「釣りバカ日誌〜新入社員 浜崎伝助」(テレビ東京系)、連続テレビ小説「わろてんか」(NHK)などコメディエンヌとしても高く評価されている広瀬アリスさん。2019年には、「アナザースカイII」(日本テレビ系)でMCに初挑戦。大河ドラマ「どうする家康」(NHK)、「366日」(フジテレビ系)、「全領域異常解決室」(フジテレビ系)など話題作に立て続けに出演。現在、声優をつとめたアニメーション映画「トイ・ストーリー5」(アンドリュー・スタントン監督)が公開中。10月2日(金)には、主演映画「沖晴くんの涙を殺して」(矢崎仁司監督)の公開が控えている。(この記事は全3回の後編。前編と中編は記事下のリンクからご覧になれます)
■元カリスマヤンキーから殿の側室に
2021年、映画「地獄の花園」(関和亮監督)に出演。この作品は、平凡なOL・田中直子(永野芽郁)が働く職場に元カリスマヤンキーの北条蘭(広瀬アリス)が中途採用されたことから始まった、OLたちによる派閥争いを描いたもの。
――圧倒的なケンカの強さを誇る元カリスマヤンキーということで乱闘シーンが多かったですね
「あれだけ暴れてからだがアザだらけになった作品は初めてです(笑)。『当てていいよ』って共演したみんなにもお伝えしていましたし、当ててほしいので『どうぞ』ってガチ喧嘩みたいな感じでした」
2023年、大河ドラマ「どうする家康」(NHK)に出演。広瀬さんが演じたのは、瀬名(有村架純)亡き後、苦しい状況が続く徳川家康(松本潤)を支えた側室・於愛(おあい)の方。慈愛に満ちた明るい性格で、家康が苦しい状況に置かれている時でも救いになる存在。
極度の近眼のため、家康だと気がつかず、間違えてお尻を思い切り叩いて怒ってしまうという印象的なシーンで登場。
「初めての大河で緊張したんですけど、意識的にあまり考えすぎないようにしていました。
そうじゃないと、いらないことまで考えて悩んでしまうので。でも、皆さんとても優しかったです。
殿も『途中から入るのはすごく難しいことだから、本読みしたほうが楽じゃないですか?』と声をかけてくださって。細かな気遣いもしてくださいましたし、セリフでやりづらいところがあったら何度も確認してくださって。本当についていきたいと思う殿で、とても楽しい現場でした」
――登場の仕方からユニークでしたね
「殿のお尻をバチーンですから、キュートで面白いなって思いました(笑)。顔が濃いから時代劇はあまり縁がないかなと思っていたので、出られることになってとても嬉(うれ)しかった。いろいろな資料を読んで役作りをしていく過程も楽しかったです」
――周囲をパッと明るく照らす太陽のような存在ですが、実は苦労人で…という過去も描かれていましたね
「そうですね、実は夫を戦乱で亡くし、幼子を連れて側室となった苦労人だったことも明かされていて。家康を描く際に、於愛の方が出てくる理由というのが、お人柄にすごく詰まっているなと思いましたし、出身が静岡で地元なのでご縁を感じました」
――困っている民に食べ物を分けてあげたり慈愛に満ちていて、亡くなった時に弔問に訪れる民が絶えなかったというのがよくわかりますね
「そうですね。食べ物や衣服を与えたり、愛をすごく与えるからこそ、たくさんの人に愛されている。愛にあふれた方だなって。殿にとっても、自分のことを一番理解していて何があっても絶対的な味方でいるし、心の支えになっている。懐の深さを感じました。於愛の方を演じることができてとても幸せでした」
■大人になってからの恋愛ドラマは…
2024年、「366日」(フジテレビ系)に主演。この作品は、HYの大ヒット曲「366日」の世界観を基に高校時代に実らなかった恋を叶えるため奮闘する男女が、予期せぬ悲劇に直面しながらも、愛する人を想い続ける姿を描くラブストーリー。
音楽教室で働く雪平明日香(広瀬アリス)は、高校時代に恋していた水野遥斗(眞栄田郷敦)と再会し、交際を始めることに。しかし、その矢先に遥斗は意識不明の重体になるという悲劇が訪れる。3カ月後、遥斗は目を覚ますが、記憶障害に…という展開。
「20代の時は、王道の学園ものや恋愛ドラマのヒロインをやりたいと思っていたのですが、大人になってからは嬉しい反面、ちょっと気恥ずかしい。
あまり過去の自分のこうなりたかった、ああなりたかったとか、執着だったりとかはないです。いただいたお仕事を全力でやるということが自分のやるべきことだと思ってやっています」
――28歳と16歳、2つのパートを演じることはいかがでした?
