2009年、10歳の時に(東京)原宿でスカウトされたことがきっかけで芸能界デビューし、キュートなルックスで注目された葵わかなさん。同年、「サムライ・ハイスクール」(日本テレビ系)で俳優活動をスタートし、多くのドラマ、映画に出演。2017年、連続テレビ小説「わろてんか」(NHK)でヒロイン役に抜擢されて話題に。「おいち不思議がたり」(NHK)、「ホンノウスイッチ」(テレビ朝日系)、「すべての恋が終わるとしても」(テレビ朝日系)など主演作も多数。11月13日(金)に映画「2126年、海の星をさがして」(金子修介監督)が公開される葵わかなさんにインタビュー。(この記事は全3回の前編)
■10歳で初めてのCM撮影「とても楽しくて(笑)」
神奈川県で生まれ育った葵さんは、小さい頃から読書が好きだったが、自然に触れて木に登ったり、夏休みは毎日近所の川に入って遊ぶような元気な子どもだったという。
――スカウトされた時のことは覚えていますか?
「はい。何となく覚えています。大人の方が付いてくるなって。親と一緒にいたので、親が声をかけられてちょっと立ち話みたいになったんですけど、原宿だったので、ものすごい人通りだったんですね。そこで立ち止まって話すということが、すごく恥ずかしかった記憶があります」
――芸能事務所からのスカウトだと聞いた時はどう思いました?
「あまりよくわかってなかったです。もともと母親から『どこかのオーディションを受けてみない?』と言われていて。その日はオーディション用の写真を撮りに原宿に行っていたので、『撮った写真と履歴書は使わなくていいってことなんだ』みたいな感じかな(笑)」
――まだ10歳でしたが、芸能界に興味はあったのですか?
「今思うと、スカウトしていただいて入った時は、まだ何もわかってなかったと思います。実際にオーディションを受けたり、お仕事の現場に行かせていただけるようになって少しずつ意識が変わってきたという感じです」
葵さんは、スカウトされて事務所に入って約1週間後、テレビCMのオーディションに合格。鹿児島で撮影することに。
「両親が共働きで鹿児島に行けなかったので、女性のマネジャーさんと2人で行くことになってお泊まりして。当時、両親が結構出張が多かったので、『私も出張だね』って言ったのをすごくよく覚えています(笑)。
当時、私は人見知りがすごくて、マネジャーさんとはほぼ初対面だったので緊張しました。
空港までお父さんが送ってくれて、そこでマネジャーさんと二人になったのですが、エスカレーターで登っていく時にすごく寂しくて。
でも、鹿児島に行ったら楽しくて(笑)。すごく褒めてくれるし、普段乗らない軽トラックに乗れたりとか。霧島の清流の中で撮影したので、裸足で入ったり、霧島神社の近くの黒豚を見せてもらったり…ちょっと旅行気分みたいな感じでした。
最初はすごく不安だったのですが、最終日には『明日も撮影したい』って言っていた記憶があります」
――ホームシックになることもなく?
「はい。楽しくてしょうがなかった気がします。子どもひとりだったから、スタッフの皆さんも本当に優しくしてくださって。のびのびと楽しくやらせていただきました」
■中学校の大切な試験日に仕事を選んだことが、俳優を続けてゆく思いのきっかけ
スカウトされた年に「サムライ・ハイスクール」(日本テレビ系)で俳優デビュー。この作品は、冴えない草食系高校生・望月小太郎(三浦春馬)に同姓同名の戦国武将・望月小太郎の魂が宿るようになり、学園に巣食うさまざまな難問を解決していく様を描いたもの。
葵さんは、杏さん演じる小太郎の小学校時代からの幼なじみ・永沢あいの幼少期を演じた。
「当時、私はショートヘアだったんですけど、杏さんがロングヘアだったので、三つ編みのつけ毛をやっていただいたのが印象的でした。ただ、人見知りが激しくてセッティングができるまでのロケバスの中では、緊張していました」
葵さんは、当時はまだ小学生だったため、学業優先でオーディションは週末、夏休みや冬休みにドラマ、映画などの撮影を行っていたという。
「中学校2年生の時に、中学校3年生の成績に響くテストと撮影の日が重なってしまって。テストに出られなかったのが、自分的にはこの先もこの仕事をしていくんだろうなって思ったきっかけでしたね」
2013年、映画「陽だまりの彼女」(三木孝浩監督)に出演。この作品は、かつていじめられっ子だった真緒(上野樹里)と10年ぶりに再会した幼なじみ・浩介(松本潤)の恋を描いたもの。やがて結婚を決意するが、真緒には誰にも知られてはいけない秘密が…という展開。葵さんは、真緒の中学生時代を演じた。
「あの作品もテストの時に撮影した仕事と同じ時期のオーディションで決まったこともすごく大きかったですね。それまでで一番セリフがある役だったし、私は少女時代でしたけど、リハーサルも1カ月以上、大人の松本潤さんと上野樹里さんと一緒にしっかりやらせていただけて。
私は本当に演技初心者だったけど、三木監督が寄り添って熱心に指導してくださって。初めて役作りについてすごく悩んだんですよ。『お芝居って何なの?』って。何を言われているのかわからないみたいな感じで、本当にご苦労とご面倒をおかけしたなって思います。
でも、この作品と出会ったことで、もっとお芝居がやりたいと思うようになりました。撮影の難しさや、完成した作品をスクリーンで見たときの衝撃は、いまでも忘れられません。自分の演技は課題ばかりでしたが、『もっと上手くなりたい』と心から思ったんです。私にとって大事なターニング・ポイントになった作品です」
2014年、映画「瀬戸内海賊物語」(大森研一監督)に出演。この作品は、かつて実在した瀬戸内の海賊「村上水軍」の子孫にあたる子どもたちが、島の危機を救うため、伝説の財宝を探し奮闘する姿を描いたもの。
戦国時代最強と言われる海賊大将軍の村上武吉の血を引く楓(杏花)は、瀬戸内の島民にとって生命線ともいえる島と本土を結ぶフェリーが路線廃止の危機へと追い込まれていることを知り、島を救うために仲間とともに埋蔵金探しをすることを決意するが…。
葵さんは、オーディションで1000人以上の応募者の中から主要キャストのひとり・宮本愛子役に。友だちがいない自分と楓を比べて嫉妬して冷たく接していたが、埋蔵金探しを経て友だちになる。
「公開は『陽だまりの彼女』より後でしたが、撮影自体は、この映画のほうが前だったんです」
――愛子は造船会社の社長の娘で、ちょっと浮いた存在でしたが、財宝探しをすることで仲間になっていく。舟を漕ぐシーンは大変だったのでは?
