アメリカ国内で年間3万人近い死者を出している鎮痛剤の乱用問題。この薬物の密輸組織が中国で摘発され、死刑判決が言い渡されました。裁判後に異例の会見まで開かれたその理由とは。
法廷に並ばされた9人の男女。裁判官の判決をうなだれながら聞いています。9人のなかで最も重い刑は「死刑」。その原因となったのがアメリカへの「フェンタニル」密輸。
フェンタニルは鎮痛剤の一種ですが、アメリカでは10年ほど前からその乱用が社会問題となっています。2016年、日本でも有名な歌手のプリンスさんが死亡しましたが、アメリカ当局が発表した死因はこの鎮痛剤「フェンタニル」の過剰摂取でした。フェンタニルはヘロインと比べ、最大50倍の強さがあるといわれています。
トランプ大統領:「フェンタニルによって毎年、8万人近いアメリカ国民が死んでいる。そのほとんどは中国から流入しているものだ」
フェンタニルを含むオピオイド系鎮痛剤によるアメリカでの死者は年間2万8000人を超えるなど、ここ数年で急増しています。その大きな原因が中国からの密輸であることから、トランプ大統領も問題視してきました。
トランプ大統領:「中国はフェンタニルを規制していなかったが、フェンタニルを規制し、最高刑を科すことで合意した。中国で違法薬物を売った場合、最高刑は死刑だ」
今回の事件はそのアメリカからの情報が発端となり、上海と江蘇省を拠点とする密輸組織の摘発につながったということです。この裁判では9人全員が有罪判決を受け、1人は執行猶予2年の死刑判決を言い渡されています。異例だったのはこの裁判後、米中の担当者による記者会見が開かれたことです。フェンタニルの密輸事件としては初めての摘発事案となったこともあり、アメリカ国土安全保障省の担当者はその成功を強調しました。
米国土安全保障省担当者:「今回の米中合同捜査の成功が示すように、中国とアメリカの捜査員は国境を越えて協力する能力がある」
中国国家禁毒委員会の担当者は「今回の件は貿易戦争とは無関係だ」と答えていますが、アメリカのメディアはトランプ大統領の支持基盤である地域でフェンタニル乱用による死者が多く出ていることから、中国側が懸念に配慮したとの見方も出ています。
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