「MEN’S NON-NO メンズノンノ」(集英社)の専属モデルとして人気を博し、「ハートに火をつけて!」(フジテレビ系)で俳優デビューした風間トオルさん。日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞した主演映画「わが愛の譜 滝廉太郎物語」(澤井信一郎監督)、映画「助太刀屋助六」(岡本喜八監督)、「はみだし刑事情熱系」シリーズ(テレビ朝日系)、「科捜研の女」シリーズ(テレビ朝日系)などに出演。映画「ライフセーバー!」(児玉宜久監督)、主演映画「おかえりの湯」(夏目大一朗監督)が公開中。(この記事は全3回の後編。前編と中編は記事下のリンクからご覧になれます)
■科学から推理して事件を解決するのが面白かった
2011年から「科捜研の女」シリーズ(テレビ朝日系)に出演。この作品は、科捜研(京都府警科学捜査研究所)の法医研究員・榊マリコ(沢口靖子)が、個性的な研究員たちとともに、法医、物理、化学、文書鑑定などの専門技術を駆使して事件の真相解明に挑む姿を描いたもの。
風間さんは、科捜研の化学担当・宇佐見裕也役。以前は国立航空科学研究所の技官として、航空及び空港テロに備えた爆発物および化学兵器の防犯・研究をしていて、狭き門の中途採用試験に合格して採用された。気象や海洋など航空安全に関わる知識も豊富。マリコのよきアドバイザー。
「僕はシリーズものが結構ありますけど、『科捜研の女』が一番長かったですね。科学から推理して事件を解決するというところが本当に面白くて。どんどん科学が進歩するので、それまで知らなかったようなことがいろいろ出てきて楽しみでした」
――沢口さんを始め、皆さんいろいろこだわって撮っていたと聞きました
「そうですね。科捜研というのは、やっぱりリアリティがないと嘘っぽく見えてしまう。だから、例えば、すごく大きな男の人の遺体をマリコがひとりで動かしたという設定になっていたことがあったのですが、女性がひとりで血だらけの男性の遺体を運ぶなんてできないんじゃないかなって。
それを見た人が嘘だと思うんじゃないかと思って、『誰かが一緒にやった方がいいんじゃないですか』とか、そういうことは言わせてもらったりはしていましたね」
――科捜研なので、セリフに専門的な用語が色々出てきて苦労されたのでは?
「専門用語は大変でした。こんな言葉は一生のうちに二度と使わないだろうなという難しい言葉がたくさんあったので、覚えるのはやっぱり大変で受験勉強みたいでした(笑)。暗記ですよね」
――セリフ覚えはいい方ですか
「どうですかね。物によりますけど、僕は結構難しいセリフを言うことが多いんです。弁護士とかね。ストーリーがあるファミリー的な会話とかは覚えやすいんですけど、専門用語が入るのは難しいです」
2014年、「相棒―劇場版III―巨大密室!特命係 絶海の孤島へ」(和泉聖治監督)に出演。ある南の孤島で起きた民兵死亡事故について杉下右京(水谷豊)と甲斐享(成宮寛貴)が現地で調査するうちに国家の陰謀と思惑が絡んだ騒動と事件に発展していく様を描いたもの。
風間さんは、防衛省防衛政策局次長補・綿貫孝雄役。甲斐享の父・峯秋(石坂浩二)とは、エルドビア大使館以来の旧知の仲という設定。
「防衛省の次長補でしたからね。これも結構難しいセリフがありました」
■韓国ロケは料理も美味しくて
2014年、「ラスト・ハネムーン」(フジテレビオンデマンド=FOD)に出演。この作品は、結婚15年目を迎え、離婚することになった夫婦の最後の旅行を描いたもの。
伊坂康平(風間トオル)と妻・久美子(鶴田真由)は、妻の最後の願いで韓国に2人で旅行することに。久しぶりの2人だけで過ごす時間だったが、康平の浮気相手・真里(鯉迫ちほ)が現れる。時を過ごすうちに、康平の心中にわき起こる悔恨の念。そして最終日、驚愕の展開に…。
――映画「きけ、わだつみの声」(出目昌伸監督)で惹かれ合う傷病兵と看護師を演じた鶴田真由さんと夫婦役。離婚することになっている夫婦の最後の旅行のはずが、面白い展開でした
「ありがとうございます。あれはよくできていると思いました。当時オンデマンドのドラマの走り、テストパターンみたいなものだと聞きました。真由ちゃんと共演も嬉(うれ)しかったですしね。
夫婦の最後の旅行ということで、タイトルがラスト・ハネムーン。自分の不倫が原因で別れることになったのに、こういう展開になるんだって(笑)。よくできていますよね」
――韓国ロケはいかがでした?
