京都芸術大学在学中に出演した映画「正しく生きる」(福岡芳穂監督)、映画「赤い玉、」(高橋伴明監督)で注目を浴びた上川周作さん。連続テレビ小説「まんぷく」(NHK)では泣き虫の“ナギくん”、大河ドラマ「西郷どん」(NHK)では西郷隆盛の末弟・西郷小兵衛役など印象的な役柄を演じて話題に。現在、放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」(NHK)、配信中の「俺のこと、なんか言ってた?」(Netflix)に出演。11月13日(金)に映画「2126年、海の星をさがして」(金子修介監督)の公開が控えている。(この記事は全3回の中編。前編は記事下のリンクからご覧になれます)
■朝ドラのロン毛のヒッピーファッションは…
京都芸術大学卒業後、事務所に所属し、テレビ、映画、舞台に出演することに。2016年、連続テレビ小説「べっぴんさん」(NHK)に出演。
この作品は、戦後の焼け跡の中、娘のため、女性のために、子ども服作りにまい進し、日本中を元気にかけぬけていくヒロイン・すみれ(芳根京子)とその家族、そして、彼女の仲間たちが夢へと向かう様を描いたもの。上川さんは、すみれが共同創業者である子ども服メーカー・キアリスの新入社員・阿部靖夫役。
「朝ドラの『べっぴんさん』に出させていただいたことは、大きなきっかけだったと思います。出演が決まった時は実感があまりなくて。初の朝ドラ出演で、とにかく緊張していました。
だけど撮影に入ったらスタッフ皆さんがすごく仲良くしてくださって…。毎日現場に行くのが楽しくて。自分の居場所を作ってくださったように感じました」
――初めての朝ドラの撮影はいかがでした?
「まだ芝居の世界に入ってそんなに経っていなかったので、とにかく与えていただいた役を丁寧に演じようということに必死になっていた時間だったと思います」
2018年、連続テレビ小説『まんぷく』に出演。この作品は、インスタントラーメンを生み出した日清食品(現・日清食品ホールディングス)創業者夫妻の半生をモデルに、懸命に生き抜いた夫婦・福子(安藤サクラ)と萬平(長谷川博己)の物語を描いたもの。
上川さんは、福子の義兄である画家・香田忠彦(要潤)の弟子で泣き虫な“ナギくん”(名木純也)役。ヒッピー風のファッションに胃のあたりまで届く長髪で登場。通っていた美術大学に忠彦が臨時講師として来た際に知り合い弟子入りするが、傷つきやすく涙もろい性格で、忠彦から芸術の方向性について指摘を受けた際には泣きながら飛び出して行ってしまう…。
「『こんなに泣けるかな?』って本気で悩んでいたんですよ。そうしたら、『止められるか、俺たちを』(白石和彌監督)という映画で共演した毎熊克哉さんが『まんぷく』の現場で『面白い役だね』って言ってくださって。
その時に初めて『ナギくんは、面白い役なんだ』と。客観的な視点を毎熊さんがくださって…助けていただいたなって今でも思います」
――面白いキャラでしたね。本当によく泣いていて『泣き芸』と話題になりました
「そうですね。出るたびに泣いていましたから(笑)」
――ヒッピー風のファッションに胃のあたりまで届く長髪姿も強烈でした
「あの時のヒッピーの格好は、大学時代の兄貴と全く一緒なんですよ(笑)。ロン毛でずっと絵を描いていたので、ある意味兄貴からインスパイアされたというか。ちょっと真似(まね)をした部分もあります」
――ナギくんは、とてもナイーブで、「まんぷくヌードル」の売れ行きが伸びないことに責任を感じたりします
「本当にナイーブでしたね。僕自身もそんなにポジティブな人間じゃないので、カットがかかった後、ちょっと見られなかったです。
ただ、今、『豊臣兄弟!』でもご一緒している渡邊良雄さんがチーフ監督で入られていて、ケラケラ笑ってくださって。信じられる旗印みたいなものをくださいました」
■大河ドラマで西郷隆盛の末弟役に!
朝ドラ「まんぷく」と同じ2018年、大河ドラマ「西郷どん」に出演。この作品は、貧しい下級武士の家に育った西郷隆盛が波乱の生涯の中で「革命家」へと覚醒し、やがて明治維新を成し遂げ、西南戦争で最期を迎えるまでを描いたもの。
上川さんは、隆盛の末弟(4男)・西郷小兵衛役。西南戦争で隆盛(鈴木亮平)の長男・菊次郎(今井悠貴)をかばって戦死する。
「あの役は、オーディションでした。大河ドラマのオーディションはたくさんの人数を一気に見るので、印象に残るように演じようと。丁寧にセリフを言わないといけないとか、そんなことはもう忘れて、とにかく走り回って。一緒に演じていた人たちに本気で止められました(笑)。
スイッチを切り替えてオーディションでやったら、みんなすごく笑ってくれたんですよね。
自分が何をしたのかあまり記憶には残っていないんですけど、『自分らしく演じよう』と覚悟を決めることができました」
――決まったと聞いた時はいかがでした?
