2004年、「西部警察SPECIAL」(テレビ朝日系)で俳優デビューを果たし、187cmの長身に精悍(せいかん)なルックスで“21世紀の石原裕次郎”として注目された徳重聡さん。正義感あふれる硬派のイメージで知られ、多くのドラマ、映画に出演。転機となった「下町ロケット(2018)」(TBS系)でイメージを一新。根暗でクセのある技術者を怪演して話題に。現在、映画「ライフセーバー!」(児玉宜久監督)が公開中。(この記事は全3回の中編。前編は記事下のリンクからご覧になれます)
■クセが強くて嫌な男の役はやってみたかった
2018年、徳重さんのさわやかで正義感の強い熱血漢というイメージを大きく変えるドラマ「下町ロケット(2018)」に出演。この作品は、経営難に追い込まれた下町の町工場・佃製作所が技術力により困難を打ち破る様を描き話題になったドラマの続編。
続編では、佃製作所が自転車・自動車・船舶・鉄道・エスカレーターなどに組み込まれている部品「トランスミッション(変速機)」の開発に挑む。徳重さんは、黒縁眼鏡をかけた孤高の嫌味なエンジニアを“怪演”して話題に。
徳重さんが演じたのは、技術開発部技術者でトランスミッションの「バルブ開発」チームのリーダー・軽部真樹男役。愛想がなく、開発が行き詰っていても定時退社するため、ほかのメンバーとたびたび衝突するが、定時退社の理由は、共働きの妻に代わって心臓に持病のある娘の通院のためであり、誰もいない時間帯に再び会社に戻ってひとり開発業務に携わっていたことがわかり、チームメンバーとの関係が改善。チーム一丸となって開発を進めていく。
――硬派のイメージだったので、不気味さが新鮮でした。お話が来た時はどう思われました?
「ああいう役をやったことがなかったので、前々からやってみたいと思っていたんですよね。ちょっと悪い方向というか、人間的にひねくれているというか。イメージと合わないからか、それまで縁がなかったのですが、そういった意味では、やってみたいと思っていた役がついにやれるのかと思ってうれしかったです。
でも、実際撮影に入ると、愛想がない、地味な人の役というのも初めてだったので、(どう思われるのか)ちょっと怖かったですね。
黒縁眼鏡を含めてやる芝居の方向も、何もかもガラッと変えるということは、こんなに怖いんだと思って、撮影初日はすごく怖かったのを覚えています」
――ご自身で考えていた人物像と監督のイメージは合っていました?
「福澤さん(監督)と一緒に作っている感じはありました。セリフを言ってみると『もう少し、こう言ってもらっていいですか?』という感じで。それで、そういう風にセリフを言うと『その感じがいいですね』みたいな微調整が最初の何日かはありましたけど、あとは自分で作っていって『いいですね』みたいな感じでした」
――軽部さんは、かなりクセがありコミュ力に問題はありますが、超優秀な技術者で人一倍仕事熱心でしたね
「そうですね。クセが強くてちょっと嫌なやつだけど、腕は超一流で。だから口も立つ。ほかの社員が提案するアイデアを速攻で却下しますけど、それはただ反対しているのではなくて、すでに自分が検証済みだからなんですよね」
――ひとりだけ定時に退社していますが、病気の子どもの世話や家事を済ませた後、会社に戻って誰にも言わず仕事をしていて
「そう。誰にも言わないでちゃんと試してやっていてという、実はちゃんとした人なんですよね(笑)」
――最初は浮いた存在だったのが、最終的には天才技術者の島津(イモトアヤコ)に「軽ちゃん」と言われて照れている表情も新鮮でした
「ありがとうございます。未知な部分が多すぎて、正直怖かったですけど、監督にいろいろご指導いただいてチャレンジできました。今思うと、それまで『石原プロの一員だからカッコ良くしなければいけない』みたいなプレッシャーがあったのですが、この作品からカッコつけるのをやめました。カッコいい役が来た時だけにしようって(笑)」
■石原プロにずっといるものだと思っていた
「下町ロケット(2018)」で新境地を開拓した徳重さんは、役柄の幅も広がり多くの作品に出演が続いていく。しかし、2021年、デビュー以来所属していた石原プロモーションが解散することに。
「上下関係がしっかりある会社でしたけど、それが特別なことだと思ったことはないんですよね。逆にそれを思ったのは、やっぱり石原プロが解散して外に出てからです。『石原プロというところは、一風変わった会社だったんだな』って(笑)。私は、これが芸能事務所なんだと勝手に思っていましたけど(笑)」
――渡哲也さんが2020年に亡くなられて6年になりますが、一番印象に残っていることは?