「1週間もいってなかったかな?結構撮影のスケジュールが詰まっていましたけど、楽しかったです。韓国は料理も美味しいですしね」
2016年、続編となる「ラスト・ハネムーン 2ndシーズン」が放送された。前作で康平は、浮気相手の真里と別れ、久美子と離婚しないことを決断したが、久美子は康平への不信感を拭えずにいた。二人は再び韓国を訪れ、前作の舞台となったホテルに宿泊するが、そこで従業員として働く真里と再会。苦悩することに…という展開。
「前作を撮った時には続編を撮ることは決まってなかったんですけど、聞いた時は嬉しかったですね。また真由ちゃんに会えるし、韓国に行けるって」
――後ろ姿を見て「からだのラインがいいな」なんて見ていたのが、元不倫相手というのがすごいですよね
「大丈夫か?って感じですけど(笑)。でも、それぞれみんなちゃんといいカタチになっているので、楽しんでもらえる作品になっていたと思います」
2015年、映画「ゆずり葉の頃」(中みね子監督)に出演。この作品は、夫である岡本喜八監督作品のプロデューサーを長年務めてきた中みね子(岡本みね子)さんのオリジナル脚本による初監督作品。
主人公は八千草薫さん演じる市子。海外勤務から戻った息子の進(風間トオル)がひとり暮らしの母を訪ねると、軽井沢に出掛けたという。市子は少女の頃に思いを寄せていた画家の宮謙一郎(仲代達矢)が描いた思い出の一枚の絵「原風景」の原画に触れたくて軽井沢で開催されている展覧会に向かっていた。そんな市子に思いがけない出会いが訪れる…というストーリー。
風間さんは、市子の息子・進役。戦後の貧しさの中で、着物の仕立てをしながら過ごした若き日の母が心に封印した思いは知らなかったが、旅に出た母を心配して後を追うことに。
「あの作品は、ちょっとフランス映画みたいなところがあるなと思いました。仲代さんと八千草さんが踊るシーンとか、涙が出ますよね。いいシーンだったなって思います。結局、自分が昔の絵のモデルの少女だったということ言わないんですよね。
大人な感じです。言っちゃえばそれまでなんだけど、言わない。仲代さんも八千草さんが帰
った後でそのことに気がつくみたいな…いいですよね」
――心配して駆け付けた風間さんと八千草さんが2人で歩いているシーンもとてもステキでほのぼのしました
「ありがとうございます。疑似ではあっても母の愛に触れ、素直に母がいたら良かったのにと思っている自分がいました。
あの映画は、岡本喜八監督の奥さんのみね子さんの初監督作品なんですけど、『みね子さん、監督をやったほうがいいですよ』って言っていたんです。
岡本監督のコンテとかを描いているのを見ていたので、みね子さんが監督をされたらやっぱりいいものを作るんだろうなと思って期待していました」
――オファーは監督から直接ですか?