「びっくりしました。『僕が西郷家の4男の小兵衛役?』って。あの3人のお兄さん(鈴木亮平・渡部豪太・錦戸亮)の下に自分がはまるのか…って。ちょっと心配になりましたけど、すごく興奮したのは覚えています」
――大河ドラマは豪華なキャストですし、圧倒される雰囲気があるでしょうね
「そうですね。応えなきゃいけないと、緊張していたら、(鈴木)亮平さんが『小兵衛は小兵衛らしく、上川くんのままで大丈夫だから』って励ましてくださって。いただいた言葉のおかげで、普通にどっしりとしていようと思えました」
――緊迫したシーンもいっぱいあって、“鳥羽伏見の戦い”もすごく印象的で、危機迫るものありました
「大河ドラマの戦いのシーンは、すごいです。いろんな装備を付けていたら、自分の声とかも聞こえなくなるぐらいテンションも上がりますし…。
でも、『カット』がかかった瞬間、やっぱり重いからドーッと疲れが出て、『これでもう1回動けるかな?』みたいなことの繰り返しでした。戦のシーンはかなり体力を使います」
――最後は、隆盛の長男をかばって命を落とすことに
「(菊次郎は)最後は西田敏行さんが演じられたのですが、打ち上げ会場で西田さんが何回も手を振って『小兵衛!』って呼んでくださって嬉(うれ)しかったですね。今でも忘れられないです。西田さんも『翔ぶが如く』(1989年スタート大河ドラマ)で西郷さんをやられていましたしね」
――そうですね。討幕軍の江戸総攻撃の中止を願い出る交渉役の山岡鉄舟を演じた藤本隆宏さんも「JIN-仁-」(TBS系)で西郷隆盛を演じてらしたので、2ショットのシーンは面白かったです
「そうなんです。西郷さん(を演じたことがある役者さん)がいっぱい集まっていた作品ですよね(笑)」
■監督から直接電話で主演オファー
2021年、映画「CHAIN/チェイン」(福岡芳穂監督)で初主演を果たす。この作品は、「保守派」、「倒幕派」、「尊王攘夷派」の三つに勢力が分裂した幕末の京都を舞台に、名もなき武士たちのそれぞれの戦いを描いたもの。
上川さんは、かつて仲間を誤って殺めたことで会津藩を脱藩した無名の浪士・山川桜七郎役
を演じた。
「福岡監督から直接電話をいただいて出演することになったのですが、すごく嬉しかったです。福岡監督の『正しく生きる』は、当時の僕にとって、それまで経験したことのない現場だったので、その経験は自分にとってものすごく大きかったんです。
福岡監督には自分のナイーブな部分や悩みをさらけ出して…、ずっと話を聞いていただいて、受け止めてくださって。
それから時間が経ってのオファーだったので、『成長した姿を見せないといけない。頑張ろう!』という思いが強かったです。プレッシャーはかなりありましたね。ずっと京都に行きっぱなしで、立ち回りの稽古とか所作とか、すごく頑張りました」
――かつて仲間を誤って殺(あや)めたことで会津藩を脱藩して京都に流れ着きますが、どういう風にして生きていったらいいかわからない
「全てを捨てて、生まれ変わるつもりで変わろうと努力するんですけど、根っこの部分は、人はなかなか変わることはできないし、難しいですよね。仲間も作らず一匹狼で孤独を抱えて生きることの大変さも感じました。
あの時代の人たちというのは、やっぱり日本を良くしようと、日本の未来を考えて生きていた部分がすごくあったと思うんです。斬るか、斬られるか、死と隣り合わせにいる人物ばかりなので、下手な小細工は通用しない。ありのまま、身を投げうって臨むしかないと思いました」
――過去から現代に切り替わるシーンもありますが、日本の未来を願って命をかけて戦った幕末の武士たちが今の日本を見たらどう思うのか考えてしまいました
「そうですね。幕末と現代がつながるシーンで、命をかけて日本を作ろうとしてきた人たちの存在があったから、今、僕は楽しく暮らせているのかもしれないと感じました。だからこそ次の世代にもそのバトンを繋いでいかなくては、と思っています」
――主演映画ということで、最初にお名前が出てきた時はいかがでした?
「たくさんの俳優、キャストの方たちと一緒に作った作品で最初に名前が出るというのは、そういった方たちの支えがあったからこそできた作品だったと改めて感じることができましたし、同時に身が引き締まりました。
時代劇だったので東映の太秦撮影所をお借りして、撮影所の方たちにもたくさん助けていただきましたね」
――荒んだ雰囲気もすごかったですね
「最初は照明も、ろうそくのあかり1本だけでやろうとしていたので、本当はもっと画は暗くなる予定だったんです。ただ、そうすると表情がわからないということになって、色々試行錯誤を重ねてギリギリのところを探って。この作品を経て、やっぱりお客さんに見に来ていただかないと、映画は作れないんだということも改めて感じることができました」
コメディセンスを発揮したコミカルなキャラからシリアスな役どころまで幅広く演じ分ける俳優として注目の存在に。来年劇場版も公開される連続テレビ小説「虎に翼」では伊藤沙莉さん演じる主人公の兄・直道役で話題に。映画「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」(上田慎一郎監督)、映画「この夏の星を見る」(山元環監督)など話題作出演が続く。次回は撮影エピソード、11月13日(金)より全国順次公開される映画「2126年、海の星をさがして」も紹介。(津島令子)
ヘアメイク:石川奈緒記
スタイリスト:佐々木翔



