“次の中国人ノーベル賞作家”語る性のタブーと政治[2017/12/14 12:38]

 ノーベル文学賞の授賞式が10日に行われ、日系人作家のカズオ・イシグロ氏が受賞しました。アジア文学への期待が高まるなか、「次の中国人ノーベル賞作家」と呼び名の高い閻連科さんが来日し、アベマニュースの単独インタビューで「政治と性」のタブーを語りました。

 「ノーベル賞の登竜門」と言われるフランツ・カフカ賞を2014年に受賞した中国人作家・閻連科さん。アジア人作家の受賞は、村上春樹さんに次ぐ2人目だ。政治への鋭い切り込み、そして過激な性描写でたびたび中国国内で「発売禁止」発禁処分を受ける閻さん…。今回日本で出版する「硬きこと水のごとし」は毛沢東の号令のもとで行われた文化大革命を時代背景としている。1966年から10年間にわたり、「革命」という名の政治・権力闘争の嵐が中国全土で吹き荒れた。そして、小説はその革命への権力欲と互いへの性欲に身を投じる男女を描いた。毛沢東の詩と革命劇の言葉を使い女性の体や性の快感を表現したこの作品、出版後、こう密告されたという。
 中国人作家・閻連科さん:「赤色のタブーも、黄色のタブーも破ったと言われた」
 赤色とは共産主義、黄色とは中国でいう卑猥(ひわい)表現なのだ。しかし、閻さんは「性」がこの作品に必要だと言う。
 中国人作家・閻連科さん:「文化大革命の十年は中国で最も禁欲が強いられた時代だった。だからこそ、主人公の“性”はあの時代では、大きな反抗と美、それも花一輪、草一本の美ではなく巨大で複雑な美を表している」
 なぜ性は革命時代のタブーなのかを問うと…。
 中国人作家・閻連科さん:「中国の禁欲は革命が純粋でなければならなかったからだ。マルクス主義、レーニン主義、毛沢東思想のなかに“性”が含まれない」
 その反対側に、性の自由をうたえる資本主義とブルジョワがあるという。
 中国人作家・閻連科さん:「男女関係はブルジョワ(資産階級)のなかで最も重要なものだ。だから反ブルジョワであれば禁欲しなければならない」
 文化大革命が終わり、資本主義式の改革開放が始まることで中国社会も性の解放を迎えるが、政治の分野では依然容赦がない。
 中国人作家・閻連科さん:「政治の管理が非常に厳しい時に、性は必ず政治のシステムに入れられる」
 習近平主席が進める汚職の摘発で目立つのは「愛人」「権力と性の取引」「道徳の崩壊」の文字。男女問題は汚職の罪状と同時に発表されるのだ。
 中国人作家・閻連科さん:「性は単純で独立したものではない。性は社会の重要な一部。特に権力の重要な一部になっている」
 発禁を恐れずに性を描くのには理由がある。
 中国人作家・閻連科さん:「性は人間生活のなかで最も重要な部分だ。いかに性から深い美しさ、そして欲望以外の意味を描き出せるかは作家の力量、立場、文学観の見せどころだ」
 閻連科さんにノーベル賞について聞いてみると、受賞作家である友人の莫言さんのことを語りだした。
 中国人作家・閻連科さん:「(莫言さんが受賞後)一つのジョークでも、新聞やメディアに取り上げられれば真剣な意味を持つ。口があれど弁明できぬ。莫言さんはとても愉快で心のこもった人だが、今、彼が気楽に話できなくなった。楽しくて軽やかな生活は、重たいノーベル賞の王冠よりずっと重要だ。これは命そのものの問題」