「そうです。『今度映画撮るからね。出なさい』って(笑)。息子みたいに可愛がってくれていたので。ステキな作品だと思います」
■悪役を演じたことはあまりなかったが…
2016年、映画「インターン!」(吉田秋生監督)に出演。この作品は、優柔不断で自信のないヒロインが、学生向けのビジネス実践型プログラム「インターンシップ制度」を通して、成長していく姿を描いたもの。
大学3年生の川倉晴香(新木優子)は、親友の真希(岡本杏理)に誘われて、ある会社のインターンシップ説明会に行った帰り道、車にはねられそうになるが、説明会に行った会社の代表取締役・牧野(風間トオル)に助けられ、軽傷で助かる。
しかし、牧野は病院の集中治療室で目を覚まし、そこに死神を名乗る若い男(佐野岳)が出現。交通事故で死ぬ運命だった晴香を助けたことで、牧野が死ぬことになってしまったことを告げられる。晴香の未来を変えることで、牧野と晴香の命が助かると死神に教えられた牧野は、真希に憑依(ひょうい)して、晴香をサポートし、晴香の未来を変えることに…というストーリー。
――この作品も就職活動で集まった若者たちに企業や仕事についての説明会ということで専門的な用語がたくさん出てきましたね
「そうなんです。結構固い役が多いので、どうしても難しい用語が出てきますよね。普段は使わないような言葉が。憑依するのが女の人だったから、僕自身と彼女の要素の匙加減はちょっと考えました」
2021年、「科捜研の女ー劇場版−」(兼崎涼介監督)に出演。この作品は、これまで数々の難事件を解明してきた科捜研の面々が、現代科学では解けないトリックを操るシリーズ史上最強の敵に挑む姿を描いたもの。
京都・洛北医科大学で女性教授が転落死する事件が発生。科捜研のマリコたちは早速鑑定を開始するが、殺人の決定的な証拠は見つからず、自殺として処理されそうになる。そんな矢先、国内外の各地で同様の転落死が相次ぎ、捜査線上に天才科学者・加賀野亘(佐々木蔵之介)が浮上。衝撃の真相が明らかに…。
――東福寺で沢口(靖子)さん演じるマリコが飛び降りるシーンが印象的でした
「あのシーンは夜中の2時か3時ぐらいに撮っていたんですよ。それで、あれだけきれいに落ちてくるのですからマリコはすごいと思っていました」
2026年、1月には「おコメの女−国税局資料調査課・雑国室−」(テレビ朝日系)の第一話にゲスト出演。この作品は、脱税を許さない“東京国税局”の敏腕調査官が、悪徳脱税者を成敗していく様を描いたもの。
風間さんは、仕入先と結託して利益を圧縮し、過少申告を繰り返す会社の社長役で出演。口ひげ&ゆるやかウェーブヘアに、タートルとジャケットでスタイリッシュな姿が“イケオジ”と話題に。
――風間さんは、悪役のイメージはほとんどないですね
「2時間ドラマが全盛の時は、悪役もちょっとやったりしていましたが、あまりないので面白かったです。やっぱりダークな役のほうがやっていて面白いですね。友だちには悪役が向いているって言われるので興味はあります。猟奇殺人犯役とか。できるかどうかわからないけど、やってみたい気はします」
2月に公開された映画「テレビショッピングの女王 青池春香の事件チャンネル」(白川士監督)に出演。この作品は、テレビショッピングのレジェンドナビゲーターにしてカリスマバイヤー・青池春香(名取裕子)と、 “実演販売の女王”・長野吉江(友近)が、生放送の売上対決中、思いがけない殺人事件に巻き込まれ、事件の真相に迫っていく様を描いたもの。風間さんは、事件を担当する刑事・太田努役。
「名取裕子さんとも久しぶりだったので、すごく楽しい現場でした。今、2時間ドラマがほとんどなくなってしまったので、映画でというのはいいパターンですよね。2時間ドラマって起承転結が激しいからドラマチックじゃないですか。それが楽しい」
――2時間ドラマに飢えている人も多いですからね。お約束のシーンもあって嬉しかったです
「お約束の崖っぷちのシーンもありますからね。『待っていました!』と言う作品になったと思います。名取さんと友近さんとの息の合ったコミカルな掛け合いも面白かったですしね。こういう傾向が続くといいなと思っています」