「実際に瀬戸内海の渦潮のところで撮影したので、かなり大変な一日でした。『今日は海の上で撮影です』と言われて、結構リハーサルをした記憶があります。
舟の漕ぎ方も指導を受けて練習したので、みんな何となくはできるようになっていましたね。夏休みの1カ月間ずっと小豆島で毎日合宿のような感じでした。(楓役の)杏花ちゃんと同い年で同部屋だったんですけど、一つの部屋で寝たり起きたり、ご飯食べたりして合宿でしたね。楽しい思い出もいっぱいです」
――コンスタントに作品が続いていますが、ご自身としていかがですか?
「とにかく目の前のことに必死だったので、仕事が続いているなとか感じたことはないですね。やっぱり作品だったり役に出会えるかどうかなので。オーディションを受けていた時代もそうですし、今もそうですね。次の出会いをずっと考えているから、実はすごく近い未来のことまでしか考えられていないのかな」
■映画初主演はホラー「撮影現場がいわくつきの場所で…」
2016年、「女優堕ち」(BS朝日)でテレビドラマ初主演。同年、映画「ホラーの天使」(長江俊和監督)で映画初主演を果たす。
この作品は、スタジオとして使用されている廃校に映画の撮影に訪れた2人の女優、ダンスレッスンに励む3人組のアイドル、漫才のネタ合わせに没頭するお笑いコンビの7人が行方不明になったという女子高生の事件をきっかけに様々な怪奇現象に見舞われていく様を描いたもの。
「主演だと聞いて『大丈夫かな?』という気持ちと、子どもながらにというか、『もっとセリフが喋りたい』とか、『もっと現場にいたい』という思いはすごくあったので、主人公は一番セリフもあるし、ずっと現場にいられる嬉しさがすごくあって。それこそプレッシャーとかはあまり感じてなかったような気がします」
――怖かったでしょうね
「怖かったです。撮影現場がちょっといわくつきの場所だったので、現場に行く前にスタッフさんにお清めの塩をかけられたこともあって。でも、共演した恒松祐里ちゃんは友だちだったので、楽しくというか、何とかやり切ったみたいな感じです」
――劇中では2人の関係が微妙ですよね。お互いに対する複雑な思いが溢(あふ)れ出してドア1枚隔てて閉じ込める側と閉じ込められる側に
「せめぎ合いみたいな。あそこのドアのところが一番いわくがあった部屋だったので、本当に怖かったというイメージが強いです。建物自体が見ていて怖い。
しかもフェイクドキュメンタリー形式ということで、ビデオカメラは私たちが回していたんです。段取りだけスタッフさんが見ていて、そこから10分ぐらい私たちだけになるんです。地下だったんですけど、スタッフさんがみんな上のフロアに上がっちゃって。
だから本当に2人で肝試しをしているみたいな感じでした。悲鳴やカメラ映像のブレとかも本当にリアルで。悲鳴上げても降りてきてくれないんです(笑)」
――最終的にかなり怖い作品が出来上がって
「見る側としては、ホラー作品はすごくたくさん楽しませてもらってきたけど、ああいう照明だったり、撮り方とか角度ひとつとってもホラーはすごく技術がいるので勉強になりました。『沖縄国際映画祭』にも行かせていただいて。映画祭に行くのは初めての経験だったので、いい思い出として残っています」
2017年には連続テレビ小説「わろてんか」に出演。吉本興業の創業者で女性興行師でもある吉本せいさんがモデルのヒロイン役を演じて話題に。映画「サバイバルファミリー」(矢口史靖監督)、「年の差婚」(MBS/TBS系)、「教場」(フジテレビ系)など話題作出演が続く。次回は撮影エピソードなども紹介。(津島令子)
※葵わかな(あおい・わかな)プロフィル
1998年6月30日生まれ。神奈川県出身。2009年、10歳で芸能界デビューして以降、ドラマ、映画、舞台、CM、ナレーションなど幅広く活動。2017年に連続テレビ小説「わろてんか」でヒロイン・藤岡てん役を演じ、2019年にはミュージカル「ロミオ&ジュリエット」で初舞台&初ミュージカルに挑み、同年、第43回エランドール賞新人賞を受賞。「おいち不思議がたり」(NHK)、「ホンノウスイッチ」(テレビ朝日系)、「すべての恋が終わるとしても」(テレビ朝日系)など主演作も多数。11月13日(金)に映画「2126年、海の星をさがして」の公開が控えている。
ヘアメイク:石川奈緒記
スタイリスト:岡本純子



