね」
「花嫁のれん」シリーズの出演をきっかけに石川県は“第2の故郷”と呼ぶほど特別な場所になったと話す羽田さん。2024年1月1日に発生した「能登半島地震」の復興支援のためたびたび石川県を訪れ、各地でボランティア活動も行っている。
「先日も行ってきましたけど、私が行ったところはみんな元気になっていて。でも、建て替えして、息子さんが戻ってきたから頑張れているとか…そんな感じでした。そういう若い力とかがないと、ちょっと難しいですよね。自分たちだけだと」
――地震の前の街並みが作品として残っているというのは、ある意味励みにもなっているでしょうね
「東海テレビさんもすごくお世話になった場所だという思いが強くて、メディアができることはメディアで応援するという方向で、観光客を呼ぶために宣伝をしたりすることはずっと続けるっておっしゃってくださっています。
そういうことはこの世界に入って本当に良かったなって思います。『行って応援する』『観光することがボランティアになる』という状況なので、とにかく行って交流していただけたらと思っています。温泉にも入ることが出来ますし、お土産物屋さんもオープンしています。震災前にはなかった新しいお店も出来ているので、ぜひ行って応援してほしいです」
俳優だけでなく、幅広い分野で活動している羽田さん。次回は、セレクトオンラインショップ「羽田甚商店」、著書「羽田さんに聞いてみた、小さな幸せの見つけ方」(宝島社)、YouTube「羽田美智子のChange of Life」、6月12日(金)に公開される「劇場版 旅人検視官 道場修作」も紹介。(津島令子)
ヘアメイク:木下 優
スタイリスト:坂本 久仁子