「印象に残っていることがいっぱいあるのが自慢と言ってもいいかもしれないです。社長とはたくさん共演させていただきましたし、その時々で、『お前は王道を行けよ』とか『俺たちは孤独だよな』、『まずは人として成長しなければダメだぞ』とか、格言みたいなことをたくさんいただきました。
いろんな時に、そういえば、こういうことを言ってくださっていたなあって思い出します。
その時々のシチュエーションで思い出すことは違うんですけど。
映画が公開になったり、ドラマが放送された時、『社長はどう思うかな?』って考えますよね。良かったと思った時はご連絡くださっていたので、社長の意見が聞きたいなって思うことはあります」
――2021年に石原プロが解散することに
「石原プロはずっとあるものだと思っていましたし、社長が替わることはあってもずっとあって、私はそこにいるものだと思っていて。役者をやめることになるのかなとも思いましたけど、その先の仕事も決まっていたので、目の前の仕事を一つ一つやって現在に至っているという感じですね」
2021年、「裕さんの女房」(NHK)で、「弟」(テレビ朝日系)以来、17年ぶりに石原裕次郎さんを演じることに。この作品は、裕次郎さんとまき子夫人の夫婦の愛の物語。まき子さんは松下奈緒さんが演じた。
「石原プロ解散後、初めての作品で再び裕次郎さんを演じることになるとは思ってもみませんでした。実際に裕次郎さんが暮らしたご自宅の庭でバーベキューシーンを撮影させていただきました。
撮影終了後にまき子夫人とお会いして、いろいろお話を伺わせていただくことができたのでとてもうれしかったです」
■モラハラDV夫を怪演!「娘に見せられない作品が続いて…」
2022年、「愛しい嘘〜優しい闇〜」(テレビ朝日系)に出演。この作品は、中学卒業から14年後、同窓会で久しぶりに再会した仲良し6人組のメンバー(波留、林遣都、本仮屋ユイカ、溝端淳平、新川優愛、黒川智花)が、次々と亡くなっていくという事件が発生し、それぞれが抱える衝撃の闇が明らかになっていく様を描いたもの。
徳重さんは、黒川智花演じる優美の夫で山梨県警の刑事部長・野瀬正役。裕福な家に生まれたエリートの刑事部長でありながら妻の浮気相手を執拗(しつよう)に付け狙う不気味なモラハラDV夫を怪演。1992年に放送された大ヒットドラマ「ずっとあなたが好きだった」(TBS系)で佐野史郎さんが演じた“冬彦さん”の令和版だとネットで話題に。
「いろいろ話題にしていただいたのはありがたかったですけど、自分では怪演しているつもりはなかったです。ただ、野瀬は、人として完全に屈折していましたよね。『気味が悪い』って言われましたが、それは狙い通りでした(笑)」
――野瀬は奥さんのことが大好きなのにかなりつらく当たります。そんなに好きだったら傷つけなきゃいいのにって思いますが
「そうなんですよ。愛情の裏返しにもほどがあるという感じですよね(笑)。最初に話を聞いた時は、『こういうのも来たか』といううれしさ反面、『そういう方向の認知のされ方をしているんだな』って。でも、ここを任せてもらえるんだなってうれしかったです」
――人物像のアイデアはご自分で?
「はい。この役に関して修正が入った記憶はないですね。初日から『その感じでお願いします』と言われた気がします。
いろいろ話題にしていただいたのはうれしかったのですが、収録の後半になると自分でも苦しくなってきて。心に闇を抱えている人を演じていると、自分もつらくなるものなんだなって思いました」
同時期に初めての朝ドラ出演となった連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(NHK)の撮影もあり、精神的に救われて心のバランスを保つことができたという。
「私が演じた破天荒将軍は、殺陣のシーンが多くて大変そうだなと思ったんですけど、ものすごく明るい感じのキャラなので楽しかったですね。殺陣のシーンもいい汗をかいて気持ち良かったですし、スカッとしました」
――朝ドラの(撮影)現場は独特だと言われていますが、いかがでした?
「大河ドラマとは、いい意味でまたちょっと違う独特の雰囲気がありましたね。朝ドラには出てみたいと思っていたので、ああいうちょっとしたゲストという立場ではありますけど、うれしかったですね」
私生活では、2014年に結婚。2016年に第一子となる女児が誕生してパパに。
「ちょうど娘が、物心がついた頃からクセの強いイヤミな役を演じることが多くなったので、なかなか見せづらくて。俳優だということは話していなかったんです。『下町ロケット』の役どころもまだ理解できないだろうから見せづらいなあって。
根暗でクセがかなり強いけど、実はその裏にちゃんとした優しさが実はあるとか、本当は人一倍仕事もちゃんとやっている人間なんだということを当時はまだ理解できないかなって」
――最初にテレビで徳重さんをご覧になった作品は?
「『カムカムエヴリバディ』です。時代劇の扮装をしているので、お父さんに似た人が出てきたけど、本人だと最初思ってなかったんですよ。『似た人が出てきた』って言うから『お父さんだけどね』って(笑)。
わかった時はうれしそうでしたね。『俳優だったの?』って、うれしそうにジーッと見ていました。あと2、3年して中学生ぐらいになったら、いくらでも見せられるんですけどね」
モラハラDV夫、悪徳政治家などクセの強い役どころも多くなった徳重さんだが、「僕の大好きな妻!」(フジテレビ系)では、漫画家のチーフアシスタント、映画「宣誓」(柿崎ゆうじ監督)では、ジャーナリストなど幅広い役柄に挑戦。次回は撮影エピソード、公開中の映画「ライフセーバー!」も紹介。(津島令子)
ヘアメイク:大沢香織