「ヘアスタイルとか表情など見た目には気をつけました。見た目が変わるだけで距離感や、しゃべるペースは自然と変わっていくだろうと思ったので、演じながら考えていました。
このドラマをやったことによって、“人を愛する”ということはどういうことなんだろうと改めて考えさせられました。『366日』は自分の大好きな曲ですし、本当にいい歌だなあって思いました」
2024年、「連続ドラマW 完全無罪」(WOWOW)に主演。このドラマは、21年前に香川県で起きた少女誘拐殺人事件「綾川事件」の再審請求の行方を描いたもの。
「綾川事件」で無期懲役囚となったが、冤罪を主張する平山(北村有起哉)の担当になった弁護士・松岡千紗(広瀬アリス)。「綾川事件」発生当時、同一犯によるものとみられる未解決の少女誘拐事件が他に二つ起きており、その中で唯一生還した少女が千紗だった…。
――21年前に自分を殺害していたかもしれない平山と向き合いながら、千紗は真相追求に奔走することになります
「そうですね。『誰が味方で誰が敵なのか』、『何が真実なのか』、『人を信じ抜くとはどういうことなのか』、いろいろ考えさせられました。それと、真実より大事なことがあるということも、千紗を演じて思いました」
2024年、「全領域異常解決室」(フジテレビ系)に出演。この作品は、超常現象として世間を騒がす不可解な事件を、内閣官房から直接要請を受け解決に導く「全領域異常解決室」、通称『全決(ゼンケツ)』のメンバーが解決していく様を描いたもの。
広瀬さんは、全決へ出向を命じられた警察官・雨野小夢役。全決でさまざまな事件を解決していくうちに、自分が天宇受売命(アメノウズメノミコト)の魂が人間に宿ったものであることを自覚することに。
「最初お話を伺った時は、『超常現象の事件って何?』という感じで意味がよくわからなかったんですけど、台本を読んで、映像化したら絶対に面白いと確信しました」
2027年には、劇場版が2作連続公開されることも決定している。
■余命1年を宣告されたヒロイン役に
10月2日(金)より最新主演映画「沖晴くんの涙を殺して」が全国公開される。この作品は、末期の乳がんを患い余命 1 年を宣告された音楽教師が故郷に戻って過ごす日々を描いたもの。
余命1年を宣告された踊場京香(広瀬アリス)は、治療しないことを選択し故郷に戻り母校の合唱部の指導をすることに。そこでいつも笑顔を絶やさないのにクラスメイトから“死神”と呼ばれている不思議な高校生・沖晴(木戸大聖)と出会う。
津波で家族を亡くしたことを笑いながら話す沖晴は、津波に流された時に死神と取引して喜び以外の感情「嫌悪・怒り・哀しみ・恐れ」を失うことで命が助かったのだという。しかし、ある事件をきっかけに失われた感情の一つが顔を出し始め、余命わずかな京香と、感情を失った沖晴の感情を取り戻す不思議な日常が始まる…。
「年齢的に、自分が仕事ばかりだけの人生だと、このままだとまずい。プライベートにちょっとフォーカスを当てないとモヤモヤして過ごすことになるから、自分の心の充実のさせ方とかを変えないといけないなと思っていた時期に『沖晴くんの涙を殺して』のお話をいただきました。
ちょっと状況は違いますけど、私が演じた踊場京香は、余命宣告されたことで全てを捨てて、故郷に帰って穏やかに残された日々を過ごそうとする。私もそういう新しいスタートを切りたいと思っていた時期だったので、状況は違いますけど、ちょうどいいタイミングでした。
