「下駄を脱いで」国連幹部が語る日本の“男女格差”[2021/02/25 16:30]

 「男女格差」の問題について、国際社会の最前線で活躍するリーダーが、日本が今、抱えている問題について語りました。

 大会組織委員会・橋本聖子会長:「会長として取り組むべき3つの重点施策について理事会に報告しました。最重要課題である“コロナ対策”“ジェンダー平等の推進”、そして史上初の大会延期という経験を踏まえた“東京モデルの将来への継承”についてです」

 24日、就任後初めてIOC(国際オリンピック委員会)の理事会に出席した東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の橋本会長。就任のあいさつとともに、ジェンダー平等推進チームの発足を報告したことを明らかにしました。

 皮肉にも、森前会長の発言によってジェンダー問題の解決に本腰を入れ始めた組織委員会。今回の一連の動きについて、森前会長だけではなく社会全体の問題だと感じた、と話すのが国連で幹部を務める中満泉さんです。

 国連事務次長・軍縮担当上級代表 中満泉氏:「一番がっかりしたのは、(森前会長の)発言があった時にその場で『それはちょっと違うのではないですか』と指摘する人がいなかったようだと。その場では笑いが出たということも報道であったので、それはすごく残念に思った。ただ、色々考えてみると、その場で声を上げる人がいなかったというのは、恐らく女性がまだまだ少ないので、声を上げづらい雰囲気があったのかな、と思った。結局のところ、私たちが考えなければいけないのは、発言されたご当人だけの問題では必ずしもなくて、私たち社会全体の問題なんだろうということを強く感じました」

 中満さんは2017年に日本人女性として初めて国連のナンバー3の事務次長に就任。軍縮部門でトップを務めています。これまで国連の人道支援やPKO(国連平和維持活動)などで世界中の紛争地を歩き、危機対応に取り組んできた、まさに国際社会の最前線で活躍する女性リーダーの一人です。

 中満さんは24日に「ABEMAヒルズ」で紹介した「差別のない活力ある日本を作るための行動宣言」を取りまとめた一人です。

 中満泉氏:「私たちが今回の『行動宣言』でやりたかったのは、これを持続的に皆で変えていきましょうと、そのために持続的に行動していきましょう、と。こういう発言があった場合には、それぞれの場で、その場で声を上げて、それは違うんじゃないかと、対話によって、発言をされる方の意識の変革を求めていく」

 近年の日本でジェンダー・ギャップの解消に向けて大きく動き出そうとしたのが「女性の活躍推進」を成長戦略に掲げた安倍政権の時でした。
 2014年のダボス会議では、安倍前総理大臣自ら「2020年までに指導的地位にいる人の3割を女性にします」と、女性登用の数値目標を高らかに宣言しました。

 しかし、2019年度の「雇用均等基本調査」によりますと、企業の課長相当職以上の管理職に占める女性の割合は11.9%。目標には程遠い現状ですが、中満さんはジェンダー・ギャップの解消は、国際的に見ても時間がかかる問題だと指摘します。

 中満泉氏:「国連が設立されて去年で75年。70年以上経ってようやく男女同数が幹部レベルで実現した。トップの意思によってかなり早いスピード感でもって達成することができた。ただし、国連全体の組織で見ると、達成するのに70年以上かかったことが言える」

 日本で女性の登用を後押しする動きを進めようとすると聞こえてくるのが「それは女性を優遇しているだけではないか」という反論の声。これについて、中満さんは…。

 中満泉氏:「こういった議論を男性とすると、『じゃあ女性に“げた”を履かせろと言うのか』と言う人がいるが、私の反応は全く逆。そうではなくて、これまで日本社会でいかに男性が“高げた”を履いていたか。私たちがしなければいけないのは、これまで男性が気がつかないうちに履いていた“げた”を脱いで頂くこと。例えば、高校の入試で男女別に募集しているところは、女性の倍率は男子学生の倍率に比べて非常に高くなっている。つまり女性の方が入りにくいということ。医学部の入試の話はまさにそうだが、そういった意味で気付かないうちに小さいころからすり込まれ、色んな意味で男性の方が“げた”を履いているというのが日本の状況。それを脱いで頂くだけでいい。その結果、女性もきちっとフェアな形で社会の様々な競争に参加していく、正当に評価を受けられるようにしていくことが必要ではないかと思っています」

(ABEMAヒルズ 2月25日放送)

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