現在、映画「ライフセーバー!」(児玉宜久監督)が公開中。この作品は、安全で美しいビーチやマリーナに与えられる国際環境認証制度「ブルーフラッグ」をアジアで初めて取得した、福井県嶺南地方の高浜町・若狭和田ビーチを舞台に、夢を持てず迷いの中にいた若者が、ライフセーバーの仕事と出会ったことで人生が大きく変わっていく様を描いたもの。
就職活動にまったく身が入らず、人生の行き先はおろか、生きる意味さえ見失い、孤独感と将来への虚無感に包まれていた大学3年生の大友勇輝(のせりん)は、夏休みを福井で過ごすことに。
ある日、溺れている人を助けようとして自身も溺れてしまい、「若狭和田ライフセービングクラブ」のメンバーに助けられ、無気力だった勇輝に変化が…というストーリー。
風間さんは、主人公・勇輝の伯父・嶋崎保男役。
「高浜町は初めてだったのですが、あんなに美しいビーチが日本海にあるとは思いませんでした。本当にきれいでモルディブみたいな感じだったんですけど、そんな海があることにびっくりして、毎日海に入っていました。
1週間くらい行っていたかな。僕は役所に勤めているという設定で、ライフセーバーじゃないから関係ないんですけど、撮影の邪魔にならないようにずっと海に入っていました。中学の時からサーフィンをやっていましたから、あれは入らずにはいられないですよね(笑)。
福井弁には苦労しましたけど、撮影は楽しかったですね。日本はライフセーバーが職業として成り立っていないということは驚きでした」
■公開中の主演映画で落語を披露!「大変でした(笑)」
現在、主演映画「おかえりの湯」が公開中。この作品は、東京染井温泉SAKURAを舞台に、記憶を失った正体不明の女性を雇った支配人と従業員たちが織りなす心温まる日常を描いたもの。
温泉の支配人・佐山(風間トオル)は、記憶を失い倒れていた正体不明の若い女性・桜(星乃夢奈)を温泉で働かせてあげることに。真摯な働きぶりの桜を見守りながら、宴会場での発表会に向けて趣味の落語に打ち込む佐山だったが、本番を前に桜が突然姿を消してしまう…。
「東京の巣鴨にこんな素敵な温泉があるとは思いませんでした。緑も多いし、中の作りも素敵で贅沢(ぜいたく)なところがあるんだなと思ってびっくりしました。行ってみたくなりますよね」
――風間さんは、落語が趣味の優しいオーナー役
「そうなんですよ。それがまた大変でした(笑)。落語を聞くのは好きなんですよ。でも、まさか自分が落語をやるとは思ってなかったんですけど、やってみたらすごく大変で。
その役になりつつ、自分が喋(しゃべ)る時は真正面で喋って、それで、誰の時は右で、誰の時は左で喋るとか、そういう切り返しをやりながら動作もするし、セリフもそれなりに覚えなきゃいけないじゃないですか。
『あれ?この人の時はどっちを向いたんだっけな?』とか、考えながらやっているとわからなくなるので、何も考えずにできるようになるのは本当に大変でした。
落語家の方は、落語のお話をひとつ作り上げるのに何カ月もかけて作っていくらしいんですよね。でも、僕は1週間ぐらいしか撮影まで時間がなかったんです。だから、現場で違うシーンを撮っていても、終わったらすぐに頭の中で落語が回っている感じでした。『巣鴨の狐』が(笑)」
――大変だったんですね。やり慣れている感じに見えたので、初めてだとは思いませんでした
「全然慣れてないです(笑)。最初はカットを割って、ある程度どこかで切って撮るのかなと思っていたんですけど、監督がクランクインの1週間ぐらい前に『最初から最後まで全部通しでいきたいんです』と言われたので、1週間の間にバーッと動いたという感じです」
――ファンタジーの要素もあって癒されますね
「下町の感じもありながら、ほのぼのしたストーリーですよね。昔からの情に溢(あふ)れた人々との触れ合いの中、月の綺麗な夜にやって来る女性のファンタジーもあって。とてもじんわりホッコリさせられる映画です。落語のシーンもぜひ見て欲しいですね」
――今後はどのように?
「基本的には、スケジュールが合えばやらせていただきますけど、これまでやったことがないような役もやってみたいですね」
幼少時からの壮絶な過去を微塵(みじん)も感じさせない穏やかで優しい雰囲気がカッコいい。器の大きさを感じる。“イケオジ”としての今後も楽しみ!(津島令子)
ヘアメイク:岩本郁美




