日立の建設凍結の決定に揺れる “原発依存の島”[2019/01/20 18:31]

 日立製作所がイギリスで計画していた原発の建設を凍結すると17日に発表しました。建設予定地は半世紀近くにわたって原発に依存してきた地域で、動揺が広がっています。

 建設予定地の周りに並ぶ空き家。すでに15軒の住民が立ち退いたといいます。
 地元住民:「家を立ち退き、残念に思う人も多い。建設の準備が進んでいたから。この地域はさらに貧しくなる」
 イギリス・ウェールズ北西部にあるアングルシー島。本土と短い橋で結ばれ、7万人が暮らす島は急激な高齢化が進んでいます。
 地元タクシー運転手:「あれがウィルファ原発だ。私は2人の孫がいて、その父親や私の父もあそこで働いていたんだ。作業員をよくパブやカフェまで乗せていた。パブの仕事も、家まで送り届ける仕事もなくなる。原発がなくなったら子どもたちに未来はあるのか」
 アングルシー島にあった銅鉱山が掘り尽くされた後、新たな産業として持ち上がったのが原発でした。1971年に稼働を始めた原発は3年ほど前に停止しましたが、その隣に日立が新たな原発2基を造る計画でした。
 地元の商店:「このヒーターをホライズン(原発会社)から頂きました。とても感謝しています」
 現地の原発事業会社は暖房器具やパブの運営資金など、様々な助成をしてきました。住民の7割近くが建設に賛成だったといいます。1年前、説明会で担当者は計画に自信をみせていました。
 日立子会社の原発会社担当者:「日立の原子炉は、60年以上稼働できるように設計され、長期間にわたり費用を上回る利益を生み出せると確信する。建設資金の確保には自信がある」
 しかし、3兆円もの事業費の調達先が決まらないことなどから日立は計画を凍結しました。日本が推し進めてきた原発輸出は頓挫することになります。落胆しているのは9000人の雇用を期待していた地元自治体です。
 地元町長:「残念な決定で、島の未来を心配しています。若い世代やこの地域にとって、とても悲しいことです」
 一方、かつて核燃料の再処理工場で働いていた男性は、原発の安全性や膨大な費用に疑念を抱くようになりました。
 原発建設に反対、ジュリアン・ウィングさん:「原発はこの大自然の風景にそぐわない。太陽光や風力など地域に適した方法をもっと活用できるはず。原子力の時代はもう終わったと思う」
 この島が長年、原発に頼りすぎていたと批判する声も上がってきています。

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