それと、沖晴くん役がすごく上手で魅力的な役者さんだと思っていた木戸大聖さんだとお聞きしたので、木戸さんとだったらぜひやりたいなって思いました」
――沖晴くんは、家族を亡くした悲しみを処理するために、自分の中に死神を作り上げたのかなと思ったら、不思議な治癒力があって事実なんだなって
「不思議な感覚が残りますよね。最初台本を読んだ時はファンタジーの要素が強い作品なのかなと思ったんですけど、読み終わった後に私が感じたのは、ものすごく人間臭いドラマだなと思いました。
綺麗事が全く描かれていないというか、強がる時は強がるけど、その強がりが崩壊してブレブレに揺れる心もあるし、ものすごく人間やっているなと思って。
沖晴くんが感情を取り戻す日常が始まるわけですけれども、自分が感情を爆発させたことに対して嫌悪感を持ったり、さらに上乗せで感情がまた戻って来たり…すごい人間ドラマで、人間の弱いところを全部出している作品だと思います。
自分のダメさとか、自分の弱さとか、そういったものをさらけ出しちゃった方がいいんだなって演じながら思いました」
――ヒロインと同じような状況だったら広瀬さんはどのように?
「同じように余命を宣告されて、手の打ちようがないってなった時は、自分のために全ての時間とお金を全部使います。お葬式費用だけ残して。でも、人の役にも立ちたい自分もいるかな」
――子ども支援活動や「読み聞かせプロジェクト」などもされていますね
「母が昔、NHKでパラリンピックの仕事をさせていただいていて、もともと福祉に興味があったので、自分にできることはやろうと思っています」
この作品を見た時に、やっぱり日々の当たり前の幸せになかなか気づけないんだなって思って。私もそうです。当たり前にご飯を食べて、洗濯も乾燥機までかけて、冷房をつけたら涼しくなるし、暖房をつけたら暖かくなるというのが普通だと思っているじゃないですか。
でも、海外に行った時とかに、それが普通じゃなくて不便なものがあるというか、キャンプもそうですけど、当たり前だと思っていたことに対して、幸せだと思える。
私が演じた京香もそうですけど、今日1日をどう生きるのか、どう楽しく自分を満足させられるかみたいなことを、改めて考えるようになりました。何となく生きているというのはもったいないなって思って。
やりたいことがたくさん出てくるかもしれないし、いろんな経験をしたら、そこでまた新たな出会いがあると思うし、どんどん世界を広げていきたいなと思っています」
愛犬家としても知られている広瀬さん。現在3匹のワンちゃんと暮らしているという。
「ワンちゃん3匹がいるから仕事も頑張れているし、早くおうちに帰りたいと思う。どんなに疲れていても癒されます。夜更かししても朝早く起きてやらなきゃいけないことがたくさんあるから、朝から動いてご飯をあげて遊ばせてあげて…という感じで結構忙しい。
でも、まだ元気なうちにいろんな景色を見せてあげたいし、色んな経験をさせてあげたいと思っているので、その子たちのためにも、もう少しプライベートを充実させなきゃなと思ったりしています。ずっと仕事をし続けて来て、20代は駆け抜けた感じがしているので」
多忙な中、少しでも時間があると車を運転してワンちゃんたちとソロキャンプにも出かけているというから行動的でカッコいい。ワンちゃんたちの話になると一際瞳がキラキラ輝いていたのが印象的。愛を感じる。(津島令子)
ヘアメイク:会川敦子
スタイリスト:椎名倉平
衣装提供 リブニット:Little Suzie(リトルスージー)
デニム:Japan Blue Jeans(ジャパン ブルー ジーンズ)