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2026年8月5日 18:37

東野圭吾さんの秘話が次々と…「驚かせるのが大好き」歴代編集者4人が明かす、ファン感涙の作品の裏側【トークイベント詳報】

東野圭吾さんの秘話が次々と…「驚かせるのが大好き」歴代編集者4人が明かす、ファン感涙の作品の裏側【トークイベント詳報】
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7月に68歳で亡くなった作家・東野圭吾さんの代表作「ガリレオ」シリーズの最新作「永遠の記憶」発売記念イベントが、東京・新宿区の紀伊国屋書店新宿本店で行われた。事前に申し込んだファン50人が8月5日午前0時の発売の瞬間をカウントダウンして迎えた。

10秒前、9、8、7、6… 午前0時を迎えた瞬間、集まったファンは声をふり絞って「ありがとう!」と叫んだ。嬉しさと寂しさが滲んだ声だった。

集まったファンは列を作り、東野さんの歴代担当編集者から待望の新刊を受け取った。

東野さんへの思いを告げ、涙するファンもいた。思いが込み上げ、涙する担当編集者の姿もあった。

4日午後10時半。発売に先だってガリレオシリーズ歴代の担当編集者4人が秘話を語るイベントが行われた。冒頭、あいさつに立った秋月透馬さんはこう語った。

「東野さんは、日本中の読者に愛された作家だったと本当に心の底から実感しています。東野さんは、読者を驚かせることが何よりも大好きな作家でした。ですので、読者と本が出会う書店という場所をとても大切にしておられました。だからこそ、今日の日を心待ちにしておられたと思います」(秋月さん)

その言葉に、目頭をぬぐうファンの姿もあった。

文藝春秋の歴代編集者たち
文藝春秋の歴代編集者たち

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東野圭吾さんとの出会い…「秘密」の秘話

文藝春秋で初めて東野さんとタッグを組んだ、当時の編集者・花田朋子さん。最初にお願いした作品は「ガリレオ」ではなかった。

「東野さんが最初に提案してくださったのが、『母と娘が一緒に事故にあって、その死んだお母さんの心が娘に宿ってしまって、その夫が右往左往するというアイデアがあるんだけど、いろんなところに話をしてみたんだけれど、どこもあまりいい顔をしないというか、いや東野さんは本格ミステリーでしょと言われ、あんまりいい返事をもらったことがないんです』ということだったので、私はすごいファンタジックな設定が好きだったので、ぜひそれをうちで書いていただきたいというふうにお願いして、それが『秘密』という長編になりました」(花田さん)

花田朋子さん
思わぬ提案を受けた花田朋子さん

1996年には月刊小説誌「オール讀物」の短編「燃える」にガリレオと称される天才物理学者・湯川学が初登場。その後「探偵ガリレオ」が単行本として発売された。

「まさか探偵ガリレオがここまですごいことになるとその時は全然思っていなかった」(花田さん)

幻のタイトル「容疑者Xの苦悩と献身」

直木賞に輝き、福山雅治さんが主人公・湯川学を演じて映画化もされた空前の大ヒット作「容疑者Xの献身」についても東野さんとの秘話が明かされた。編集担当は、引き続き花田さん。

物理学者の湯川が対峙する数学者のライバルのコードネームとして、当初、編集担当と東野さんの間では「容疑者コペルニクス」としていた。しかしその後、コペルニクスは数学者ではなく天文学者なので変だと気がついた。

タイトルにも秘話があった。

「連載時は『容疑者X』というタイトルで連載してました。書籍にするときに『容疑者X』だけだと若干そっけないかなっていうのもあって、東野さんからは、このとき2つタイトル案をいただきました」(花田さん)

ひとつが「容疑者Xの献身」、もうひとつが「容疑者Xの苦悩と献身」だったという。花田さんは即決で「献身」を選んだ。

しかし、東野さんには「容疑者Xの苦悩と献身」に未練があったようで、その後の作品タイトルを「ガリレオの苦悩」とし、無事回収できたようでしたと花田さんは笑顔で明かした。

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「東野さんが止まった」クビを覚悟した瞬間

歴代編集者の一人、中本克哉さんは、東野さんとの打ち合わせでクビを覚悟した瞬間があったことを明かした。

クビを覚悟した中本克哉さん
クビを覚悟した中本克哉さん

ガリレオ過去10作のタイトルを解説してそれをキャッチとして帯に使いたいと東野さんに打診する際、本来「自己解題的キャッチ」とするところを、紙資料では間違えて「自己改題的キャッチ」としてしまった。

紙資料に目を通した東野さんとのやり取りを、中本さんは苦笑いしながら振り返った。

「(東野さんに)『これってタイトル変えろっていうこと?』というふうに言われて、ちょっと一瞬分からなかったんですけど、自分の手元のペーパーが改めるになっていて、これは終わったなと」(中本さん)

担当をクビになっても仕方がないと思ったそうだ。しかし、東野さんの発した言葉は意外だった。

≪いや、ちょっと待って、これは面白いよ≫

中本さんは東野さんの優しさに感謝したという。

伝説のやり取り「大丈夫、絶対外れてるから」

担当編集として「トリックを見破った」と東野さんにぶつけることもあったというエピソードを明かしたのは秋月透馬さん。

大胆推理を披露した秋月透馬さん
大胆推理を披露した秋月透馬さん

東野さんの連載があまりにも面白くて「トリックはこうに違いない」という思いがあふれてしまい、東野さん本人に何度もぶつけたことは、文藝春秋の社内で「伝説」になっている。

ミステリーの第一人者はこう応じたという。

「どれどれ、言ってみたら?」(東野さん)

「いや、 絶対言えません」(秋月さん)

「大丈夫、絶対外れてるから」(東野さん)

こんなやり取りを毎回繰り返していたと、秋月さんは懐かしそうに語った。

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「軽率にクリックしたら…」東野さんの口癖通り?

最新作「永遠の記憶」はガリレオシリーズの11作目となる長編ミステリーだ。

実は当初、今作品について編集者は「短編」のつもりで東野さんと話を進めていた。

原稿が届いて驚いた内藤淳さん
原稿が届いて驚いた内藤淳さん

担当編集の内藤淳さんは、東野さんから原稿が届いたときの状況を明かす。

「部屋にいるときに原稿をいただいたので『あ、短編が来たんだ』と思って、軽率にクリックしたら、いつまで経っても読み終わらない。でもこれ、すごい先が気になるんで、そこから動くこともできなくて、ずっとなんかその場で読み続けて。気付いたら2時間超えているみたいな感じの。本当にすごい作品をいただきまして」(内藤さん)

ふたを開けてみると「長編」だった。

プロジェクトは急きょ変更になり、内藤さんが「最高傑作」と呼ぶ「長編」が世に出た。

このエピソードを、歴代編集者は皆、さもありなんと、うなづいて聞いていた。

東野さんの口癖があったからだ。

《読者を驚かせるには、編集者から》

読者を驚かせることが大好きな作家。

日本中の読者に愛された作家は、最初の読者である編集者にも大いに愛されていた。

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