【完全版】「想像力持って危機感を」在英看護師語る[2021/01/12 17:13]

新型コロナウイルスの感染者が、毎日6万人前後確認されているイギリスでは、医療現場にも影響が出ています。

ロンドン市内の病院で働く日本人の看護師がANNの取材に応じ、病床や人手が不足し「医療崩壊に足を踏み入れている」という現状を明かしました。その上で「過度な恐怖感」ではなく「冷静な危機感」を持ってほしい、と訴えました。

ロンドン在住の看護師・萩原芽衣さんへのインタビューです。

Q:萩原さんの病院では、入院患者の状況は?

新型コロナ感染で入院してくる患者さんがどんどん増えていて、クリスマス前と比べて、3倍近くの患者さんになってきています。

Q:数としても3倍だが、自身の仕事として、患者数が急に増えてきたことを実感することは?

私自身はコロナ陽性の患者を診る病棟ではないんですけれど、スタッフがコロナ病棟だったり、ICUに派遣されたりすることで、一般病棟のスタッフが少ない日があったりですとか、私の病棟のマネージャー・看護師長もコロナ陽性になって、今後も家から働くということで、リーダーがいない状態で働いています。

Q:患者さんへのケア、看護の面での影響は?

他の部署から来たスタッフを教えながら、スタッフが少ない中で受け持ちが増えている状態なので、手も回らない日も時々あります。

私の病棟でも、ICUをコロナ患者さんに空けておくために、普段ならもう少しICUにいるべき患者さんを早めに一般病棟に移す、ということで、一般病棟の患者の重症度が上がっています。

Q:ICUの数は足りてないのか?

メイン病棟のICUは一杯ということで、使っていない手術室をICUにしたり、普段は病棟として使っているところを、今後ICU管理ができるように改装したりしているようです。

ほかにもなるべく緊急の手術を優先していて、待てる手術はほとんど延期になっています。

Q:去年の春、第一波の時と比べてどうか?

第一波の時よりも、医療機関の負担が増えている印象です。他の病院で働いている医師や看護師の知り合いがいますが、病院によっては、ほとんど90%以上の患者がコロナ患者、という状況の病院もあるみたいです。

Q:日本でもこのような状況が「医療崩壊」と表現されているが、実感としてはどうか?

「医療崩壊」の定義がよくわからないですけれど、実際に患者さんに影響が出ている時点で、医療崩壊に足を踏み入れているのかな、という実感があります。

Q:萩原さんはワクチンを接種したか?

つい最近、1月7日に一回目の接種が終わりました。

Q:ワクチン接種後の副反応は?

接種してから2日くらいは、接種した箇所の痛み、節々の痛みと倦怠感がありましたが、軽度でしたし、2日間たって全く症状はないです。接種後の勤務に影響はなかったです。

副反応は人によってそれぞれ反応の仕方は違うんですけれど、同僚もたくさん受けましたけれど、皆、軽度の症状でした。

医療現場で働く身としては、ワクチンを打ったことで、自分も守れますし、ケアする患者さんも、一緒に住む家族も守れる、ということで希望を持てます。

Q:2回目の接種の予定は?

本来は3週間後に打つべきものですが、イギリスの政策上、少し延長していて、次の接種は3月18日ということです。

※イギリス政府はファイザー社、アストラゼネカ社のワクチンについて2回目の接種は「1回目の接種から最大12週間後」とする方針を示している。

Q:1回目と2回目の接種間隔が、「最大12週間」に方針が変えられたが、どう感じる?

本来ならば3週間後に接種するべきと言われているので、それだけ間隔が空くことで何か違いがあるのか、少し不安ではありますが、病院側からは、1回の接種でも、ある程度免疫はつく、と説明されています。

Q:安心してもらえるような丁寧な説明も必要だと思うか?

数字を使った、研究結果も含めた説明が必要だと思います。

Q:変異種が見つかって以降の、感染拡大の波が高くなってきている。医療崩壊に足を踏み入れている段階で、医療従事者として伝えたいことは?

過度な恐怖感を持ってほしくないですが、冷静な危機感を持ってほしいと思っています。医療現場で何が起こっているのかは想像しがたいと思うんですが、一人一人が努力をすることで、医療崩壊を防ぐことができると思っています。

変異種の影響もありますが、クリスマス・年末年始のイベントごとで、ロックダウンを無視してパーティーしたりとか、外に出歩いたりした人がたくさんいる、ということも、今の感染拡大に影響を及ぼしています。日本でもそうですけれど、(医療現場への)想像力を持ってほしいです。

Q:医療以外でも影響が出てきているか?

今回、またロックダウンしたことで学校も閉鎖になったんですが、子供たちがオンラインで授業を受けています。オンラインとなると、パソコンなどいろんな器具も必要になってきて、そういったものが手に入らない家庭ですとか、貧富の差によって教育格差が広がっていくのではないか、と心配しています。

Q:医療のみならず、いろいろな面でのしわよせが来ている?

第一波の時はDVの問題があったりですとか、一人暮らしの家庭だと、孤独の問題が出てきたり、子供たちのメンタルヘルスも悪化してきている、ということが言われています。子供たちも、学校が開いたり閉まったりということで、友達にも会えないですし、日本に関しては自殺率も心配なところです。

医療現場で起こっていることを想像しながら、自分ができることをすることが大事だと思うんですけれど、自分の精神面のバランスもとっていただければと思います。

こちらも読まれています